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まかない婦のまかない③
第4話『ぽてっと薄皮饅頭』②
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まずは味見、と少し冷ましてからそれぞれ薄皮饅頭を持つ。
水にくぐらせたことで、プルプルとした感触が気持ちいい。和菓子屋さんが作るのとは全然違うけど、多分蒸す工程は同じ。
私は日本に居た頃、サイトで見つけたこのレシピを作り出してからは……ずっとこの薄皮饅頭を作っている。
リュシアーノ様はじーっと薄皮饅頭を見ていると、勢いよく、けど可愛らしくパクッとかじりついた。
「!? プルプルしてたのに、溶けたわ!!」
「お気に召しましたか?」
「すっごく美味しい!! 薄皮饅頭とかの皮って、ちょっとパサパサしているのが多いけど……私、これは好きだわ!!」
パク、パク、と食べていく様子が可愛らしい。ネルヴィスさんの心境をイメージしたら、多分他の人には見せたくないとか? かな??
私もひと口食べると、皮の部分がゼリーほどじゃないけどプルプルしていて……餡子と食べればつるんと溶けていく感触が堪らない。
これは、ひとつ。
「リュシアーノ様、お着替えされてから騎士団の執務室に直接行きませんか?」
「!? いいのかしら……」
リュシアーノ様はネルヴィスさんと婚約されたが、臣下の方々が全員賛成というわけでもないと思う。しかし、この人達の愛は絶対不滅と言うのを知ってもらわなくてはいけない。
私も多少なりとも、そのお役に立てるのであれば頑張らなくては!!
「大丈夫だと思いますよ? とりあえず、お着替えしましょう?」
「そうね。ちょっとだけ待ってて」
ぴゅぃっと、可愛い効果音がつく勢いでリュシアーノ様は簡易厨房から出て行かれた。その間に、私は片付けと箱にお饅頭を詰めていく作業。
控え室に居たメイドさんを呼んで、お饅頭をヘルミーナさんにいくつか持っていくのをお願いした。片栗粉が入っているが、お餅は食べすぎちゃいけないだけで摂ってよくないわけではない。
桃餅を召し上がられても、食べ過ぎる手前だったから症状が出たことはないとヘルミーナ様から伺ってはいる。なので、今回も彼女に二個程度のお裾分けだ。
「さて……終わった」
「お待たせ、イツキ」
リュシアーノ様も戻って来られ、さっきの暗い色合いではなく金髪に似合う薄ピンクのドレスを着ていらっしゃった。目が濃い目のピンクだからよく似合う。
「では、行きましょうか?」
「うん!」
箱は私が持って、ふたりで並んで離宮から執務室まで歩いていく。
リュシアーノ様と並んで歩いているからか、進んでいくごとに臣下の皆さんが下がって深いお辞儀をするのだけれど。私は今更だけど、いいのかとも思うが……今はすべき事ではないのでやめておこう。
騎士団の執務室に着くと、私が代表して扉をノックした。
「イツキです。ネルヴィス隊長はいらっしゃいますか?」
声を掛けてしばらくすると、開けてくださったのはアーネストさんだった!!
「君か? 隊長にだと聞こえたが」
私に会えたことで、顔が綻んでくださっている。ちょっとだけ可愛いと思ったが、今は恋人として会いに来たわけではないのでリュシアーノ様を前に出した。
「リュシアーノ様とご一緒に来たんです。ネルヴィスさんへの差し入れをお持ちしました」
「お邪魔するわよ?」
「殿下!? し、失礼しました」
「構わなくてよ? あなたはあなたの職務をしなさい」
「は」
慌ててしまうアーネストさんもちょっと可愛いと思う私も、結構重症だ。
とりあえず、薄皮饅頭の箱を落とさないようにリュシアーノ様と一緒に中に入ると……ネルヴィスさんがこれまでにない神々しい笑顔でリュシアーノ様を見つめていらっしゃいました。
お付き合いする時は別室で見守っていたけど、これは凄い。
ロリコン? でもきちんとリュシアーノ様を好きな証拠だ。
「いらっしゃいませ、殿下」
「ちょっとした差し入れよ、ネル!」
リュシアーノ様も他の騎士さん達がいらっしゃるので、人前でいちゃつかないようだ。やっぱり、中身は大人だからか。
「差し入れですか?」
「イツキと一緒に作ったのよ」
「はい、ネルヴィスさん。こちらです」
薄皮饅頭を披露した時は、一瞬驚かれたが。ネルヴィスさんもだが、アーネストさんも入れた騎士団の人達には大好評で。レクサスさんの分をとって置けるか少し心配になるくらい。
レクサスさんはまだ帰って来ないのか、少し気になったが多分大丈夫だと思う。
水にくぐらせたことで、プルプルとした感触が気持ちいい。和菓子屋さんが作るのとは全然違うけど、多分蒸す工程は同じ。
私は日本に居た頃、サイトで見つけたこのレシピを作り出してからは……ずっとこの薄皮饅頭を作っている。
リュシアーノ様はじーっと薄皮饅頭を見ていると、勢いよく、けど可愛らしくパクッとかじりついた。
「!? プルプルしてたのに、溶けたわ!!」
「お気に召しましたか?」
「すっごく美味しい!! 薄皮饅頭とかの皮って、ちょっとパサパサしているのが多いけど……私、これは好きだわ!!」
パク、パク、と食べていく様子が可愛らしい。ネルヴィスさんの心境をイメージしたら、多分他の人には見せたくないとか? かな??
私もひと口食べると、皮の部分がゼリーほどじゃないけどプルプルしていて……餡子と食べればつるんと溶けていく感触が堪らない。
これは、ひとつ。
「リュシアーノ様、お着替えされてから騎士団の執務室に直接行きませんか?」
「!? いいのかしら……」
リュシアーノ様はネルヴィスさんと婚約されたが、臣下の方々が全員賛成というわけでもないと思う。しかし、この人達の愛は絶対不滅と言うのを知ってもらわなくてはいけない。
私も多少なりとも、そのお役に立てるのであれば頑張らなくては!!
「大丈夫だと思いますよ? とりあえず、お着替えしましょう?」
「そうね。ちょっとだけ待ってて」
ぴゅぃっと、可愛い効果音がつく勢いでリュシアーノ様は簡易厨房から出て行かれた。その間に、私は片付けと箱にお饅頭を詰めていく作業。
控え室に居たメイドさんを呼んで、お饅頭をヘルミーナさんにいくつか持っていくのをお願いした。片栗粉が入っているが、お餅は食べすぎちゃいけないだけで摂ってよくないわけではない。
桃餅を召し上がられても、食べ過ぎる手前だったから症状が出たことはないとヘルミーナ様から伺ってはいる。なので、今回も彼女に二個程度のお裾分けだ。
「さて……終わった」
「お待たせ、イツキ」
リュシアーノ様も戻って来られ、さっきの暗い色合いではなく金髪に似合う薄ピンクのドレスを着ていらっしゃった。目が濃い目のピンクだからよく似合う。
「では、行きましょうか?」
「うん!」
箱は私が持って、ふたりで並んで離宮から執務室まで歩いていく。
リュシアーノ様と並んで歩いているからか、進んでいくごとに臣下の皆さんが下がって深いお辞儀をするのだけれど。私は今更だけど、いいのかとも思うが……今はすべき事ではないのでやめておこう。
騎士団の執務室に着くと、私が代表して扉をノックした。
「イツキです。ネルヴィス隊長はいらっしゃいますか?」
声を掛けてしばらくすると、開けてくださったのはアーネストさんだった!!
「君か? 隊長にだと聞こえたが」
私に会えたことで、顔が綻んでくださっている。ちょっとだけ可愛いと思ったが、今は恋人として会いに来たわけではないのでリュシアーノ様を前に出した。
「リュシアーノ様とご一緒に来たんです。ネルヴィスさんへの差し入れをお持ちしました」
「お邪魔するわよ?」
「殿下!? し、失礼しました」
「構わなくてよ? あなたはあなたの職務をしなさい」
「は」
慌ててしまうアーネストさんもちょっと可愛いと思う私も、結構重症だ。
とりあえず、薄皮饅頭の箱を落とさないようにリュシアーノ様と一緒に中に入ると……ネルヴィスさんがこれまでにない神々しい笑顔でリュシアーノ様を見つめていらっしゃいました。
お付き合いする時は別室で見守っていたけど、これは凄い。
ロリコン? でもきちんとリュシアーノ様を好きな証拠だ。
「いらっしゃいませ、殿下」
「ちょっとした差し入れよ、ネル!」
リュシアーノ様も他の騎士さん達がいらっしゃるので、人前でいちゃつかないようだ。やっぱり、中身は大人だからか。
「差し入れですか?」
「イツキと一緒に作ったのよ」
「はい、ネルヴィスさん。こちらです」
薄皮饅頭を披露した時は、一瞬驚かれたが。ネルヴィスさんもだが、アーネストさんも入れた騎士団の人達には大好評で。レクサスさんの分をとって置けるか少し心配になるくらい。
レクサスさんはまだ帰って来ないのか、少し気になったが多分大丈夫だと思う。
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