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先代のまかない

第2話『半ごろしのおはぎ』①

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 と言っても、イツキちゃんがだいぶ下ごしらえをしてくれたようなので……僕はあまり手伝いがいる様子はないと思いましたが。


「コルトさん、こちらの鍋を一緒に持ち上げていただけませんか?」


 蒸す……のに使っていた、東方ではまんじゅうに使う籐籠に似た籠と鍋を一緒に持って欲しいと言われて、僕だけでやりましょうと告げた。

 持ち上げれば、たしかに女性だけでは持ち上げにくいほど重みと熱さを感じる鍋でしたね?


「これの中身は??」

もち米ライシです。と言っても、少しリーゾは混ぜてありますが」

リーゾを??」

「今から作るお菓子には、両方を使うと面白い食感になるからです」

「そのお菓子は?」

「おはぎと言います」


 材料と名前を聞いても……やはり、わからないですね?

 しかし、イツキちゃんの表情はとても輝いています。このお菓子が余程美味しいのか、それと同じくらい、料理をするのが楽しいのでしょう。

 僕も料理はずっと仕事でも生活でもしていたことですのに……未知なるものとわかると、わくわくしてきますね!

 ただ、せっかく出来上がったリーゾもち米ライシを混ぜて炊き上げたものを……何故か、ボウルに入れてしまいました。


「何故このように?」

「これから、棒で潰すんです」

「このままでも良い気が」

「ふふ。コルトさん、おもちは食べたことがありますか?」

「……もち?」


 随分と昔ですが……もち米ライシを使い、粒が残らないくらい潰して練って……伸びる性質のある食べ物は食べたことがあります。

 あれにはリーゾを混ぜてはいませんでしたが……今から作るのは、それと似ているのですかね??

 僕の顔を見て、イツキちゃんはわかったのかにっこりと微笑みました。


「両方を混ぜることで、もちだけとはまた違う食感になるんです」

「なるほど……面白そうですね?」

「潰す……ことを、『ころす』とも言います」

「……少々物騒ですね?」


 それは東方でも聞いたことがありませんでした。

 とりあえず、潰すのは僕が。イツキちゃんはアンコの仕上げに取り掛かることに。

 この潰す作業……思ったよりも重労働でした。これをひとりで取りかかろうとしたイツキちゃんを……思わず褒めたいくらいに。

 アンコの方は、出来上がったらさっそく味見させていただきました。

 東方で口にしたどのまんじゅうの中身よりも、上品で滑らかな舌触り。

 特級料理人だと聞いてはいましたが……ある意味僕以上。

 きっと、ワルシュ君も自分以上だからと、この厨房の管理人に任せたのでしょう。

 僕の潰したもち米ライシ達も上出来だと言っていただけた為……味見をしてみると、もちもちとリーゾの噛み応えが程よく……たしかに面白い食感になりました!
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