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王妃のまかない⑦
第4話『多種多様、ワサビ料理』②
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最後に……オニギリ。
ちょっとだけ淡い茶色と緑が混じった……不思議な色合いのオニギリだったわ。
私の大好物であるタヌキオニギリに比べると……随分と淡い色合いだ。これに、ワサビ……の葉と茎、あとちょっとずつ飲むようになった『ミソシル』の味付けを少し加えているらしい。
イツキに勧められてから……手だといつも以上に汚れるから、とフォークで少しずつ食べることになった。勢いよくではなく、少しずつ……とさらにイツキが言うので、ほんの少し崩してから口に入れてみた。
「~~~~!!?」
辛い。
でも、あとがほんのり甘くて、少し塩っぱくて。
辛味はまた鼻から突き抜けていくが、この感覚が三日前にイツキが言ったように、癖になってしまった。
ひと口……またひと口、と口に入れていくのが美味しいし、楽しい!!
あの衝撃的な記憶が……こんな美味しくて楽しいものに変わるだなんて!!
「……美味しかったわ」
お茶の時間だと言うのに、軽食以上に食べてしまった。
けど、イツキはいつものようににこにこしているだけだったわ。
「お口に合ったようで何よりです」
「ふふ。私の苦い思い出を楽しいものにしてくれてありがとう」
「いえいえ、私も好きに作らせてもらえましたし。あと、このワサビは保存作用などにも有効なのです」
「保存?」
「そんなに長くはありませんが、食材と漬け込めば数日保つとかですね? 一番使いやすいのは、生のお魚……特にマグロです」
「……生の魚を」
カルパッチョと違う味になるのは、今日の料理だけでも少しわかった。
となれば、近いのはアボカドのサシミのような……どうしましょう、物凄く食べたくなってしまったわ!!
「ふふ。料理長に聞きますね? マグロなどが手に入れば、陛下方の食卓にもお出し出来るかどうか」
「…………ありがとう」
どうやら、物凄く顔に出ていたようで……ちょっと、だいぶ恥ずかしいけれど、約束はしてもらえた。
それと、ワサビはマヨネーズにも混ぜて焼いた魚に乗せても美味しいとイツキから教わり、その日の食卓にはワルシュ先輩が直々に説明してくれることになった。
「!? 独特な辛味だが……美味い!!」
「だろ?」
陛下もとても美味しそうに口にされていたわ。
リュシアーノには大丈夫かと思ったが……勢いよくは食べずに、丁寧にゆっくりと味わっていた。マナーの練習成果が、最近また上達したと指導係からは聞いているけれど……本当に美しい。
勉強の成績もメキメキ上がっているし……特待生にしてもいいのでは、と思うが。
私は、その提案を言うのを堪えた。
(早く学園に入学させれば……ネルヴィスと過ごす時間が減ってしまう)
せっかく、今はとても良い笑顔でいるのだ。母として、王妃として……娘の将来的な幸せを考えても、今の幸せを壊すようなことはしてはいけないのだ。
それはすべて……今陛下と語らっているワルシュ先輩の養女、イツキと出会ったことで私も変われたのだから。
なので、今ある幸せを精一杯、リュシアーノにも伝えていこうと……食卓を楽しむことにしたわ。
ちょっとだけ淡い茶色と緑が混じった……不思議な色合いのオニギリだったわ。
私の大好物であるタヌキオニギリに比べると……随分と淡い色合いだ。これに、ワサビ……の葉と茎、あとちょっとずつ飲むようになった『ミソシル』の味付けを少し加えているらしい。
イツキに勧められてから……手だといつも以上に汚れるから、とフォークで少しずつ食べることになった。勢いよくではなく、少しずつ……とさらにイツキが言うので、ほんの少し崩してから口に入れてみた。
「~~~~!!?」
辛い。
でも、あとがほんのり甘くて、少し塩っぱくて。
辛味はまた鼻から突き抜けていくが、この感覚が三日前にイツキが言ったように、癖になってしまった。
ひと口……またひと口、と口に入れていくのが美味しいし、楽しい!!
あの衝撃的な記憶が……こんな美味しくて楽しいものに変わるだなんて!!
「……美味しかったわ」
お茶の時間だと言うのに、軽食以上に食べてしまった。
けど、イツキはいつものようににこにこしているだけだったわ。
「お口に合ったようで何よりです」
「ふふ。私の苦い思い出を楽しいものにしてくれてありがとう」
「いえいえ、私も好きに作らせてもらえましたし。あと、このワサビは保存作用などにも有効なのです」
「保存?」
「そんなに長くはありませんが、食材と漬け込めば数日保つとかですね? 一番使いやすいのは、生のお魚……特にマグロです」
「……生の魚を」
カルパッチョと違う味になるのは、今日の料理だけでも少しわかった。
となれば、近いのはアボカドのサシミのような……どうしましょう、物凄く食べたくなってしまったわ!!
「ふふ。料理長に聞きますね? マグロなどが手に入れば、陛下方の食卓にもお出し出来るかどうか」
「…………ありがとう」
どうやら、物凄く顔に出ていたようで……ちょっと、だいぶ恥ずかしいけれど、約束はしてもらえた。
それと、ワサビはマヨネーズにも混ぜて焼いた魚に乗せても美味しいとイツキから教わり、その日の食卓にはワルシュ先輩が直々に説明してくれることになった。
「!? 独特な辛味だが……美味い!!」
「だろ?」
陛下もとても美味しそうに口にされていたわ。
リュシアーノには大丈夫かと思ったが……勢いよくは食べずに、丁寧にゆっくりと味わっていた。マナーの練習成果が、最近また上達したと指導係からは聞いているけれど……本当に美しい。
勉強の成績もメキメキ上がっているし……特待生にしてもいいのでは、と思うが。
私は、その提案を言うのを堪えた。
(早く学園に入学させれば……ネルヴィスと過ごす時間が減ってしまう)
せっかく、今はとても良い笑顔でいるのだ。母として、王妃として……娘の将来的な幸せを考えても、今の幸せを壊すようなことはしてはいけないのだ。
それはすべて……今陛下と語らっているワルシュ先輩の養女、イツキと出会ったことで私も変われたのだから。
なので、今ある幸せを精一杯、リュシアーノにも伝えていこうと……食卓を楽しむことにしたわ。
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