王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編

第21話 感じる幸せ

　スイード……は、幸せだ。

　ゲイリッシュ様と……結婚出来ることもだけれど。

　たくさんの……方々から、祝福されていることだ。

　ハインツベルト様の妹君であり、友となったアイシス。

　その義姉でいらっしゃる……イツキ様。

　ゲイリッシュ様のお話だと、ワルシュ様や陛下まで。

　スイードは、とても幸せに思う。

　孤児でしかなかった存在が……誰かと手を取り合い、幸せになる。

　これを……誰が予想出来たのだろうか？

　スイード自身も、予想出来なかった。


(……幸せ、か)


　胸の内が、ポカポカする。

　温かい……心地よい。

　これが……幸せ。

　ゲイリッシュ様と……一夜を明かした時も、例え難い気持ちになれたが。

　今は……日々、幸せを感じているのだ。

　暗部の仲間らには、妬みを言われるだろうと思ったりもしたけれど。


『ゲイリッシュ様の手綱を握れるのは、スイードだけだ！』


　と、涙を流しながら……言われてしまった。

　スイードはスイードだから良いのだろうか？

　まだ……感情を少しずつ感じるようになったから、よくはわかっていない。

　けれど……隊長にも『頼んだ』とは言われたので、それでいいんだと思うことにした。

　結婚式まで、あとひと月。

　これと言って、特別な準備を……する必要がないと思っていたら、結構あった。

　ゲイリッシュ様にあちこち連れて行かれて……花嫁の準備をたくさんした。

　身内だけでの結婚式でも……スイードには家族がいない。

　世話になった孤児院に院長も、去年亡くなってしまった。だから、式に参列するのは……アイシス以外だと誰もいない。


『生涯に一度だぜ？　めかしこむ必要は大いにあるぞ！』


　って、一番乗り気なのはゲイリッシュ様だったけど。

　花嫁の衣裳を着た時は。

　本当に、スイードが着ていいのか……悩んだけれど。

　ゲイリッシュ様が喜んでくださったのなら……スイードは受け入れようと、思えた。

　大切で、大事で……大好きな方だから。

　お付き合い……する時の言葉も、この方からいただいたから。

　スイードは……この方のところへ、嫁ぎます。

　あと少し……あと少しではあるけれど。

　告白をいただいた思い出は、今でもきちんと覚えている。

　海辺での……訓練の後に、ゲイリッシュ様に呼ばれたあの時。

　ゲイリッシュ様は……とても真剣な顔でスイードに向き合ったのだ。