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王妃のまかない⑤
第4話『もちっと芋まんじゅう』
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オシルコを堪能した翌日あたりだった。
それまで、少し出難い状態だった乳の出が……よくなった気がする。ジェラルドも勢いよく飲んでくれているし。
「美味しい? ジェラルド」
まだ返事もほとんど出来ない赤児ではあるが、たっぷりと飲んだ後は……ぐっすりと眠ってくれている。乳やりが終わった後は私も少し寝るが、またあのオシルコが食べたいなと思ってしまう。
ダンゴもだが、スープの部分も絶品。
東方大陸にはあのように美味しいものが揃っているのか……ヤキソバやオコノミヤキもだけれど……イツキの故郷が気になる。
同じ東方大陸出身と言うか、身内にいるのはたしか……近衛のレクサスも同じだったはず。彼は、リュシア付きのメイドと交際を始めたのだと、リュシアもだがメイド達が騒いでいたわ。
(……イツキが来たことで、色々変わったわ)
大きなことと言えば、王家の慣習のひとつであった『フルコース』の撤廃だったけれど。あれが無くなったことで『アレルギー』と言う病が広がるのを抑えられた。
王家は幸いにもなかったが、臣下達に蔓延しかけていた病は彼女の発見があって……誰も死に至ることなく抑えられたのだ。その事にも、私達の食事事情についても惜しみなく……自分の持つ知識などを披露してくれるのだ。
感謝してもし切れない。
厨房の仕事以外にも、リュシアの遊び相手や……恋人以上に婚約者となったアーネストとの時間を過ごしているが。充実しているようで、少しほっとしている。イツキにはどうも頼ってしまうので、色々無理をさせているのではないかと思うから。
だから、いくらか彼女に何かしてあげたい。陛下からは式典でも直接的な褒賞はお与えなさらなかったそうだが。と言うのも、イツキがドレスを新調してくれたので十分だと言ったからだそうで。
「……うーん。褒美はかえって喜ばないでしょうし……。服についても不自由がないみたいだから」
普段は、結局仕事の邪魔だからとコルセットに近い防具で胸を潰しているし───正装の時は私以上に凄かったけれど───普段着はジェイシリアのエマの店で調達した服で満足しているそうだ。それに宝飾類にも欲がないからと、以前に拒否されてしまった。
であれば、私が彼女を喜ばせることが出来るとは何か?
子供とか赤児が好きだから、リュシアとジェラルドと会わせる……それも時々呼んでは会わせているので特別感がない気がするわ。
「難しいわ……」
こう言う時に相談に乗ってくれる相手が彼女だったから、逆に彼女自身のことを考えると難しい。悩んでいると、メイドがイツキがやって来て差し入れを持って来たと……イツキも料理人用の服のままやって来たわ。
「体調、いかがでしょうか?」
イツキは黄色いパンのような何かを持ってきていた。湯気が見えて、温かそうだとすぐにわかったわ。
「ありがとう、イツキ。即効性がないかもと言っていたけれど……少し調子が良いの」
「それは何よりです。今日はさつまいもを使ったおまんじゅうを持って来ました」
「カンラ?」
「ジャガイモとは違う、熱を加えると甘くなるおいもです。私の故郷でも地域によって呼び名が違うんですが……芋まんじゅうと言います」
「……食べて大丈夫なの?」
「例の症状になり難い材料に調整したので、大丈夫ですよ。とりあえず、おひとつ」
私が何かしなくてはと思っていたのに……本当にこの女性は相手を気遣うのが上手い。
温かなイモマンジュウはモチではないのに、昨日のシラタマダンゴのように食べ応えがあり……思わず二個も食べてしまったわ!?
また、私の好物がひとつ増えていくだけで終わりそうになってしまう……。
それまで、少し出難い状態だった乳の出が……よくなった気がする。ジェラルドも勢いよく飲んでくれているし。
「美味しい? ジェラルド」
まだ返事もほとんど出来ない赤児ではあるが、たっぷりと飲んだ後は……ぐっすりと眠ってくれている。乳やりが終わった後は私も少し寝るが、またあのオシルコが食べたいなと思ってしまう。
ダンゴもだが、スープの部分も絶品。
東方大陸にはあのように美味しいものが揃っているのか……ヤキソバやオコノミヤキもだけれど……イツキの故郷が気になる。
同じ東方大陸出身と言うか、身内にいるのはたしか……近衛のレクサスも同じだったはず。彼は、リュシア付きのメイドと交際を始めたのだと、リュシアもだがメイド達が騒いでいたわ。
(……イツキが来たことで、色々変わったわ)
大きなことと言えば、王家の慣習のひとつであった『フルコース』の撤廃だったけれど。あれが無くなったことで『アレルギー』と言う病が広がるのを抑えられた。
王家は幸いにもなかったが、臣下達に蔓延しかけていた病は彼女の発見があって……誰も死に至ることなく抑えられたのだ。その事にも、私達の食事事情についても惜しみなく……自分の持つ知識などを披露してくれるのだ。
感謝してもし切れない。
厨房の仕事以外にも、リュシアの遊び相手や……恋人以上に婚約者となったアーネストとの時間を過ごしているが。充実しているようで、少しほっとしている。イツキにはどうも頼ってしまうので、色々無理をさせているのではないかと思うから。
だから、いくらか彼女に何かしてあげたい。陛下からは式典でも直接的な褒賞はお与えなさらなかったそうだが。と言うのも、イツキがドレスを新調してくれたので十分だと言ったからだそうで。
「……うーん。褒美はかえって喜ばないでしょうし……。服についても不自由がないみたいだから」
普段は、結局仕事の邪魔だからとコルセットに近い防具で胸を潰しているし───正装の時は私以上に凄かったけれど───普段着はジェイシリアのエマの店で調達した服で満足しているそうだ。それに宝飾類にも欲がないからと、以前に拒否されてしまった。
であれば、私が彼女を喜ばせることが出来るとは何か?
子供とか赤児が好きだから、リュシアとジェラルドと会わせる……それも時々呼んでは会わせているので特別感がない気がするわ。
「難しいわ……」
こう言う時に相談に乗ってくれる相手が彼女だったから、逆に彼女自身のことを考えると難しい。悩んでいると、メイドがイツキがやって来て差し入れを持って来たと……イツキも料理人用の服のままやって来たわ。
「体調、いかがでしょうか?」
イツキは黄色いパンのような何かを持ってきていた。湯気が見えて、温かそうだとすぐにわかったわ。
「ありがとう、イツキ。即効性がないかもと言っていたけれど……少し調子が良いの」
「それは何よりです。今日はさつまいもを使ったおまんじゅうを持って来ました」
「カンラ?」
「ジャガイモとは違う、熱を加えると甘くなるおいもです。私の故郷でも地域によって呼び名が違うんですが……芋まんじゅうと言います」
「……食べて大丈夫なの?」
「例の症状になり難い材料に調整したので、大丈夫ですよ。とりあえず、おひとつ」
私が何かしなくてはと思っていたのに……本当にこの女性は相手を気遣うのが上手い。
温かなイモマンジュウはモチではないのに、昨日のシラタマダンゴのように食べ応えがあり……思わず二個も食べてしまったわ!?
また、私の好物がひとつ増えていくだけで終わりそうになってしまう……。
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