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国王のまかない⑤
第1話 国王か友人としてか
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とうとう、この時が来たと言ってもいい。
(……ワルシュとサーシャが)
悪友達が、とうとう結婚すると決まったのだ。ワルシュ本人から、先日婚礼の申し出を……帰ってきたばかりのサーシャにしたと言ってきた。
なら、と俺はすぐに承認の許可をし、式や披露宴などはどうするか……と提案したのだが。
『畏まったのはごめんだ。元SS級冒険者だからって、仰々しいのはやめてくれ』
ワルシュ本人がそう言うので……国を挙げての挙式などはしないことになりそうだ。
たしかに、今はイージアス城の宮廷料理長ではあるが……根本的には俺の悪友に変わりない。サーシャとて、A級冒険者だがそれは同じだ。一緒に来た時、『派手もいいけど、結婚の時はいいや~』と言う始末。
だが、本人達はそう言っていてもふたりの知名度を思うと、国は良しとしないだろう。
そこで、だ!
「……料理長達の結婚式ですか??」
ふたりの養女になっている、イツキに意見を聞くしかない!!
ワルシュにはヘルミーナの話し相手にと、嘘の知らせをして俺はイツキとふたりで話すことにしたのだ。
「……ああ。我が悪友達でもあるが、国にとっては英雄級と高ランク冒険者だ。本人達が良くても、質素な式をしては国内外が良しとしないだろう」
「……料理長もですが、サ……お養母さんもですか? ちょっと意外です」
「サーシャは少し派手意識は強いが、物事についてはあまり頓着しないんでな??」
言い換えたあたり、サーシャには気に入られたのだろう。イツキの控えめな性格もだが、料理などに魅入られたのならばあいつが義理でも母親面したい気持ちが容易に想像出来る。
「……けど、おふたりがそれで良いと言うのなら……叶えてもいいのでは??」
ふたりとは血の繋がりはないと言うのに、根本的なところは似ていると言うことか。それか育ちの問題か?
一年近く経つが、未だにワルシュからどう言う経緯でこの女性を養女にしたのか聞けないでいる。
「……イツキもそう思うか??」
「私はお養母さんのように、派手な催しが苦手なだけです」
「だが、お前の誕生日パーティーは喜んでくれたではないか??」
「皆さんのご厚意を無駄にするようなことはしないだけです。けど……そうですね。陛下は、料理長達にそうしてあげたいのですか??」
「……ああ。砕けた言葉をすれば、その通りだ」
なんだかんだ、悪友と言えど幼馴染みのような付き合いのある男だ。その伴侶となる女性も悪友のひとりであるならば……正直言うと、国王と言うよりも個人的に祝いたかったのだ。
俺の言葉に、イツキは柔らかく微笑んでくれた。
「ですと。私の時のように内輪でパーティーでもしませんか??」
「……それが妥当か??」
「発表などは別ですが、お祝いだけならば親しい人達の方が……料理長もお養母さんも喜ぶと思います」
「……そうか」
その提案があると、俺はどっと肩の力が抜けた気がした。
国王として、ワルシュ達の婚礼をさせるよりも……ずっと安心出来たのだ。やはり、この女性に相談して良かったと思えた。
「お料理は、私や副料理長で考えようと思うのですが……」
途中で言葉を止めたイツキは、じっと俺を見つめてきたのだ。
「? どうした??」
「陛下。せっかくですから、少しだけお料理してみませんか??」
「……俺が??」
「こう言う機会を逃すと、なかなか出来ませんし」
「……ふむ」
そう言えば、リュシアーノもヘルミーナも彼女と時々ではあるが、一緒に料理をしているらしい。
たしかに、国王と言うよりは悪友の友人としてなら……いいかもしれないと、俺はイツキに頷くことにした。
(……ワルシュとサーシャが)
悪友達が、とうとう結婚すると決まったのだ。ワルシュ本人から、先日婚礼の申し出を……帰ってきたばかりのサーシャにしたと言ってきた。
なら、と俺はすぐに承認の許可をし、式や披露宴などはどうするか……と提案したのだが。
『畏まったのはごめんだ。元SS級冒険者だからって、仰々しいのはやめてくれ』
ワルシュ本人がそう言うので……国を挙げての挙式などはしないことになりそうだ。
たしかに、今はイージアス城の宮廷料理長ではあるが……根本的には俺の悪友に変わりない。サーシャとて、A級冒険者だがそれは同じだ。一緒に来た時、『派手もいいけど、結婚の時はいいや~』と言う始末。
だが、本人達はそう言っていてもふたりの知名度を思うと、国は良しとしないだろう。
そこで、だ!
「……料理長達の結婚式ですか??」
ふたりの養女になっている、イツキに意見を聞くしかない!!
ワルシュにはヘルミーナの話し相手にと、嘘の知らせをして俺はイツキとふたりで話すことにしたのだ。
「……ああ。我が悪友達でもあるが、国にとっては英雄級と高ランク冒険者だ。本人達が良くても、質素な式をしては国内外が良しとしないだろう」
「……料理長もですが、サ……お養母さんもですか? ちょっと意外です」
「サーシャは少し派手意識は強いが、物事についてはあまり頓着しないんでな??」
言い換えたあたり、サーシャには気に入られたのだろう。イツキの控えめな性格もだが、料理などに魅入られたのならばあいつが義理でも母親面したい気持ちが容易に想像出来る。
「……けど、おふたりがそれで良いと言うのなら……叶えてもいいのでは??」
ふたりとは血の繋がりはないと言うのに、根本的なところは似ていると言うことか。それか育ちの問題か?
一年近く経つが、未だにワルシュからどう言う経緯でこの女性を養女にしたのか聞けないでいる。
「……イツキもそう思うか??」
「私はお養母さんのように、派手な催しが苦手なだけです」
「だが、お前の誕生日パーティーは喜んでくれたではないか??」
「皆さんのご厚意を無駄にするようなことはしないだけです。けど……そうですね。陛下は、料理長達にそうしてあげたいのですか??」
「……ああ。砕けた言葉をすれば、その通りだ」
なんだかんだ、悪友と言えど幼馴染みのような付き合いのある男だ。その伴侶となる女性も悪友のひとりであるならば……正直言うと、国王と言うよりも個人的に祝いたかったのだ。
俺の言葉に、イツキは柔らかく微笑んでくれた。
「ですと。私の時のように内輪でパーティーでもしませんか??」
「……それが妥当か??」
「発表などは別ですが、お祝いだけならば親しい人達の方が……料理長もお養母さんも喜ぶと思います」
「……そうか」
その提案があると、俺はどっと肩の力が抜けた気がした。
国王として、ワルシュ達の婚礼をさせるよりも……ずっと安心出来たのだ。やはり、この女性に相談して良かったと思えた。
「お料理は、私や副料理長で考えようと思うのですが……」
途中で言葉を止めたイツキは、じっと俺を見つめてきたのだ。
「? どうした??」
「陛下。せっかくですから、少しだけお料理してみませんか??」
「……俺が??」
「こう言う機会を逃すと、なかなか出来ませんし」
「……ふむ」
そう言えば、リュシアーノもヘルミーナも彼女と時々ではあるが、一緒に料理をしているらしい。
たしかに、国王と言うよりは悪友の友人としてなら……いいかもしれないと、俺はイツキに頷くことにした。
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