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騎士のまかない㉑
第2話 久しぶりにお出かけ
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それから、数日後の休暇日本番。
イツキと待ち合わせにした中庭で待っていると……刻限に近くなったら、彼女がやってきた。
この世界での普段着にも慣れたのか、今日も俺の瞳に美しく写った。普段の料理人としての服装ももちろん似合ってはいるが……胸をつぶすコルセットをしていない服装だと、彼女の魅力のひとつであるふくよかな胸がこれでもかと強調されている。
冬が間近に迫っているので、上着の上からしかわからないが……やはり、大きい。
(直に目にしたら……)
鼻血が出てしまうのでは、と邪なことを考えてしまった。
いかん、と内心だが雑念を振り払い、彼女が持っていた鞄を受け取ることにした。泊まりの荷物なので、俺の亜空間収納に入れておくためだ。
「イツキ。よく似合っている」
「……ありがとうございます。以前に、選んでいただいた服を着てきたんですが……リュシアーノ様やサフィアさんには、たくさんメイクされちゃいました」
「……そうか。それも美しいよ」
「……ありがとうございます」
『氷の美少女』などと呼ばれている、レクサスの婚約者になった殿下の第一メイドであるあの御令嬢。
レクサスと恋仲になった頃から、少しずつ感情が表に出るようになったそうだが……イツキを着飾らせてくれたとは。彼女も彼女なりに、意欲的な部分が表れたのだろう。イツキは彼女とレクサスにとっても恩人だからな。
俺が身なりのことを褒めると、イツキは頬を愛らしくピンクに染めていく。その愛らしさに抱きしめたい衝動に駆られたが、我慢した。完全に無人でないこの場所でいちゃつくわけにはいかないからだ。
とりあえず、俺の荷物も入れてある亜空間収納にイツキの荷物を入れて、転移の方陣へと共に向かうことにした。
俺達以外にも、方陣を使うことがあるので待ち時間があったのだが。
方陣の前で整理係などをしていた、近衛の部下らには……何故か、生暖かい目で見られた。イツキとこうして、外に行く機会が少ないからか……あとここ最近の様子で察したのかもしれん。
なので、鋭く視線を向ければそっぽを向かれたが……気にしないでおくことにした。
方陣を使い、ジェイシリアに行けば……向かったのはその前に誰もいなかったようで、門に行けば俺達だけだったので身分証を出してすんなり手続きすることが出来た。
「さて。氷の方はまだ無理だから……イツキ、行きたいところはあるか?」
「え、行きたいところ?」
「ここに来るのも久しぶりだ。泊まりまでまだだいぶ時間がある。あちこち行こうじゃないか?」
「……遊ぶ、ってことですか?」
「まあ、そうだな」
さすがに、昼間から盛るなどとマナーにしてもよろしくないことくらい、俺だって弁えているつもりだ。
イツキと待ち合わせにした中庭で待っていると……刻限に近くなったら、彼女がやってきた。
この世界での普段着にも慣れたのか、今日も俺の瞳に美しく写った。普段の料理人としての服装ももちろん似合ってはいるが……胸をつぶすコルセットをしていない服装だと、彼女の魅力のひとつであるふくよかな胸がこれでもかと強調されている。
冬が間近に迫っているので、上着の上からしかわからないが……やはり、大きい。
(直に目にしたら……)
鼻血が出てしまうのでは、と邪なことを考えてしまった。
いかん、と内心だが雑念を振り払い、彼女が持っていた鞄を受け取ることにした。泊まりの荷物なので、俺の亜空間収納に入れておくためだ。
「イツキ。よく似合っている」
「……ありがとうございます。以前に、選んでいただいた服を着てきたんですが……リュシアーノ様やサフィアさんには、たくさんメイクされちゃいました」
「……そうか。それも美しいよ」
「……ありがとうございます」
『氷の美少女』などと呼ばれている、レクサスの婚約者になった殿下の第一メイドであるあの御令嬢。
レクサスと恋仲になった頃から、少しずつ感情が表に出るようになったそうだが……イツキを着飾らせてくれたとは。彼女も彼女なりに、意欲的な部分が表れたのだろう。イツキは彼女とレクサスにとっても恩人だからな。
俺が身なりのことを褒めると、イツキは頬を愛らしくピンクに染めていく。その愛らしさに抱きしめたい衝動に駆られたが、我慢した。完全に無人でないこの場所でいちゃつくわけにはいかないからだ。
とりあえず、俺の荷物も入れてある亜空間収納にイツキの荷物を入れて、転移の方陣へと共に向かうことにした。
俺達以外にも、方陣を使うことがあるので待ち時間があったのだが。
方陣の前で整理係などをしていた、近衛の部下らには……何故か、生暖かい目で見られた。イツキとこうして、外に行く機会が少ないからか……あとここ最近の様子で察したのかもしれん。
なので、鋭く視線を向ければそっぽを向かれたが……気にしないでおくことにした。
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「さて。氷の方はまだ無理だから……イツキ、行きたいところはあるか?」
「え、行きたいところ?」
「ここに来るのも久しぶりだ。泊まりまでまだだいぶ時間がある。あちこち行こうじゃないか?」
「……遊ぶ、ってことですか?」
「まあ、そうだな」
さすがに、昼間から盛るなどとマナーにしてもよろしくないことくらい、俺だって弁えているつもりだ。
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