王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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番外編

第16話 我慢の限界

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 頑張れ。

 超頑張れ、自分!!

 せっかく作ったクッキーを、粉々にさすような真似したらあかん!!


(けんど、めちゃんこ可愛い!!)


 自分のカミさんは……なんでこう可愛いんや!!

『氷の美女』って誰が言い出したんや?

 たしかに、表情の出方は乏しいとこはあるけど、ちゃんと喜ぶとこはわかりやすい。

 今もちびちび食べながら、頬紅つけとるし……可愛い!!

 さっきから、可愛い連呼しとんな。自分。

 は、さておき!


「こちらの模様……美しいですね!」


 サフィアは俺が作ったクッキーで、茶と白のを見ていた。ピンクは四つだが、そっちは細かくして……なんと十二個。

 うまくいってよかったが、サフィアはもったいないと思ったの。しばらく眺めておったわ。


「そっちはココア味や」

「……いただきます」


 自分が味のことを言うと、サフィアはやっと可愛い口を開けてひと口かじった。

 んでもって、すぐに嬉しそうに目元をゆるませて。

 乏しいはずの表情がほころんでいくんや。恋人以上に旦那の前やから、見れるんやけど!

 嬉し過ぎて、また抱きつくのを堪えたわ!!


「……どや?」


 答えはわかっとっても、一応聞くことで衝動をさらに堪えた。

 サフィアはこっちを向くと、クッキーを飲み込んでから……小さく頷いてくれた。


「甘さが控えめで美味しいです! 旦那様はやはり器用でいらっしゃいますね」

「……喜んでもらえて何よりや」


 ああ、ああ。

 やっぱ、我慢出来へんわ!!

 笑顔キラッキラの嫁さんの顔を見たら、理性なんて意味ない!!

 思わず頬に手を添えて、ぐっと顔を近づけてから唇を重ねた。

 しっとり柔らかく……今さっきクッキーを食べたから、甘い味わいがたまらん!!

 舌は……さすがに我慢したけど、少しの間喰むように味わい。

 そろそろいいか……と離れたら、あかんかった!!

 久しぶりのキスやから、めっちゃ息切れた上に赤くなった顔が可愛い!!?

 けど……これ以上はまずい、と抱きしめるので我慢した。


「……だん、なさま」


 抱きしめたら……ちょぉ、声が怒っとる?

 いきなりキスしたから? と思って顔を覗いたら……サフィアがちょっと頬ふくらませてた。


「ど、どした?」

「……口付けは嫌ではないのですが。クッキーがつぶれてしまいます」

「あ」


 自分もすっかり忘れとった!?

 さっきはちゃんと頭入れてたのに!!

 慌てて箱を見たが、ちょこっと割れているだけで済んでて破壊は免れてたわ。

 安心してから、もっかい謝り……二人で仲良く食べることにした。

 サフィアから、学園での殿下のこととかを聞かせてもらったが……殿下は学園でうまくお過ごしのようや。

 イツキはん以外の友人が出来なさそうな感じやったけど。

 誰か別の存在もおることはええことや。

 将来は、隊長と結婚するにしても。

 まだまだ先は長いからなあ?

 俺かて、サフィアと一緒に住めるのもお預けやしな!!?
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