王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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全員のまかない

第23話 王女のまかない②

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 異世界に、転生したとわかってから……十年近くの月日が流れた。

 結局は……ごくごく一部の人達にしか、私が転生者だと言うのは知らせていない。家族も……両親や弟にも、だ。

 大好きな人のところに嫁ぐ……今日まで、一度も。両親には、なんとなく悟られているかもしれないが……やっぱり言ってはいない。


「リュシアーノ様のお支度、整いましてございます」


 花嫁衣装がきちんと出来上がった今……鏡に写っているのは、子供の私ではなく……きちんと成長した『リュシアーノ』が出来上がっていた。

 癖っ毛の猫毛は……結局直毛にはならなかったけど、チャーミングポイントにはなっていると思う。


「おめでとうございます、リュシアーノ様」


 支度を整えてくれたのは、『元』第一メイドだったサフィアだ。

 学園入学も……本当なら同行してくれる予定だったが、先に挙げようとしていた結婚式で妊娠が発覚して……メイドを急遽変えて、彼女は改めて結婚式を迎えてからレクサスのところに嫁いだ。

 今もまだお腹に赤ちゃんがいるらしいが、子沢山で何よりだ。

 今日と言う日だけは、私の晴れ姿を見たいとお母様に頼んでメイドの仕事をちょっとしているわけである。


「……ありがとう。体調は大丈夫なの?」

「はい。五人目なので、だいたいの感覚は掴めております」

「そう」


 ……本当に、レクサスってサフィアにメロメロ(?)よねぇ?

 こっちの世界でも、そんな子沢山な家庭って少ないわよ?


「失礼します」


 もう少しで、夫となるネルのとこへ行こうとしたら……久しぶりの声に、私は入室の許可を出したわ。


「イツキ! 久しぶり!!」

「お久しぶりです、リュシアーノ様」


 学園からの帰省程度しか会えていなかった、私の親友。

 相変わらず、女神のような微笑みを浮かべている彼女は……とてもアラサーには見えないわ。そんな彼女の腕にもだが、足元にも小さな影がしがみついていた。


「お、ひさ……ぶり、です」

「あー、あー!」

「あら? アルベルトにイザベラまで」


 イツキとアーネストの子供達も来てくれたのだ。アルベルトがお兄ちゃんで十歳くらい、イザベラが三歳だ。


 年の差が大きい理由が……いかに、初産でイツキが大変だったかをアーネストが気遣ったのがありありと浮かぶわ。


「ふたりとも、リュシアーノ様の花嫁衣装を是非近くで見たいと」

「そうなの?」

「は……い」

「うー!」


 本当に微笑ましいわ。とても嬉しい。

 大好きな人と、大好きな人達に囲まれて……結婚出来るんだもの。日本に居た前世とはまるで違う。

 どうして死んで、どうして……トリップのイツキとは違って転生者なのかは、今も思い出せないが……それはそれでいい。

 私は今日、結婚の花道をネルヴィスと歩くのだから。


「リュシアーノ様、そろそろ」

「そうね」


 サフィアに促され、大聖堂の奥の礼拝堂に迎えば……大司祭がいる手前で、いつまでも若々しく……けれど、とても輝かんばかりの美貌を持っている、私の大好きな人が凛々しく立っていたわ!!
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