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全員のまかない
第22話 まかない婦のまかない②
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アーネストさんと結婚してからしばらくして。
私に、ある兆しが訪れたのだ。
「……んん?」
気持ちが悪い……と思ったのだ。
自分で作っている料理が……だんだんと、美味しく感じ取れないくらいに。
これはもしや……と、さすがに疎い私でも理解が出来た。すぐに、料理長へ知らせようとしたのだが……目の前が、ふらっと反転したように見えた。
「「イツキ!?」」
「「「「「イツキさん!?」」」」」
皆さんが心配してくださる。ああ、迷惑をかけてはいけないんだと思っても……体が言うことを聞かない。
目の前がぐるぐる、ぐるぐるとしていて……あと、吐きそうなくらいに気持ちが悪いのだ。
料理長達から、何か声をかけられたとは思うけど……半ばうわ言のように答えた覚えしか無い。
気がついた時には……手を誰かに強く握られていて、天井は管理人室じゃ無いところのベッドで寝かされていた。
「……イツキ」
私の意識がはっきりしてくると、声も誰のものかよくわかった。大好きな……大切な人のものだった。
「……アー、ネスト……さん」
「……突然、倒れたと聞いた時は……心臓が止まるかと」
「……すみません」
「良いんだ。君が無事なら」
視界がはっきりしてくると、アーネストさんの顔には泣いた跡があった。それだけ心配をかけていたのに、申し訳なさと嬉しさが込み上がってくる。
「おや、イツキちゃんが起きたかの?」
部屋に入ってきたのは……久しぶりにお会いする男性だった。アレルギー問題の時に、色々お伝えしたバクス先生だ。
「バクス医師。イツキはつい先程」
「そうかそうか。イツキちゃん……少しばかり質問して良いかの?」
「……はい」
アーネストさんが席を譲り、相変わらずお髭と髪が一体化したような白髪がチャーミングポイントの先生は、ニコニコ笑顔で私の前に座った。
「倒れた原因に心当たりは?」
「いえ……そ、その……月のものでは」
「ふむふむ。何か気持ち悪くなったのは?」
「ありました。料理をしてたら、急に」
「今日が初めて?」
「いえ。……あ」
思い出した。程度は違えど、最近ご飯匂いを嗅いでいると気持ち悪くなることが。その時とかは、今日より軽かったので……あまり気にはしていなかったのだ。
「なるほど。であれば、考えられるのは……」
「バクス医師! イツキは何か大病でも!?」
「落ち着きなされ。違うわい、これは懐妊の兆しじゃよ」
「「…………は??」」
懐妊。
つまりは……私のお腹の中に、赤ちゃんがいる?
思わずお腹を触っても、鼓動がわかるはずもなく……びっくりしていることしか出来なかった。
「妊娠の初期症状じゃよ。嘔吐はしておらぬが、月のものがしばらく来ていないようなら……ほぼ確実じゃ。今日のもつわりじゃろうて」
「……つわり、ですか?」
「もう少し、きちんと診察した方が良い。少々横になってもらえるかの?」
「……はい」
そして、きちんと診察していただいた結果……私は本当に妊娠していることがわかったのだった。
「……イツキ。俺達の子が君の中に」
「はい。アーネストさん……」
バクス先生が退室されてから……私達は、互いに嬉し涙を流すのだった。
男の子か女の子なのかはすぐにわからなくても……大切な我が子だ。
栄養のあるものを、たくさん作って食べさせてあげたい。しばらくは……自分で作れないのがはがゆいけれど。
「イツキが……懐妊だ!?」
厨房だとまだつわりがきついかもしれないので、料理長に報告も兼ねてこちらに来てもらうと……嬉し涙になってくれたのに、すぐにアーネストさんを軽く殴るのだった。理由を聞くと、孫の顔を見せるのが早過ぎるのだとか。
私に、ある兆しが訪れたのだ。
「……んん?」
気持ちが悪い……と思ったのだ。
自分で作っている料理が……だんだんと、美味しく感じ取れないくらいに。
これはもしや……と、さすがに疎い私でも理解が出来た。すぐに、料理長へ知らせようとしたのだが……目の前が、ふらっと反転したように見えた。
「「イツキ!?」」
「「「「「イツキさん!?」」」」」
皆さんが心配してくださる。ああ、迷惑をかけてはいけないんだと思っても……体が言うことを聞かない。
目の前がぐるぐる、ぐるぐるとしていて……あと、吐きそうなくらいに気持ちが悪いのだ。
料理長達から、何か声をかけられたとは思うけど……半ばうわ言のように答えた覚えしか無い。
気がついた時には……手を誰かに強く握られていて、天井は管理人室じゃ無いところのベッドで寝かされていた。
「……イツキ」
私の意識がはっきりしてくると、声も誰のものかよくわかった。大好きな……大切な人のものだった。
「……アー、ネスト……さん」
「……突然、倒れたと聞いた時は……心臓が止まるかと」
「……すみません」
「良いんだ。君が無事なら」
視界がはっきりしてくると、アーネストさんの顔には泣いた跡があった。それだけ心配をかけていたのに、申し訳なさと嬉しさが込み上がってくる。
「おや、イツキちゃんが起きたかの?」
部屋に入ってきたのは……久しぶりにお会いする男性だった。アレルギー問題の時に、色々お伝えしたバクス先生だ。
「バクス医師。イツキはつい先程」
「そうかそうか。イツキちゃん……少しばかり質問して良いかの?」
「……はい」
アーネストさんが席を譲り、相変わらずお髭と髪が一体化したような白髪がチャーミングポイントの先生は、ニコニコ笑顔で私の前に座った。
「倒れた原因に心当たりは?」
「いえ……そ、その……月のものでは」
「ふむふむ。何か気持ち悪くなったのは?」
「ありました。料理をしてたら、急に」
「今日が初めて?」
「いえ。……あ」
思い出した。程度は違えど、最近ご飯匂いを嗅いでいると気持ち悪くなることが。その時とかは、今日より軽かったので……あまり気にはしていなかったのだ。
「なるほど。であれば、考えられるのは……」
「バクス医師! イツキは何か大病でも!?」
「落ち着きなされ。違うわい、これは懐妊の兆しじゃよ」
「「…………は??」」
懐妊。
つまりは……私のお腹の中に、赤ちゃんがいる?
思わずお腹を触っても、鼓動がわかるはずもなく……びっくりしていることしか出来なかった。
「妊娠の初期症状じゃよ。嘔吐はしておらぬが、月のものがしばらく来ていないようなら……ほぼ確実じゃ。今日のもつわりじゃろうて」
「……つわり、ですか?」
「もう少し、きちんと診察した方が良い。少々横になってもらえるかの?」
「……はい」
そして、きちんと診察していただいた結果……私は本当に妊娠していることがわかったのだった。
「……イツキ。俺達の子が君の中に」
「はい。アーネストさん……」
バクス先生が退室されてから……私達は、互いに嬉し涙を流すのだった。
男の子か女の子なのかはすぐにわからなくても……大切な我が子だ。
栄養のあるものを、たくさん作って食べさせてあげたい。しばらくは……自分で作れないのがはがゆいけれど。
「イツキが……懐妊だ!?」
厨房だとまだつわりがきついかもしれないので、料理長に報告も兼ねてこちらに来てもらうと……嬉し涙になってくれたのに、すぐにアーネストさんを軽く殴るのだった。理由を聞くと、孫の顔を見せるのが早過ぎるのだとか。
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