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騎士のまかない⑦
第3話 エスコート③
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陛下、王妃殿下。そして、王女殿下に近衛騎士団の隊長。
隊長は側仕えの意味としても、王女殿下の婚約者としても、玉座に近い場所に控えていらっしゃる。
王女殿下の警護もだろうが、このような場で隊長ともども暗殺してしまえば……相手は極刑だけで済まない。そして……俺とイツキがこの場で招集された事も、知らなければ愚かだと言うことも。
俺はイツキが転ばないように、ゆっくりと陛下方の階下まで連れて行く。そして、到着したら俺は彼女に軽く目配せしながら最敬礼を陛下方に見せる。イツキも短期間で練習はしたが、横から見てもなんとか綺麗に出来ていた。
両側がガヤガヤとうるさいが、俺達は気にしてはいけない。
「イツキ=エイペック。よく、ここに来た」
陛下がお言葉を放つと、うるさかった声が瞬時に消えていく。そして、顔を上げるようにとお声をかけていただいたので俺とイツキは深く折っていた腰を上げた。
「皆の者もほとんど知っているだろう。我ら王家の慣習……『フルコース』の残り物を食した臣下の者達の大半が、病にかかり……下手をすれば死に至るところであった。それを見つけくれたのが、エイペック料理長の養女となった彼女だ」
陛下のお言葉に、事実をまだ知らなかったであろう一部の貴族らはコソコソと騒いでいた。仕方がない、イツキの存在もだがフルコースの残り物を食す機会がなかった連中ばかりだからな?
「彼女のお陰で、我らも病を妨げることが出来た。故に、彼女に勲章を与える。既に判明している彼女の職業に添える程度であるが」
イツキが特級料理人である事を知るのは、俺以外だと陛下に料理長……あと、おそらく隊長だろう。それを知られれば、下手に彼女を貶す愚か者はいない。
「イツキ=エイペック。そなたが持つ特級料理人に、アレルギーから我らを救ってくれた勲章を授与する。これからも、中央厨房などでの活躍を期待しているぞ」
「……もったいないお言葉です」
イツキが出来るだけ静かに、返礼を述べると貴族連中の列から馬鹿でかい声が上がった。
「はっはっは! 俺の養女を蔑ろにするなよ?? ちなみに、横にアーネストがいんのは単純なエスコート役じゃねぇ。二人は恋仲だ!!」
陛下が言うはずだったが、いきなり登場してきた料理長が大声で宣言した後。
女の金切り声や倒れる音が聞こえてきて、何が起こったかよくわからなかった。
「……ワルシュが言ったように、この二人も愛を紡いだ間柄だ。引き裂くことをしようならば、この予が許さん!!」
と言うわけで、ほとんど婚約を認められた俺とイツキは陛下のご意向からすぐに玉座の間から退室し。
イツキには離宮で正装を着替えてもらうことになったが……服装はいつもと同じだった。胸も。
「せっかく女性だと公表したのに」
「けど、料理にはちょっと邪魔なので。……あ、アーネストさん。お腹空きます?」
また何か作ってくれるのか、と期待が高まると。
俺の腹は正直者で、盛大に大きく音を出した。二人で中央厨房に行くことにしたが、道中は手を繋いだ。
隊長は側仕えの意味としても、王女殿下の婚約者としても、玉座に近い場所に控えていらっしゃる。
王女殿下の警護もだろうが、このような場で隊長ともども暗殺してしまえば……相手は極刑だけで済まない。そして……俺とイツキがこの場で招集された事も、知らなければ愚かだと言うことも。
俺はイツキが転ばないように、ゆっくりと陛下方の階下まで連れて行く。そして、到着したら俺は彼女に軽く目配せしながら最敬礼を陛下方に見せる。イツキも短期間で練習はしたが、横から見てもなんとか綺麗に出来ていた。
両側がガヤガヤとうるさいが、俺達は気にしてはいけない。
「イツキ=エイペック。よく、ここに来た」
陛下がお言葉を放つと、うるさかった声が瞬時に消えていく。そして、顔を上げるようにとお声をかけていただいたので俺とイツキは深く折っていた腰を上げた。
「皆の者もほとんど知っているだろう。我ら王家の慣習……『フルコース』の残り物を食した臣下の者達の大半が、病にかかり……下手をすれば死に至るところであった。それを見つけくれたのが、エイペック料理長の養女となった彼女だ」
陛下のお言葉に、事実をまだ知らなかったであろう一部の貴族らはコソコソと騒いでいた。仕方がない、イツキの存在もだがフルコースの残り物を食す機会がなかった連中ばかりだからな?
「彼女のお陰で、我らも病を妨げることが出来た。故に、彼女に勲章を与える。既に判明している彼女の職業に添える程度であるが」
イツキが特級料理人である事を知るのは、俺以外だと陛下に料理長……あと、おそらく隊長だろう。それを知られれば、下手に彼女を貶す愚か者はいない。
「イツキ=エイペック。そなたが持つ特級料理人に、アレルギーから我らを救ってくれた勲章を授与する。これからも、中央厨房などでの活躍を期待しているぞ」
「……もったいないお言葉です」
イツキが出来るだけ静かに、返礼を述べると貴族連中の列から馬鹿でかい声が上がった。
「はっはっは! 俺の養女を蔑ろにするなよ?? ちなみに、横にアーネストがいんのは単純なエスコート役じゃねぇ。二人は恋仲だ!!」
陛下が言うはずだったが、いきなり登場してきた料理長が大声で宣言した後。
女の金切り声や倒れる音が聞こえてきて、何が起こったかよくわからなかった。
「……ワルシュが言ったように、この二人も愛を紡いだ間柄だ。引き裂くことをしようならば、この予が許さん!!」
と言うわけで、ほとんど婚約を認められた俺とイツキは陛下のご意向からすぐに玉座の間から退室し。
イツキには離宮で正装を着替えてもらうことになったが……服装はいつもと同じだった。胸も。
「せっかく女性だと公表したのに」
「けど、料理にはちょっと邪魔なので。……あ、アーネストさん。お腹空きます?」
また何か作ってくれるのか、と期待が高まると。
俺の腹は正直者で、盛大に大きく音を出した。二人で中央厨房に行くことにしたが、道中は手を繋いだ。
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