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メイドのまかない⑤
第4話『クッキーの種類』
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ジンジャーとは……薬草学では、材料となる『ジンジャー《アロファ》』と呼ばれる、薬草の根を模したようなものだった。食用に使えるとは思わず、学園では薬学で刻んだりはしたことがある程度。
『お料理に最適ですし、シロップにも出来るんですよ? 陛下に以前、そのジュースを振る舞ったことがきっかけでお気に入りになりましたし』
『……その、アロファでクッキーを?』
『このままではなく、皮を剥いてすりおろすんです』
『……わかりました』
甘味には蜂蜜を使ったりと……普段のものから、愛友祭で教えていただいたクッキー作りとはまた違った、クッキー作り。
チョコレートの時とは違い、形は包丁で切るだけとお手軽だったが……出来上がりはシンプルで、しかしながら他の香辛料も入れたお陰で、香りが強いクッキーとなっていた。
『レクサスさんはお酒も好きですし、くじで当たらなかった場合のも取り分けておきましょう』
と、イツキ殿がおっしゃったことは杞憂で終わってしまったけれど。
「わ!? 可愛いクッキー!!」
殿下のお声に、皆様方の興味がそちらに行かれると……陛下方も殿下の箱の中身を覗くと『おお!?』と声を上げられた。
「凄いな……細工が素晴らしい!」
「ええ、本当に!!」
私もレクサス殿が行こうと手を引くのでご一緒に向かえば……箱はまだ開いたままで、中身がよく見えるように陛下方が私達を間に入れて下さった。
「おん?」
「……まあ」
私が作ったジンジャークッキーが素朴なものであれば。
殿下がくじで当てられたイツキ殿のプレゼントの中身は……、絵を描いたような愛らしいクッキーだった。私の考察でも、土台のクッキーはシンプルなものでも、上の絵は何かインクでも使われたように美しい。しかし、これは食べられるものだろうか??
絵は、普通の絵画とは違い……可愛いらしい感じの妖精などのものであるが。
「ふふ。そちらのクッキーはアイシングクッキーといいまして……絵の部分は色付けした砂糖液で描いたんです」
「ほんま!?」
「「凄いわ!」」
「……イツキは何でも出来るのだな」
「以前、趣味で少々」
皆様方が誉めてくださるのに、イツキ殿は相変わらず偉ぶらずに腰を軽く折るだけ。
(……本当に、この方は)
国の大恩人で、英雄級冒険者だったワルシュ様の養女なのに。
なんと、心の清い方なのだろう。
私のようなものにも、料理を惜しみなく伝授してくださる。
レクサス殿が、友人にと言う理由が改めてよくわかった。
そのレクサス殿から……それぞれのプレゼントの開封が終わった後に、何故か食堂のベランダに呼ばれたのだ。
「レクサス殿?」
「なあ、サフィア」
いつもの砕けた物言いとは違い、真剣な声音となったので心臓が思わず高鳴ってしまう。すぐに、騎士の正装としてつけていた手袋を外され、私の頬にその温かな手を添えてこられた。騎士として日夜鍛錬されていらっしゃるので……滑らかではないが、温かく頼もしい手だった。
「は……はい」
「自分が踏ん切りつかんかっただけやけど……な?」
キスをされるくらい顔を近づけて来られるのに……真剣な表情に目を閉じることが出来ないくらい、私の緊張が高まっていく。
「レクサス殿が……?」
「ほとんど、婚約したもんやし……そろそろ先に進まん?」
「……先?」
「関係の、先や」
と口にされた後……柔らかく、唇を食むようなキスを施され。
すぐ離れたが……緩く微笑むその表情に……恋愛についてからっきしだった私でも、やっと意味がわかった。つまりは……この先の、身体としての関係についてだろう。
否かどうか問われても……逃げ道がないという状況とほぼ同じ。
けど……いやではない。
不快には思わない。この方となら。
だから……と、私はいつのまにか頬を包まれていた彼の手に自分の手を重ねて。
今の距離なら届くと、レクサス殿の唇に己のを重ねて、承諾の意を示した。
だけど、先の事については……後日、お預けとなってしまったのだ。
『お料理に最適ですし、シロップにも出来るんですよ? 陛下に以前、そのジュースを振る舞ったことがきっかけでお気に入りになりましたし』
『……その、アロファでクッキーを?』
『このままではなく、皮を剥いてすりおろすんです』
『……わかりました』
甘味には蜂蜜を使ったりと……普段のものから、愛友祭で教えていただいたクッキー作りとはまた違った、クッキー作り。
チョコレートの時とは違い、形は包丁で切るだけとお手軽だったが……出来上がりはシンプルで、しかしながら他の香辛料も入れたお陰で、香りが強いクッキーとなっていた。
『レクサスさんはお酒も好きですし、くじで当たらなかった場合のも取り分けておきましょう』
と、イツキ殿がおっしゃったことは杞憂で終わってしまったけれど。
「わ!? 可愛いクッキー!!」
殿下のお声に、皆様方の興味がそちらに行かれると……陛下方も殿下の箱の中身を覗くと『おお!?』と声を上げられた。
「凄いな……細工が素晴らしい!」
「ええ、本当に!!」
私もレクサス殿が行こうと手を引くのでご一緒に向かえば……箱はまだ開いたままで、中身がよく見えるように陛下方が私達を間に入れて下さった。
「おん?」
「……まあ」
私が作ったジンジャークッキーが素朴なものであれば。
殿下がくじで当てられたイツキ殿のプレゼントの中身は……、絵を描いたような愛らしいクッキーだった。私の考察でも、土台のクッキーはシンプルなものでも、上の絵は何かインクでも使われたように美しい。しかし、これは食べられるものだろうか??
絵は、普通の絵画とは違い……可愛いらしい感じの妖精などのものであるが。
「ふふ。そちらのクッキーはアイシングクッキーといいまして……絵の部分は色付けした砂糖液で描いたんです」
「ほんま!?」
「「凄いわ!」」
「……イツキは何でも出来るのだな」
「以前、趣味で少々」
皆様方が誉めてくださるのに、イツキ殿は相変わらず偉ぶらずに腰を軽く折るだけ。
(……本当に、この方は)
国の大恩人で、英雄級冒険者だったワルシュ様の養女なのに。
なんと、心の清い方なのだろう。
私のようなものにも、料理を惜しみなく伝授してくださる。
レクサス殿が、友人にと言う理由が改めてよくわかった。
そのレクサス殿から……それぞれのプレゼントの開封が終わった後に、何故か食堂のベランダに呼ばれたのだ。
「レクサス殿?」
「なあ、サフィア」
いつもの砕けた物言いとは違い、真剣な声音となったので心臓が思わず高鳴ってしまう。すぐに、騎士の正装としてつけていた手袋を外され、私の頬にその温かな手を添えてこられた。騎士として日夜鍛錬されていらっしゃるので……滑らかではないが、温かく頼もしい手だった。
「は……はい」
「自分が踏ん切りつかんかっただけやけど……な?」
キスをされるくらい顔を近づけて来られるのに……真剣な表情に目を閉じることが出来ないくらい、私の緊張が高まっていく。
「レクサス殿が……?」
「ほとんど、婚約したもんやし……そろそろ先に進まん?」
「……先?」
「関係の、先や」
と口にされた後……柔らかく、唇を食むようなキスを施され。
すぐ離れたが……緩く微笑むその表情に……恋愛についてからっきしだった私でも、やっと意味がわかった。つまりは……この先の、身体としての関係についてだろう。
否かどうか問われても……逃げ道がないという状況とほぼ同じ。
けど……いやではない。
不快には思わない。この方となら。
だから……と、私はいつのまにか頬を包まれていた彼の手に自分の手を重ねて。
今の距離なら届くと、レクサス殿の唇に己のを重ねて、承諾の意を示した。
だけど、先の事については……後日、お預けとなってしまったのだ。
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