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騎士のまかない⑧

第1話 紹介の話

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 いつものようにイツキのまかないを試食に行った際に……俺は、ある重要な事を告げねばならなかった。


「…………紹介、ですか?」


 俺が食べ終えてから話を始めると、イツキは瞳を丸くした。


「…………ああ。…………俺の実家にだが」

「!? アーネストさんのご両親にですか?」

「あと、兄夫婦や妹にもだ」

「え、ええと?」


 知らせを受けたのは、今朝だ。

 独身寮から出る前に通達が届き……父上の字で、イツキを公爵家に連れてきなさいとあった。皆も待っていると。式典の時に父上も控えていたはずだから何が起きたかはすべて知っているだろう。


(…………だが!)


 女気のなかった次男の俺に。やっとのことで婚約者候補が出来たんだなとはしゃぎまくっていたんだ、あの親父は!?

 兄上達や妹も同席するとあったが、イツキがもみくちゃにされることは間違いなし。絶対、義姉上もだが妹の魔の手を防がねば。……母上はおそらく涙ぐむだろう。


「先日の式典には俺の父上もいただろうからな? その上で、是非君を紹介してほしいと」

「ご……ご迷惑でなければ」

「そんな事はないさ」


 イツキ程の魅力ある女性を、この先娶ることが出来れば俺だって嬉しい。貴族の淑女でなくとも、わざわざ式典を開いてまで陛下が認めた特級料理人。加えて、アレルギーの件で国の恩人になったのだ。異世界からの渡航者である事は伏せるが、ただの女性ではない。


「わかりました。日取りとかは?」

「出来れば、二日後。料理長には先に伝えたが、問題無しと言ってくださった」

「ふふ。そうですか……何かお土産を考えなくては」

「? わざわざか?」

「そりゃぁ、アーネストさんのご家族の方々ですし。逆にさせてください。他に取り柄もないですから」


 そうだった。こう言う女性だった。

 今日のレクサスとサフィア殿のデートへの弁当も惜しみなく腕を振るうくらいの女性だ。俺の家族へ手土産のひとつくらい考えてもおかしくはない。


「そうか。ありがとう」

「お菓子……チョコは皆さんお好きですか?」

「ああ。全員好きだな」

「なら……生チョコよりも、ガトーショコラ……パウンドケーキも捨てがたい」


 とこのように、楽しげに考え込む様子も可愛いらしく見えるのだから、俺はもう重症だろう。

 結局、イツキは多めのチョコレートを使うパウンドケーキに決め、明日早速取り掛かると言った。

 俺はと言うと、今日のまかないに出された……白くはなく、茶色の『カレーライス』と言うものを堪能出来てとても満足していた。

 ドリアの時とは違い、さらに香辛料がふんだんに使われた逸品だったが……三杯もおかわりしたのは食べ過ぎだと少し後悔した。
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