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番外編
第37話 感慨深い
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リュシアーノが、色々成長して戻ってきた。
と言っても、まだ学園に入学して最初の長期休暇の間だけなのだが。少しばかり背が伸びて、顔立ちも大人っぽくなったのは気のせいではないだろう。ヘルミーナも喜んでいるようだったしな?
そして、俺達にまた料理を振る舞ってくれる優しさは変わらない。イツキがいなくとも自分とメイドの力でなんとかするとは……思っていた以上に、リュシアーノはひとりだけより周りの力を借りて物事を成す力を得たようだ。
学園でも、王女と言う立場ではあるが自ら進んで友となった貴族令嬢らに話しかけていったとか。
「エイミーやマーキュリーは、結構お菓子作りが得意らしいの」
城ではイツキしか同性の友がいなかったため、学園で孤立するかと危惧してたが……杞憂に終わって俺は嬉しさが込み上げてきた。
「どちらも伯爵令嬢か。近いうちに城に呼んでもいいぞ?」
「そうね。でも緊張し過ぎて大変だと思うわ」
「ふふ。社交会を開くわけではないものね?」
「けど、お茶会だったら大丈夫かしら?」
「いいじゃないかしら?」
このように、のどかな団欒を囲むことが出来るようになるとは。ヘルミーナがジェラルドを身ごもっている時は考えられなかった。
跡継ぎの誕生のために、ヘルミーナに必要以上の負担をかけぬようにと、リュシアーノを遠ざけかけたりもしたが。
俺は間違っていたんだ。
王族だろうが、家族をもっともっと大事にせねば……一家の長として、家族をバラバラにしていただけであった。それに気づかせてくれたのが。
「んじゃ、俺はもう行くぜ」
リュシアーノの菓子を堪能した、我が悪友の養女だ。結婚だけでなく、今は身重なので城にはもう常駐していない。ある日突然、ワルシュの養女となり城の料理人となった不思議な女性。
古い慣習が王族だけでなく、城の毒となっていたことを見抜き……今は新しい慣習を作るきっかけとなったのだ。国の恩人とも言える彼女は、妻や娘だけでなく俺にまで良い影響を与えてくれた。
その心を射止めたのは、近衛騎士団の副隊長であるアーネストだが。隊長であり、我が娘の婚約者となったネルヴィスから話を時々聞くが、羨ましいくらい仲が良いそうだ。ネルの場合は、リュシアーノが卒業まで婚姻はダメだからな。
(……イツキか。ヘルミーナ達は最近会いに行ったらしいが)
俺の休みがなかなか合わずに、一緒に行けなかったのだが。
友人の夫としてか、国王として会いに行くか。
どちらにしても、身重の女性に会いに行くのは外聞上あまりよろしくないのだが。
「お父様! イツキの気晴らしも兼ねて、お茶会に呼びましょう!!」
「……は?」
考え込んでいたら、いきなりの娘の提案に変な声が出てしまった。
と言っても、まだ学園に入学して最初の長期休暇の間だけなのだが。少しばかり背が伸びて、顔立ちも大人っぽくなったのは気のせいではないだろう。ヘルミーナも喜んでいるようだったしな?
そして、俺達にまた料理を振る舞ってくれる優しさは変わらない。イツキがいなくとも自分とメイドの力でなんとかするとは……思っていた以上に、リュシアーノはひとりだけより周りの力を借りて物事を成す力を得たようだ。
学園でも、王女と言う立場ではあるが自ら進んで友となった貴族令嬢らに話しかけていったとか。
「エイミーやマーキュリーは、結構お菓子作りが得意らしいの」
城ではイツキしか同性の友がいなかったため、学園で孤立するかと危惧してたが……杞憂に終わって俺は嬉しさが込み上げてきた。
「どちらも伯爵令嬢か。近いうちに城に呼んでもいいぞ?」
「そうね。でも緊張し過ぎて大変だと思うわ」
「ふふ。社交会を開くわけではないものね?」
「けど、お茶会だったら大丈夫かしら?」
「いいじゃないかしら?」
このように、のどかな団欒を囲むことが出来るようになるとは。ヘルミーナがジェラルドを身ごもっている時は考えられなかった。
跡継ぎの誕生のために、ヘルミーナに必要以上の負担をかけぬようにと、リュシアーノを遠ざけかけたりもしたが。
俺は間違っていたんだ。
王族だろうが、家族をもっともっと大事にせねば……一家の長として、家族をバラバラにしていただけであった。それに気づかせてくれたのが。
「んじゃ、俺はもう行くぜ」
リュシアーノの菓子を堪能した、我が悪友の養女だ。結婚だけでなく、今は身重なので城にはもう常駐していない。ある日突然、ワルシュの養女となり城の料理人となった不思議な女性。
古い慣習が王族だけでなく、城の毒となっていたことを見抜き……今は新しい慣習を作るきっかけとなったのだ。国の恩人とも言える彼女は、妻や娘だけでなく俺にまで良い影響を与えてくれた。
その心を射止めたのは、近衛騎士団の副隊長であるアーネストだが。隊長であり、我が娘の婚約者となったネルヴィスから話を時々聞くが、羨ましいくらい仲が良いそうだ。ネルの場合は、リュシアーノが卒業まで婚姻はダメだからな。
(……イツキか。ヘルミーナ達は最近会いに行ったらしいが)
俺の休みがなかなか合わずに、一緒に行けなかったのだが。
友人の夫としてか、国王として会いに行くか。
どちらにしても、身重の女性に会いに行くのは外聞上あまりよろしくないのだが。
「お父様! イツキの気晴らしも兼ねて、お茶会に呼びましょう!!」
「……は?」
考え込んでいたら、いきなりの娘の提案に変な声が出てしまった。
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