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兄のまかない②
第2話 貝にショーユ
しおりを挟む「よいっしょっと!」
餌は磯の岩石などの裏から使ったが……思っていた以上に食いつきが良く、適当に作った水場に大量に入れることが出来た。
それは、俺だけではなく父上やアイシスも同じだったようだ。
「んむぅ!? 白い貝ばかり!!」
俺から少し離れたところにいたアイシスから不満そうな声が聞こえてきた。俺や父上と違い、魚がうまく釣れないのだろうか。
適当なところで、俺が様子見をしに行くと……たしかに、見事に妹の水場には白い大きな貝ばかり。なんという種類だったかはすぐに思い出せなかった。
「……おや? これは『ホタテ』だね?」
父上も様子見をしに来たのか、いつのまにか俺の横に立っていた。
「ホタテ……ですか?」
「うん。魔物の一種で、アサリに比べると酷く温厚な貝類だよ。餌につられて出てきたのかもしれない」
「父上ー? これは食べられるのですか??」
「うーん。調理方法は知らないが、食べられるとは聞いたことがあるよ?」
「……貝か」
なんだろう……。
俺は料理についてはほとんど皆無なくらいだが……これをそのまま焼くだけではもったいない気がしてきたのだ。ただの勘かもしれないが、もっと手を加えれば……とも思うのだ。
「兄上? どうされました??」
アイシスもひとまず釣りをやめたのか、新たにホタテを抱えながらこちらにやってきた。
「……うん。単純に焼くだけではもったいないな……と」
「それだけでも美味しいと思うけどねぇ?」
「でしたら、父上に兄上! 私が常備している『ショーユ』を使うのは??」
「「貝にショーユ??」」
アボカドの時は、たしかに美味かったが……焼いても使えるのか?
イツキさんがジェイシリアを中心に登録させたレシピは……我々もまだあまり把握出来ていない。冬場に知ったのは、トンジルやドンブリと言う料理だったが……イツキさんの修正がなければ、ヨルダン達も苦戦していたようだ。
だが、ショーユはイツキさんがよく取り入れる調味料。
今彼女がここに居れば確かめられただろうが……自分達で試してみる価値もあるだろう。
ホタテをしめてから、小型のナイフでまず身を少し貝殻から切り離すのだが……。
普段から料理などをしない俺と父上もだが、多少手慣れているはずのアイシスも苦戦していた。
「「「んんんんん……!!」」」
死んでいるが、貝の魔物は貝殻を自然と閉じてしまう習性があるらしく。
三人で怪我をしないように……慎重にナイフで身を剥がすことが、少しずつ出来るようになってきた。
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