上 下
440 / 784
全員のまかない

第20話 まかない婦のまかない①

しおりを挟む
 異世界にトリップして……約三年の月日が経ち。

 私は今日、大好きな人と大好きな人達の前で結婚式を迎えることになった。

 本当のお父さんじゃないけど、異世界での保護者であるワルシュさんが今のお父さんなので……綺麗に着させてもらっているウェディングドレスで、教会以上に大きい大聖堂と言うところの廊下を一緒に歩いている。

 去年、ワルシュさんとお義母さんの結婚式の時にも思ったが……ヴァージンロードに例えれる絨毯の部分は、とても長い。

 トリップ前に、日本での結婚式に参加した時はすぐだったのに……ここはすごく長いのだ。

 旦那さんになってくれるアーネストさんまでのところへはなかなか遠いけど、少しずつ近づくにつれ……参列者の皆さんからの、温かな拍手が見えてきた。

 拍手は出来るけど、花嫁に声をかけてはいけないマナーらしく……けど、皆さんはとても笑顔だった。


『『『『『おめでとう、イツキ!!』』』』』


 って、声に出していたら……そんな感じが浮かぶくらい。

 私は嬉しくて涙が出そうになったけど……結婚式の最中だから我慢した。

 そして、アーネストさんが待っているところまで、転けないようにゆっくりゆっくり向かうと。


(……ああ、素敵)


 何度か目にしたはずなのに……特別な日であるせいか、騎士服のアーネストさんはとっても素敵でかっこいい。アーネストさんは、凛々しくしていて……ワルシュさんに促されて、私の手を取る仕草ひとつでときめいてしまう。

 けど、感動している暇はないので、私もリハーサル通りに……アーネストさんの手を掴み、前を向くことにした。

 前の祭壇には、とても素敵なおじいさま……教会の最高司祭様が私達に微笑んでいらっしゃった。


「アーネスト=ハインツベルト殿。イツキ=エイペック殿。これより、成婚の儀式を行わせていただく」

「「はい」」


 神父さん以上に、司祭様だなんて日本にいた頃だと海外ウェディングでもあるだろうかと思っていたのに……今、目の前で起きることが信じられない。

 でも……手を握っているアーネストさんの体温は本物だ。シルクのような手触りの手袋越しにも、しっかり伝わって来ている。

 何度か噛みそうになったが……結婚式は参列者の人々にも見守られながら終わりを迎え。

 次は、結婚披露宴パーティーをすることになったのだが。


「……え?」


 何故か、ウェディングケーキが二種類あったのだ。形も大きさも当然違うが、何故か二種類。


「イツキ! こっちは料理人達で、こっちが私達が作ったものよ!」


 リュシアーノ様がそう説明してくださったが、まだ二種類ある意味がよくわからなかった。

 すると、ワルシュさんが礼服を軽く着崩してから答えてくれた。


「そっちはエリオ達が張り切ってな? リュカルド達とのは……まあ、俺が監修した」

「……ケーキをですか?」

「他に思いつかなくてな? まあ、最低ひと口ずつ……あの食べさせ合いしてくれや」

「……はい」


 理由が分かってから、私とアーネストさんとの結婚には……たくさんの人達が祝福してくれているんだな、とさらに嬉しくなった。

 もちろん、ファーストバイトもきちんと行い……味わいはそれぞれ違ったが、口まわりがクリームだらけになるくらい……とても美味しいケーキ達だった。
しおりを挟む
感想 319

あなたにおすすめの小説

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下

七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」 死の床で陛下はわたくしに謝りました。 「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」 でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。

1000歳の魔女の代わりに嫁に行きます ~王子様、私の運命の人を探してください~

菱沼あゆ
ファンタジー
異世界に迷い込んだ藤堂アキ。 老婆の魔女に、お前、私の代わりに嫁に行けと言われてしまう。 だが、現れた王子が理想的すぎてうさんくさいと感じたアキは王子に頼む。 「王子、私の結婚相手を探してくださいっ。  王子のコネで!」 「俺じゃなくてかっ!」 (小説家になろうにも掲載しています。)

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。