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冒険者のまかない⑥
第3話『飲兵衛に酒蒸し』①
しおりを挟む「お邪魔しますぅ!! イツキはんおりますか~!!」
一応先輩もおるからやろうとちょい敬語で扉を開ければ……たしかに先輩が居った。めちゃくちゃ不機嫌な顔で!?
「……なんだ、レクサスの坊」
理由はわからんが、ただでさえ悪人面が余計に悪魔クラスの魔族に見えたわ。自分が冒険者時代から見慣れている顔でなきゃ、大抵の連中はちびりそうなくらい。
「ど、どどど、どないしたんです、先輩??」
自分も久しぶりに見るからビビったが、とりあえず理由を聞いてみることにしたわ。
「ふふ。ちょっとメニュー決めが行き詰まっているようで……さっきからこの調子なんですよ?」
先輩との付き合いはまだ一年ちょっとやのに、さすがは先輩の養女だからか肝が据わってるイツキはんはにこにこと微笑んでいた。
先輩のこの顔の前で笑顔でいられる女だなんて、サーシャ先輩以外やとイツキはんだけなんやろうなあ?
「メニュー決め??」
「春じゃないですか? 色々食材が増えてくるのはもちろんですから、私の意見も取り入れて食堂のメニューを一新したいと料理長は仰るんです」
「……ほーん?」
こりゃ、ええ時に俺来たんちゃう??
なので、すぐに亜空間収納からアサリを一体取り出したわ。
イツキはんは見たことがないからか、珍しく目を丸くしたけどな?
「おっきな貝ですね……?」
「アサリや。討伐遠征でたくさん採ったんやで。なんか使ってもらえへんか聞きにきてん」
「これが……アサリ?」
「……………………向こうやと、どんくらいの大きさやったん?」
最後は他の料理人の連中も居ったから小声で聞けば、普通は小石程度。大きくても女の手のひらくらいらしい。ちょぉ、信じられんと思ったわ。
「ですと。たくさんあるのなら……酒蒸しとフライはいかがでしょう?」
「「サカムシ??」」
「米のお酒で蒸すだけです。お酒とアサリに含まれている塩気があるので、ほかに味付けは必要ないです。砂抜きさえすれば、すぐに出来ますよ?」
「よし、やるか!」
イツキはんの提案で、先輩のやる気が出たのか険しい顔がちょぉマシになった気がする。砂抜きは生活魔法応用で自分と先輩がやって、イツキはんは慣れない大きさのアサリを蒸すのに試行錯誤しとったわ。
「お待たせ致しました!! アサリの酒蒸しです!!」
アサリの貝殻が器に、大ぶりの身から……焼いた時とは違うええ磯の香りと酒の香りがしてきて、鼻をひくひくさせてしまいそうやった。
器にさせた貝殻も活かしているせいか?
とにかく、ワルシュ先輩と一緒にそのサカムシにさせたアサリの身に、フォークを伸ばした。
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