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国王のまかない⑤
第2話 王が下ごしらえ①
しおりを挟む「披露パーティーだけするだぁ??」
俺がワルシュとサーシャを呼んで、イツキの提案の一部を伝えれば……サーシャもだが、ワルシュも不満気な表情になった。
「……これは。国王としてではない。ひとりの友としてだ」
「マーくん、ほんと~??」
「……本当だ」
イツキの提案を受け入れた俺だから、嘘はつかない。
国王としての考えも、彼女のお陰で国内では公表する程度にとどめておくことに決定している。それをふたりに伝えれば、サーシャの方が自分の薄ピンクに髪をいじりながら……俺に詰め寄ってきた。
「……マーくん、なんか他にも考えてそう」
「……特にない」
ふたりのために、手料理を振る舞うことについては……イツキから出来るだけふたりには言うなと告げられたのだ。このふたりに隠し事をしてもバレやすいが、出来るだけ違うと言う反応をしてみせた。
そして、パーティーの日取りも決まれば……俺はイツキに料理を習う段階も決まってきた。近侍達が使う簡易的な調理場に彼女を呼び、材料も出来るだけ俺経由で近侍らに道具も含めて集めさせた。
「料理長達が、きっとお好きなものを仕込んでいきます!!」
「練習か??」
「それも兼ねていますが……陛下、熟成の意味はお分かりでしょうか??」
「……酒を寝かす必要がある時に使う言葉か??」
「はい。今回は寝かすことで、より一層美味しくなる食材をまず作っていきます!!」
「この材料でか??」
リストを渡された時はよくわからなかったが……。
タラのメスの卵(大量)
赤い香辛料(東方大陸だと唐辛子)
米の酒
コンブ
塩
ショーユ
砂糖
カツオブシ
材料を見ても、何を作るのかさっぱりだった。
近侍らにも一応見せたが……彼らにも何がなんだか、と言われてしまった。だが、これで確実にワルシュらの喜ぶものが出来上がるのであれば、やるしか無い。
「まず、このタラの卵に分量外の塩をたくさんまぶして……凍らせます」
「わざわざ??」
「毒は無いのですが、色々処理しないと体に悪影響を及ぼす食材なんです」
「……大丈夫なんだろうな??」
「凍らせれば、その部分が消失するのです」
「ふむ」
王族には滅多に食卓に並ぶことがないし、市井でも食べられているかどうか。
しかし、イツキはとても顔を輝かせているのだから……彼女自身も好物なのだろう。
とりあえず、よく手を洗ってから……シャツの袖をまくって、ブヨブヨする卵に塩をまぶしていく。
本来なら、これを一晩以上冷凍庫で凍らせるらしいが、時短も兼ねて生活魔法の『凍結』でイツキが施してくれた。
「次は調味料です」
塩で味付けしたのでは? と俺は思ったが……用意した香辛料などを混ぜたものは、食べられるのかと思うくらい、赤黒く見えた!!?
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