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騎士のまかない⑰
第4話『苦手克服、キノコ料理』
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その日の晩、俺は中央厨房に行き……イツキから、俺でも食べられそうな『キノコ料理』を振る舞ってくれたのだった。
「お待たせ致しました!! キノコ料理です!!」
「…………これが」
イツキの用意してくれた、俺でも食べられるかもしれないキノコ料理尽くし。
メニューは、イツキがひとつずつ教えてくれた。
シイラ茸と豚ひき肉を使った、肉詰め。上には俺の好物であるチーズを乗せて焼いてある。
まいまい茸の天ぷら。天ぷら自体に味はついていないので、好みで塩かイツキの用意したテンツユというタレをつけるのがいいそうだ。
ナメコ茸のナメタケ。炊き立ての米には抜群に合う味付けにしてあるらしい。甘塩っぱいのが特徴。
花びら茸はバターとショーユで炒めたものだが……。
どれもが、イツキが調理したものと知っていなければ……絶対避けていたものばかり。
自分で言い出したとは言え……本当に食べられるか。
「……無理でしたら、残していただいて大丈夫ですので!」
「!? い、いや……いただこう」
そうだ、克服出来るかわからないにしても。
愛する女性に作ってもらった料理を……無駄にしてはいけない。自分で言い出したのだから、なおさら。
俺はフォークを持ち、まずは一番食べやすそうな肉詰めの方に向けた。
肉とチーズの香りに混じって、シイラ茸の独特な香りもする……。たしか、実家のヨルダン達がスープなどに細切りにして入れていたような。香りもだが、ぬめっとした食感が嫌だった。
この肉詰めはぬめりは見えないが……と、肉とチーズの匂いで誤魔化している間に、口に入れてみた。
弾力もあったが、ふかっとした不思議な食感がしたのだ。
「……どうでしょうか?」
「…………まい」
「え?」
「美味い! キノコを食べているのに、美味いんだ!!」
食べやすいように、肉とチーズを使っているおかげもあるだろうが……それでも、キノコを噛むことすら毛嫌いしていた俺が。キノコを……素直に美味いと思えたのだ!!
フォークに刺さっていた残りも、すぐに口に入れて噛んでいく。あの独特な食感はたしかにあるのに……あふれ出てくる美味さが苦手だった俺の心を溶かしていくような。
そんな気持ちになれたのだ。
「! 肉詰めが大丈夫でしたら、次はバター醤油の炒め物もいいかと」
「これか!」
一個食べ終えてから、イツキの勧めで口にしてみれば……たしかに食べやすく、そしてキノコなのにシャキシャキした食感が楽しい味わいだった。その次は天ぷらに行こうとしたが。
「今、米をひと口食べてみてください」
「!?」
言われたとおりにすると……濃い味付けで満たされた口の中が綺麗に消えた感じがしたのだ。
「ふふ。間を置くと、次の料理がより一層美味しく感じますよ?」
「……君の料理は、本当に素晴らしいよ」
「ありがとうございます。アーネストさんに喜んでいただけて、私も嬉しいです」
残りの二品も難なく食べられ、俺はイツキが手がけた物なら苦手な食材でも食べられることがわかった。逆に、イツキには苦手なものがないか聞くと……コンニャクと言うゼリーのようでまったく違う芋を加工した食材だと教えてもらった。
そんな食材は聞いたことがないが、無理にイツキに食べさせないよう……出会うことがあったら気をつけようと決めて。
それからは、秋のメニューと言うことで食堂にも出だしたキノコ料理を俺は何とか残さずに食べられるようになった。
「お待たせ致しました!! キノコ料理です!!」
「…………これが」
イツキの用意してくれた、俺でも食べられるかもしれないキノコ料理尽くし。
メニューは、イツキがひとつずつ教えてくれた。
シイラ茸と豚ひき肉を使った、肉詰め。上には俺の好物であるチーズを乗せて焼いてある。
まいまい茸の天ぷら。天ぷら自体に味はついていないので、好みで塩かイツキの用意したテンツユというタレをつけるのがいいそうだ。
ナメコ茸のナメタケ。炊き立ての米には抜群に合う味付けにしてあるらしい。甘塩っぱいのが特徴。
花びら茸はバターとショーユで炒めたものだが……。
どれもが、イツキが調理したものと知っていなければ……絶対避けていたものばかり。
自分で言い出したとは言え……本当に食べられるか。
「……無理でしたら、残していただいて大丈夫ですので!」
「!? い、いや……いただこう」
そうだ、克服出来るかわからないにしても。
愛する女性に作ってもらった料理を……無駄にしてはいけない。自分で言い出したのだから、なおさら。
俺はフォークを持ち、まずは一番食べやすそうな肉詰めの方に向けた。
肉とチーズの香りに混じって、シイラ茸の独特な香りもする……。たしか、実家のヨルダン達がスープなどに細切りにして入れていたような。香りもだが、ぬめっとした食感が嫌だった。
この肉詰めはぬめりは見えないが……と、肉とチーズの匂いで誤魔化している間に、口に入れてみた。
弾力もあったが、ふかっとした不思議な食感がしたのだ。
「……どうでしょうか?」
「…………まい」
「え?」
「美味い! キノコを食べているのに、美味いんだ!!」
食べやすいように、肉とチーズを使っているおかげもあるだろうが……それでも、キノコを噛むことすら毛嫌いしていた俺が。キノコを……素直に美味いと思えたのだ!!
フォークに刺さっていた残りも、すぐに口に入れて噛んでいく。あの独特な食感はたしかにあるのに……あふれ出てくる美味さが苦手だった俺の心を溶かしていくような。
そんな気持ちになれたのだ。
「! 肉詰めが大丈夫でしたら、次はバター醤油の炒め物もいいかと」
「これか!」
一個食べ終えてから、イツキの勧めで口にしてみれば……たしかに食べやすく、そしてキノコなのにシャキシャキした食感が楽しい味わいだった。その次は天ぷらに行こうとしたが。
「今、米をひと口食べてみてください」
「!?」
言われたとおりにすると……濃い味付けで満たされた口の中が綺麗に消えた感じがしたのだ。
「ふふ。間を置くと、次の料理がより一層美味しく感じますよ?」
「……君の料理は、本当に素晴らしいよ」
「ありがとうございます。アーネストさんに喜んでいただけて、私も嬉しいです」
残りの二品も難なく食べられ、俺はイツキが手がけた物なら苦手な食材でも食べられることがわかった。逆に、イツキには苦手なものがないか聞くと……コンニャクと言うゼリーのようでまったく違う芋を加工した食材だと教えてもらった。
そんな食材は聞いたことがないが、無理にイツキに食べさせないよう……出会うことがあったら気をつけようと決めて。
それからは、秋のメニューと言うことで食堂にも出だしたキノコ料理を俺は何とか残さずに食べられるようになった。
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