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王女のまかない⑩

第4話 お節介かもだが

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 それにしても……アーネストが。

 やっと……やっと、イツキを誘うようになったのだから……これは誉めていいことかしら?

 私自身は……まだ十年近く、大好きな婚約者のネルとキスも出来ない関係ではあるが。時々思うのよね?

 中年くらいの、ステキなおじ様になったネルを想像すると思うと……それはそれで素敵だと思うわ!

 ただ……ネルって、老化があんまり見られないから。その歳になっても変わらないのかしら? それはそれで素敵だとは思うけれど。


(……いーなぁ)


 前世の記憶を取り戻して。

 大好きな人と一緒にいられるというのは本望ではあっても。

 まだまだ子供の見た目では、その大好きな人とも触れ合えない。だから……転移でこの世界にやってこれたイツキがいくらか羨ましい。

 キスもハグも、それ以上のことも出来るだろうに……その一線を越えることがなかなか出来ない。その気持ちは……あのふたりが奥手だからわからなくも無いけど。

 今も、ジェラルドをあやしながらゆっくりと小豆アイスクリームをあげるイツキの表情は満たされたものだった。

 ジェラルドくらいの子供が居てもおかしくないのに……婚約はしても、アーネストがただでさえヘタレだから、先の先を進めないでいた。その境界を越えようと動いたのも、アーネストではあるけれど。


「あーう、あう!」

「いけませんよ、ジェラルド様? これ以上はお腹を壊してしまいます」

「うー」


 敬語とかを外したら、まるでお母さんにも見えるイツキの接し方。

 それを見て、イツキとアーネストの子供が生まれたら……どんな子なのか想像してしまったが。

 イツキは日本人にしても、綺麗めで可愛い顔立ちだし。

 アーネストは堅物でネルには劣ってもイケメンの部類。

 となれば、男でも女でも可愛い赤ちゃんの予想が出来るわ。

 絶対抱っこしてみたい! と想像したところで……私はジェラルドが『ぶーぶー』言っていたのを軽く頭を撫でて落ち着かせた。


「ダメよ、ジェラルド? おトイレが大変になるわ」

「うー?」

「お腹痛い痛いになるわよ?」

「うー……」


 まだしゃべられないので、返事の意味まではわからないが……多分、痛いのが嫌だとはわかってくれたと思う。

 暴れるのをやめて、頭をヨシヨシ撫でてから……私もまたひと口食べてみれば。

 カップアイスのような、なめらかな口溶けが特徴の小豆アイスクリームが口いっぱいに広がっていったわ。


「ふふ。リュシアーノ様は、良きお姉様ですね?」

「……そうかしら?」


 はるか遠い記憶、前世での妹夫婦の子供を世話した時のあやし方を真似た部分はあるけれど。お母様がいる手前、それは話せない。


「そうね? リュシアは本当に凄いわ」


 笑顔でいることが増えたお母様。

 ジェラルドを産んだことで、世継ぎの問題は解決したけれど。

 イツキも居てくれたことで、内面も落ち着いているようだ。母親にとって、子育ての辛さを打ち明けられる友人などが居ると安心出来ると、前世の妹は言っていたが。

 今は、本当に落ち着いているようだ。

 イツキは私の友人でもあるが、同時にお母様の友人でもある。

 だからこそ、次はイツキにももっと幸せになって欲しい。

 そのためには……デートプランを立てて、ネルと一緒にアーネストへ突撃するしかないわ!!
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