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騎士のまかない⑯

第1話 家族で海

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 前々から予定していたことが、ついに実行する日となった。


「海!!」


 叫んだのは、妹のアイシスだ。

 少し前に、父上や兄上とも来たと言うのに……今日のはしゃぎっぷりは違うようだ。視察ではなく……遊びに来ているからだろう。

 俺も遊びに……という日は久しぶりだ。イツキとだけで、デートも兼ねて遊びに行くならどんなに良かったか。父上達がうるさいので、今回のように家族と海に来たのだが。


「海……海!!」


 そして、イツキはアイシスと一緒に馬車から降りたので……目の前に広がる大海原に感動していた。いつもの料理人の服装とは違い、夏用の薄緑色のドレスが良く似合う。


「今日はたくさん遊びましょう!! イツキ殿!!」

「い、いいんでしょうか?? 私もご一緒で……」

「将来的に義姉上なのですから、問題ありませんよ!!」

「……ありがとうございます」


 妹よ、よく言った。

 俺とイツキは婚約したのだから、恋人として屋敷に連れて行った時とは違う。ほとんど家族同然なのだから、さらに打ち解けたい気持ちになるのは至極当然。

 それに、今日は!!


(……父上達がいるとは言え、イツキの水着が見られる!!)


 選びに一緒には行ったのだが……エマに、最高に可愛く色っぽいのを見繕うから海遊び当日までのお預け!! と言われて、イツキにも見せてもらっていない。

 どんな感じなのか。

 どれほど似合うのか。

 アーレン以外のメイドが、簡易的に作った更衣室でイツキや母上達が着替えることになったので、しばし待つことに。

 ラウルはともかく、俺や父上達はすぐに着替えられるからその場で服から水着に。服とかはアーレンとかが預かってくれるので大丈夫だ。


「弟よ、顔が緩み過ぎだ」


 イシュタルト兄上が、ちょうど着替え終わった時に俺の顔を見ながらそんな言葉を口にした。だが、無理もない。

 愛する婚約者の水着姿がどんなものなのか……気になって仕方がないのは当然だろう??


「……兄上とて、義姉上がまだ婚約者の時は。似た顔をしていたじゃないですか」

「否定はしない。俺の嫁は今でも美しい!!」

「……はいはい」


 たしかに、学園時代のマドンナを射止めた兄上だ。ディア義姉上はたしかにラウルを産んだ今も美しいが……俺は俺で、イツキを美しいと思うのだ!! 特に慈愛の女神のような微笑みは喩えようがない!!


「お待たせ致しました!!」


 一番に出てきたのはアイシスだった。

 ここ数年参加していなかったので、水着姿も久しぶりに見たが……薄紫の上下一式が似合う体つきになっていたのだ。そろそろ十五歳なので、考えればそうだが……将来の部下になる予定であれ、変な輩の目に写らないようにして欲しかった。


「アイシス、日差しが強いのですから上着は羽織りなさい」


 次に母上、義姉上が出てこられた。義姉上は兄上が絶賛するほどだが……母上も子を三人産んだのにまだまだ若々しい。言ったら怒られるですまないので言わないが。

 イツキは……何故か、なかなか出てこなかった。
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