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隊長のまかない③

第2話『アイスパフェを作ろう』①

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 中央厨房に着くと、中にいたのは珍しくイツキだけでした。


「あ、ネルヴィスさん!」


 イツキはアーネストとある意味婚約者となった今も、この厨房に詰めている。服装も、女性と公表したのに胸を潰す防具を身につけていて……ぱっと見女性には見えないです。

 仕事には邪魔だと理解していると言っていましたが……たしかに、男が多い調理場には目の毒ですからね? 知っていて良いのは、アーネストくらいが良いでしょう。


「今お忙しいでしょうか?」

「いえ。ひと息吐こうと思っていました」

「でしたら、少しお願いが」

「お願い……ですか?」


 ぱちくりと目を丸くされるのは、やはり女性らしいですね? こう言うところは、アーネストには堪らないでしょう。


「以前、何度か。殿下とご一緒に差し入れをしてくださいましたね?」

「ええ」

「僕も、リュシアーノ様に何かして差し上げたいと思ったんです」

「! いいですね! 何にしましょう??」


 僕が調理する事を厭わず、ありのままに受け入れてくれる人間はイツキくらいでしょう。そもそも、この女性はこの世界の人間ですらありませんからね?


「と言っても、僕の腕前はあなたも知っている範囲ですが」

「うーん……そうですね? アイスクリームと言うのはどうでしょう??」

「……アイスクリーム??」


 また異世界のお菓子か何かでしょうか??

 僕が首を捻ると、イツキはニッコリと微笑んでくださいました。


「冷たくて甘い、クリームの一種です。ケーキとかとは違い凍らせたクリームと思ってください」

「凍らせたクリーム?」


 それが美味しいのでしょうか?

 リュシアーノ様も、実は前世がイツキと同じ世界の出身でいらっしゃいますし……ご存知でしょうが。彼女の好むお菓子になるのでしょうか??


「時間がかかるお菓子ですので、早速作りましょう?」

「時間がかかる??」

「凍らせるのに時間が必要なんです。私は氷系の魔法を扱えないので」

「……僕がやりましょうか?」

「お願いします! ですと、アイスパフェとか豪華に出来るはずです!!」


 とりあえず、イツキが協力的なのは嬉しい事です。

 僕は、ひとまず上着を脱いで適当に置き、彼女に教えを請う事になりました。


「ご指導お願いしますね?」

「包丁とかはほとんど使わないので、とにかく混ぜていく工程ばかりですが」

「ほう??」


 リュシアーノ様から告白の時にいただいたケーキ……あれと似ているのでしょうか?? あれも大変美味でしたが。


「まずはたくさん卵を白身と黄身に分けていきます」


 僕はこの時程思いませんでした。

 お茶やコーヒーとは違い、料理はなんて繊細なんだと!!

 卵を割って、白身と黄身を分けるだけでもひと苦労だったんです!! 何度も殻をボウルに入れたり、黄身を割ったりと……これは先が長いと思いました……。
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