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隊長のまかない⑧

第3話『ハロウィンディナー』②

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 フォークでパンポンに触れた途端……皮ごと柔らかく、パンポンがほろっと崩れました。

 たしかに火が通っているとはわかっていましたが……ここまで?

 皮も食べられることは知っていました。しかし、たいていは皮は取り除いて、ポタージュと言うスープにするのが普通のパンポン。

 パイの時とは違い、パンポンを丸ごと扱うなど……やはり、異世界ならではの発想でしょうか。

 まずは、パンポンだけを口に入れてみました。やはり、今まで口にしてきたような素朴な甘さと皮のほろ苦さが絶妙です。

 これは……じゃがいもでも、野営であったようなバターを落とすだけでも腹が膨れるかもしれません。イツキにその話を持ちかけると、リュシアーノ様も頷かれました。


「ありますね?」

「かぼちゃとバターは合うものね? ポタージュにも入っているのかしら?」

「基本は味の決め手に入れているはずです。今日は重い料理二品なのでやめておきましたが」

「正解! 私の体じゃ、パイとグラタンちょっとでお腹膨れちゃう」

「しかし……パンポンは固いですしね? イツキ、ヒートの加減は軽く熱を伝えるくらいでいいのですか?」

「はい。力技で割ることも出来ますが、手首などへの負担が大きいですからね? 特に女性へはおススメ出来ないです」

「なるほど……」


 その方法がわかれば、騎士達の野営任務もですが……産地でもある村への需要も変わってくるでしょう。イツキはバターでも塩を含んだ方が甘さを引き立てると教えてくださったので、また時間がある時にご教授願いましょう。

 グラタンの具材の方は……ソースがしっかりとした塩気が牛乳などに含まれ、ベーコンやパスタに絡む味わいが堪りません!

 上の少し焦げたチーズ……とサクサクした部分が最初何かわかりませんでしたが、イツキが『パン粉』と教えてくださったので……コロッケなどに扱うあの表面と同じものだと分かりました。


「かぼちゃ尽くし、美味し~~!!」


 リュシアーノ様は本当に嬉しそうに笑われる回数が増えました。

 いっとき、僕の想いを伝えたことで混乱させてしまいましたが……あれがなければ、リュシアーノ様は『若菜ワカナ』の記憶も蘇ることもなく……僕の想いを受け止めてくださいませんでした。

 それが報われた今……このように、愛らしい笑顔を間近で見れるようになるとは。僕は……本当に果報者ですね。


「……本当に美味い!」


 僕の考えは他所に、婚約者の料理を堪能している右腕のアーネストはグラタンにがっついていました。仮装にふさわしく、まさにワーウルフそのものですよ。美味しいとは言え、もう少しゆっくり味わって食べてください!!
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