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国王のまかない⑧

第2話 ふたりへの褒美

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 内密に事を進めていくのも悪くはないが……自分達の住む場所を勝手に決められるのは、たとえ国王の俺の意見でもよくないだろう。

 とりあえず、アーネストとイツキを執務室に呼ぶことにした。

 ふたりは、部屋に入ってくると最敬礼をすぐにしてくれた。


「……ふたりを呼んだのは、ひとつ提案があるのだ」

「提案?」

「ですか?」

「……お前達は、婚約しているだろう?」

「「は……はい」」


 二十を過ぎている年齢であるのに、初々しいと言うべきか。陰であるレイドの部下からの報告によると、少し前の休暇の時に……ようやっと一線を越えたそうだが。

 それを聞くのは野暮なので、俺はひとつ咳払いした。


「いずれは婚姻を迎え、住む場所を変わるだろう? であれば、俺が公爵家から近い領土を与えようと考えている。そこに……邸も建てるつもりだ」

「へ、陛下? そのような褒賞を何故」

「いただき過ぎですよ」


 アーネストは少し慌てて、イツキはいつも通りに冷静に受け答えをしている。これも、まあいつの通りだ。


「与え過ぎではないぞ? 我が国の恩人とその伴侶となる者への褒美だ。これでも俺は随分抑えたものだが」

「けど、お屋敷だなんて……」

「ワルシュから聞いているぞ? アーネストと結婚してもしばらくは厨房に詰めることは。なら、アーネストの実家とは別の住む場所があれば気兼ねなく城に来れないか?」

「……そうかもしれませんが」


 仕事のことを言えば、やはりイツキも渋々頷くように様子になった。

 アーネストとのこともだが、イツキ自身は厨房で働くことをとても誇りに思っているようだからな?


「結婚を急ぐとは言わん。だが、邸の建設は春くらいに間に合うように進めていく。出来上がったら、お試しで住むのもいい。そこは自由にしてくれ」

「「有り難く、頂戴致します」」


 ひとまず、邸の件はこれで納得してもらえたが。

 イツキから、少し特殊な昼ご飯をと……王族の食堂に持ってきてくれることになった。


「イツキ! 今日のご飯は何かしら?」


 リュシアーノが席につきながら、ウキウキとしていた。あと数ヶ月でこの城から学園に寄宿生となるので、友人が手がけた料理を食べれるのが嬉しいのだろう。


「はい。以前、リュシアーノ様にも召し上がっていただいたお蕎麦です」

「! 美味しかったわ!!」

「はい。今回は陛下方にもと」

「オソバ?」

「とは、なんだ??」


 また、東方大陸から取り寄せた食材を使ったものだろうか??


「あーう、あう! い、い!」


 ヘルミーナの横に置いた、赤児用の簡易ベッドの中にジェラルドがいるのだが。

 イツキが近くに来ると、抱き上げて欲しいとばかりに体を乗り出そうとしていた。赤児の世話が得意でいるらしいイツキには……下手をすると俺達以上に懐いているからな。
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