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王女のまかない⑪

第4話『念願フライドチキン』

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 プレゼントの開封などはあとですることになり、ひとまずはイツキの用意してくれたクリスマスディナーを食べることになったわ。

 何故かって、ジェラルドから盛大に大きなお腹の音を響かせたからなの。


「あ、ぶー!」


 お母様の腕の中で、『早く食べたい!』と言っているように見えている我が弟は……きっと将来大物になれるわ。王様って身分になるのはもちろんだけど。


「では、皆さん。ディナーにしましょうか?」


 今日はワルシュが忙しくて参加出来ないので、メインであるイツキが司会進行役のような立場にいるのよね?

 配膳とかは、ネルやアーネストが手伝っていたから大丈夫だけど。


「まあ!」

「これは……すごいな?」


 お父様達は当然見たことがない、日本のクリスマスディナー。


 フライドチキン

 皮付きフライドポテト

 ピザ数種

 海老のビスクぽいオレンジ色のポタージュ

 コーンポタージュ

 シーザーサラダ


 などなどなど。


 私はとにかく、フライドチキンをいち早く食べたいわ!!

 見た目だけだと、あの有名チェーン店のように色んな部位で作ったフライドチキンが山盛りあるんだもの!!


「サラダやスープ以外は手づかみでどうぞ」


 イツキはちょうど、お母様にジェラルド用の離乳食クリスマスディナーを渡しながら、お父様に向けてそう告げた。


「ん? 手づかみでか?」

「はい、陛下。特にそちらの茶色の塊……コカトリスのフライドチキンはかぶりつくのが醍醐味です」

「……そうか。まあ、気兼ねない者ばかりだからいいが」


 ちらっと、私やサフィアを見たお父様はきっと。婚約者がいる前で、そんな食べ方をするのは女として恥ずかしいんじゃとか思っているかもしれないが。

 サフィアはわかるけど、私は今更だわ。ネルの前で何度も見せてしまっているんだもの?


「イツキ! これどこにかじりついてもいいのかしら?」


 だから、私がわざとイツキに聞くことでお父様とかの躊躇いを和らげることにした。


「はい。骨だけには注意してください」

「わかったわ」


 取り分けられた皿の上に乗っていたフライドチキン。

 布ナフキンで掴むと、あとで手を拭けなくなるから……ワイルドに両手で持ち上げて、勢いよくガブっとかじりついた!


(んん~~~~!!)


 イツキのもともとの腕前もだけど。

 チートスキルの『特級料理人』や『鑑定』のお陰で。

 転生したことで、二度と食べられない……ファストフードのメニューを再び食べられるとは思わなかったわ!!

 ちょっと冷めているのに、スパイシーな味付けは本物そっくりで。

 しっとりした衣はお肉とベストマッチ過ぎて!

 ひと口食べたら、次が抑えられない食欲を掻き立てる!!

 皆の前だけど、骨までしゃぶりつくような衝動も抑えられないわ!! お肉も柔らかくてジューシーだし!!


「……リュシア、そんなにもか?」

「ええ!」


 お父様の疑問にも、私は口周りがベタついていたのでゆっくりとナフキンで拭きながら答えたわ。
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