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番外編

第4話『止まらないポテトサラダ』

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 我が妹と、暗部のスイードが友人。

 気づかなかった……実に、世間は狭い!!

 だが……この事をイツキに話したのだが。


「あれ? アーネストさんはてっきりご存知だと」


 アイシスとは手紙のやり取りをしょっちゅうしているので、イツキは既に知っていたらしい。ただ、ゲイリッシュ殿との結婚は俺が伝えるまでは知らなかったそうだ。


「……悪いとは言わないが、何故あの二人が」

「女の子同士ですからね? 意気投合しちゃうのは仕方がないのでは?」

「……性格がある意味真逆だろう!?」

「まあまあ」


 交友関係に、あまり深入りはしたくない気持ちはあるにはあるが。

 やはり……あの二人が、友人としてうまくいっているのかが、兄としては心配でならん!

 しかし、どちらからも何も言わないのなら……うまくいっていると言うことか。


「……ひとまず、相談相手としては最適か」

「そうですね? あ、お夕飯はハヤシライスにしました」

「!?」

「ふわふわのコカトリスの卵に、チーズもたっぷりですよー」

「ありがとう!!…………重労働だったのではないか?」

「いえいえ。ルゥを煮込む以外はそんなに大変ではないですし」


 俺は。

 本当に。

 もったいないくらい……素晴らしい女性を妻に出来たものだ!!

 ちなみに、サラダはポテトサラダで、スープはパンポンのポタージュ。

 俺の好きなものばかりだ!!

 本当に……本当に、イツキと結婚して良かった!!

 リビングに行けば、扉を開けた瞬間から……ふわっと芳しい香りが鼻をくすぐる!!


「……おお!」


 ハヤシライス……卵とチーズが加わったそれは、『オムハヤシ』と言うらしいが。

 茶色のルゥと白のリーゾだけの色合いが、普通らしいハヤシライス。

 そこに、黄金のような黄色のふわっとした卵のヴェールが加わることで。

 実に……実に美味そうだ!!

 イツキの料理は、もちろんすべてが美味であるが。

 試食係、食堂での提供では……俺以外の人間が口にしてたのは当然でも。

 やはり、結婚したことで……今は俺だけと言っていいくらい、口にする人間が限られているのだ!!

 日々、近衛騎士としての膨大な執務と訓練で……酷使した肉体が報われるこの瞬間!!

 俺は……幸運な人間だと自賛出来るのだ!!


「まだ作ったばかりなので、チーズも伸びますよ?」


 イツキは俺の心を読んだのか、いつも以上に慈しみの微笑みを浮かべてくれた。諌めることもなく、ただただ優しく。

 これを見ると、はしゃぎそうな気持ちを落ち着かせてから……席に着いた。


「……いただこう」


 イツキは、以前いた世界の慣習である『いただきます』を。

 俺は簡単に神への祈りを捧げてから……まずは、フォークを手にして、ポテトサラダへ。

 白い半円の中には、色とりどりの野菜が見え隠れしている。そっとひと口分すくい、口へと運べば。

 なめらかな舌触りの中に、柔らかさと歯ごたえのある野菜達が存在の主張をしてきた。

 かめば、芋以外にも……にんじん、玉ねぎにきゅうりと味の波がやってくるが。

 芋と塩、マヨネーズのおかげでちっとも嫌ではない!


「ふふ。サラダもお代わりありますからね?」


 イツキに指摘されるまで気づかなかったが。

 俺は、メインのオムハヤシに手をつける前に……ポテトサラダだけを完食してしまった。

 野菜を好きになれたのは、イツキのおかげだから……つい、うまいものにはがっついてしまう。

 しかし……イツキはいつも嬉しそうだ。

 結婚する前も、今も。

 この笑顔を……俺は今、独り占め出来る。

 その感動が胸いっぱいになり、俺もつい口元が緩んだ。

 お代わりを頼んでから、オムハヤシも食べ始めたが……俺の好みが丸ごと詰まった一皿も、あとでお代わりするくらいの美味だったのだ!!
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