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忍者のまかない

第3話 陰の気持ち②

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 それから、何度かカキの運搬を繰り返していくうちに。

 スイード、のお腹が……凄い音を立ててしまった。スイードもびっくり、したけど……周りにいる海の男らも同じだった。


「だっはっは! 仕方がねぇ、今あの嬢ちゃんが美味い飯作ってくれてんだ。ちぃっと待ちな!!」


 恰幅のいい男……ゲイリッシュ=リペクト。

 スイード、の情報でも知っている。ワルシュ様のように……SSではないが、手前のSランク冒険者だったかつての英雄。

 年齢を考えて、今は引退……して、故郷であるこの海辺を中心に……若い衆の、人材育成……をしているそうだ。年齢は、ワルシュ様よりずっと上だが……ワルシュ様とは親しいみたい。

 ゲイリッシュ……様は、先にあのフライを食べたのか、物凄い笑顔でいた。


(……食べ、たい!)


 少しずつ、感情があふれているスイードは……待ちきれなかった。

 大して動いていないけれど、満足に食事をしていないから仕方がないだろう。けど……もう少し、もう少しで、あのフライが食べられる。

 そう思っていると、ゲイリッシュ様が……スイード達に、もう少し手伝えと言ってきた。


「材料がちぃっと足んねーんだと。洗浄クリアで綺麗にしたギザ石で古いパンをすりおろして欲しいそうだ」

「「「「??」」」」

「味見したが、うんめぇぞ? お前らも食いたくねぇか? 特級料理人の飯!」

「「「「うぉおおお!!」」」」


 あの屑は……パンなのか。

 周りの男達は声を上げたが、スイード……も食べたい!!

 すっごく……食べたい、と思ったから、ゲイリッシュ様が言っていた方法でパンを屑にしていく。出来上がったそれを、見た目は下っ端に変装している……スイードが器に入れた『パンコ』をイツキ様のところへ持っていくことになった。

 到着すると、イツキ様は……カキを大きな器の中で、何か準備していた。


「追加。持ってきたっす」


 姿と口調を変えた、スイードには……イツキ様も気づかないのか、こちらを向いて笑顔になってくださった。


「お疲れ様です。パン粉、助かりました。私と料理長だけじゃ、手が回らなくて」

「大丈夫っす」


 下々の者……にまで、丁寧な口調を変えない、イツキ様。

 いずれ……貴族の一員になるのに……欲のない、不思議な女性。

 スイード……とは、全然違う。

 けど……スイードも、不思議な感じがする。

 向かい合うと……心が、温かくなる気がするのだ。

 パンコを渡してから、もう一度作りに行こうか戻ろうとすると……何故か、こっちに来た……ゲイリッシュ様に肩を掴まれて、端に連れて行かれた。


「……お前さん、『陰』だな?」


 怒りを向けられたわけではないが……あっさりと、スイードの正体を見破られてしまったのだった。
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