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騎士のまかない㉔
第1話『美味しくないアボカドフリットの原因』
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やってしまった。
言ってしまった……こんな真っ昼間から。
とは言え、日も傾いてきたのだ。そろそろ、予約してある宿に行くべきか。
(いやいや……まだ早い)
イツキに言ってしまったとは言え、同意を受け取ったわけではないのだ。拒否はされていないが……だからって、『では、しよう』と言うことに繋がるわけではない。
少し前に嬉しくなって口づけをしたが……それだけでも、盛大に照れてしまったイツキだ。床に行けばどうなってしまうか……想像するだけで、可愛らしいだろう。
なら、もうひとつの方法で彼女を先に落ち着かせよう。
そう思っていたら。
「……アボカドのフリット」
市場の並びを横切ろうとしていたら、イツキが少し興奮気味でそのようなつぶやきをこぼした。
「アボカド? 以前イツキが用途を広めてくれた」
「あ、はい。今……フリットと一緒に匂いが」
「そう言えば……」
実家の公爵家を経由して、いくつか知らせがあった。妹のアイシスがアボカドを使ってサンドイッチを作ったりもしたが……市井の方でも、イツキが生産ギルドにレシピを登録させたことで、用途が広まった。
その中でも、俺はフリットは好きだった。素揚げではなく、衣と言うものをまとわせて油で揚げたあれは塩だけでも十分に美味いのだ。
食べたいのか、と聞くとイツキは首を左右に振った。
「揚げ油が気になって。ここでも匂うくらい酸化しているので」
「……さんか? とは?」
「揚げ油もですが、食材は時間が経てば腐敗するのはわかりますよね?」
「ああ、何と無くは」
「それを幾度も使い過ぎる……油ではそれが多いんです。こまめに油を変えないと……体に影響を及ぼす食事を作るだけになります」
それに、味にも影響が及ぼす可能性が。
と、イツキが言うので、それはいけないと匂いの根源である屋台に行けば。
ひとりの女性の店員が、楽しそうに調理しているところだった。
「あら、いらっしゃい」
「いきなりですみません。さしでがましいことを申しますが」
「? はい?」
「こちらで調理している商品……最近、あまり売れていないのでは?」
「え、ええ!? なんでそれを!?」
やはり、イツキは素晴らしい。
特級料理人と言う技能があるお陰もあるだろうが、以前いた場所での経験もあるからだろう。
店員は調理の手を止めて、あわあわとし出した。
「改善は出来ます。揚げ油を定期的に変えればいいんですよ」
「油を?」
「揚げ油は使い込めば、使うだけさまざまな食材の一部が溶け込んで……味だけでなく、色や匂いも変わります。お姉さんのお店だとなにを揚げていますか?」
「えっと……アボカドのフリット、以外は特に」
「じゃあ、なおさら質のいい油にすべく、頻繁に変えましょう。それだけで、味も全然違います」
「ほえ~? お姉さん、すごいねぇ? 料理人? にしては、食べてないのに詳しいけど」
「えっと……ちょっと、働いている関係で」
まさか、特級料理人で……ワルシュ料理長の養女とは言いにくいだろう。
それと、味見を兼ねて一度店員が作ったアボカドのフリットを口にしたが。
たしかに、おかしな風味が口の中に広がった。
言ってしまった……こんな真っ昼間から。
とは言え、日も傾いてきたのだ。そろそろ、予約してある宿に行くべきか。
(いやいや……まだ早い)
イツキに言ってしまったとは言え、同意を受け取ったわけではないのだ。拒否はされていないが……だからって、『では、しよう』と言うことに繋がるわけではない。
少し前に嬉しくなって口づけをしたが……それだけでも、盛大に照れてしまったイツキだ。床に行けばどうなってしまうか……想像するだけで、可愛らしいだろう。
なら、もうひとつの方法で彼女を先に落ち着かせよう。
そう思っていたら。
「……アボカドのフリット」
市場の並びを横切ろうとしていたら、イツキが少し興奮気味でそのようなつぶやきをこぼした。
「アボカド? 以前イツキが用途を広めてくれた」
「あ、はい。今……フリットと一緒に匂いが」
「そう言えば……」
実家の公爵家を経由して、いくつか知らせがあった。妹のアイシスがアボカドを使ってサンドイッチを作ったりもしたが……市井の方でも、イツキが生産ギルドにレシピを登録させたことで、用途が広まった。
その中でも、俺はフリットは好きだった。素揚げではなく、衣と言うものをまとわせて油で揚げたあれは塩だけでも十分に美味いのだ。
食べたいのか、と聞くとイツキは首を左右に振った。
「揚げ油が気になって。ここでも匂うくらい酸化しているので」
「……さんか? とは?」
「揚げ油もですが、食材は時間が経てば腐敗するのはわかりますよね?」
「ああ、何と無くは」
「それを幾度も使い過ぎる……油ではそれが多いんです。こまめに油を変えないと……体に影響を及ぼす食事を作るだけになります」
それに、味にも影響が及ぼす可能性が。
と、イツキが言うので、それはいけないと匂いの根源である屋台に行けば。
ひとりの女性の店員が、楽しそうに調理しているところだった。
「あら、いらっしゃい」
「いきなりですみません。さしでがましいことを申しますが」
「? はい?」
「こちらで調理している商品……最近、あまり売れていないのでは?」
「え、ええ!? なんでそれを!?」
やはり、イツキは素晴らしい。
特級料理人と言う技能があるお陰もあるだろうが、以前いた場所での経験もあるからだろう。
店員は調理の手を止めて、あわあわとし出した。
「改善は出来ます。揚げ油を定期的に変えればいいんですよ」
「油を?」
「揚げ油は使い込めば、使うだけさまざまな食材の一部が溶け込んで……味だけでなく、色や匂いも変わります。お姉さんのお店だとなにを揚げていますか?」
「えっと……アボカドのフリット、以外は特に」
「じゃあ、なおさら質のいい油にすべく、頻繁に変えましょう。それだけで、味も全然違います」
「ほえ~? お姉さん、すごいねぇ? 料理人? にしては、食べてないのに詳しいけど」
「えっと……ちょっと、働いている関係で」
まさか、特級料理人で……ワルシュ料理長の養女とは言いにくいだろう。
それと、味見を兼ねて一度店員が作ったアボカドのフリットを口にしたが。
たしかに、おかしな風味が口の中に広がった。
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