王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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騎士のまかない㉓

第1話 意外な関係

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 エマの店に逃げるように入った後は。

 俺もだが、イツキも肩で大きく息をすることになった。彼女の養父であるワルシュ料理長もだが……ある意味救世主扱いになったイツキの知名度は凄い。

 レシピだけでなく、アレルギーを含めた病の原因を判明したのだ。救われた人間はイージアスだけではない。

 エマの失態とは言え、まさかここまで知名度が高くなっているとは予想以上。近衛騎士としての視察も最近はしていないので油断していた。


「……ごめんなさいね~? 無闇に呼んじゃってー」


 流石のエマも、屈強な体を縮こませてしまったほどだ。


「……いえ。私も無闇に知識をひけらかしてしまって」

「のんのん! イツキちゃんはあの店主を励ましていたんでしょ~? あの堅物は料理の腕は結構いいのに、接客が下手だもの」

「……随分とずけずけ言うんだな?」

「あたしの幼馴染みだものぉ?」

「……なるほど」


 随分と性格の差は大きいが、人間どこで交友が繋がっているかもわからない。

 イツキも納得していると、何か閃いたのかいきなり両手を叩いた。


「……エマさんの彼氏さんですか?」

「ど、どどど、どうしてわかったのぉおおおお!!?」


 イツキの質問に、エマが盛大に慌て出した。家の関係でそこそこ付き合いは長いが、このように慌てまくるエマを見たことはない。

 やはり、イツキは異世界からの渡航者という部分を抜きにしても……相手をよく見ているのだなと実感出来た。


「そうですよ~? 店長とクラウドさんは、タイプこそ違えどラブラブカップルなんですよー?」


 店員のひとりが茶を持ってきてくれた。腹がふくらんでいたので懐妊の状態なのは、女性に鈍い俺でもさすがにわかった。


「嬉しいことですねー?」

「はい。けど、なかなか結婚までいかなくて」

「ミランダ~~!!?」

「事実じゃないですか~?」


 結婚したのは部下の方が先でも、交際についてはどちらが先か聞くのは野暮でも。

 あの店主とエマが……幼馴染みだけでなく、それ以上の関係となれば、人それぞれの付き合い方があるのだろう。俺も他人事とは言えないが。


「そ、それより!! 今日はアーニーと遊びにきたのん?」

「あ、はい。……久しぶりに」


 その時の、イツキのはにかんだ笑顔に俺の欲望などぶつけてはいけないのでは……と浄化されそうな気持ちになった。


「あーらあら? 相変わらず初々しいわねん? 婚姻はまだなのん??」

「え」

「……まだ、だ」


 婚約はしたが……それ以上の関係になるために、今日はこの街に来たのだから。エマとて、そう簡単には言えないがな!!?
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