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隊長のまかない④

第3話『無駄にしないホットチョコレート』②

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 ですが、まずはそのままで……とイツキに言われましたので、僕らはひと口ずつ口にしました。

 ココアと似ているようで、チョコレート独特の味が強い……優しい味わいの飲み物でした。

 まだまだ雪が降るため、心身ともに冷えるこの時期にはもってこいの飲み物ですね??


「うま~!!」

「これは……父上達が知ったら、真似をしたがるな??」

「お口に合って何よりです」

「とても美味しいですよ」


 さて次に、と。

 イツキは香辛料の壺を開けた。中身は、赤い粉末。これが……この飲み物に加わるとどう変わるのか。

 イツキは、飲まなかった方のマグカップの中に……スプーン一杯もその香辛料を入れてしまい、よくかき混ぜました!!?

 そんなにも入れてしまうんですか!!?


「い、イツキ!?」

「だ……大丈夫なん!!?」

「大丈夫ですよ??」


 味見、どうぞ。

 そう言って、彼女はアーネストにそのマグカップを差し出した。

 アーネストはいくら、婚約者が作ったものとは言えためらっていましたが……覚悟を決めたのか、受け取り……ぐっと飲みました。

 絶対辛い……と、僕やレクサスは思っていたのですが。アーネストからは苦悶の表情や言葉が出てきませんでした。


「少し……辛い、が。美味い」

「ほんまなん!? 副隊長!!」

「ああ。お前も飲んでみろ?」


 そのマグカップをレクサスが受け取ると、彼は軽くひと口だけ含んだようですが。


「……ちょぃ、甘いのに辛い? けど、嫌な感じちゃう」

「レクサス、僕にも」


 ふたりがそう言うのでしたら、僕も飲まないわけにはいきません。

 ホットチョコレートは、ほんのり赤く染まっていましたが……口に含むと先程飲んだのとは同じような、ホットチョコレートに加えて……適度な辛味を感じました。

 苦手な方もいるでしょうが……これはこれで美味しいですね??


「あらかじめ、淹れる時に入れてしまうパターンもありますが。これはこれで美味しいですよね??」


 イツキは、終始慈愛の女神のような微笑みを浮かべていました。

 本当に、この人は僕らに美味で手軽に出来るものから凝ったものまで作れる、最高の特級調理人ですよ……。


「せやなあ?? 甘いもんの時には、最初の。辛いもんやと後の方が欲しくなるわ」

「豆類が入っているのは難しいだろうが、チョコレート単体でならいいな??」

「ええ、そうですね?」


 これはおそらく、近衛騎士団もですが他の部署でも欲しくなるはずです。

 愛友祭あいゆうさいに悩まされる男女は多いはずですし、保存が効いてもチョコレートの量は星の数程ありますから。

 ただ僕は、婚約者であるリュシアーノ様からのチョコレートが……無性に欲しくなってきました。彼女は普通の子供ではないので今なら、愛友祭の意味をきちんと理解しているはずです。
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