74 / 784
王女のまかない⑤
第2話『チョコレートショートケーキ』①
しおりを挟む
話……と言うよりも提案をしたかったのだ。
「───────……ケーキ……ですか?」
私の秘密を打ち明けても、変わらず王女として接してくれるイツキは私に頼みに目を丸くしていた。
「ちょっと……いいえ、だいぶ無茶な頼みだってわかっているわ。けど……作ってあげたいの。ネルに」
クッキーとかでもいいかもしれないが、二年前やもっと昔の時でも、あの人は……私と一緒にケーキを食べてくれた。とても甘くて美味しくて、ネルも笑顔になってくれたのをなんとなく覚えている。
だから、自分で作って渡して……ネルヴィスに返事をきちんとしたい。そして、私が転生者と打ち明けた上での返事も欲しいのだ。
それをイツキに言うと、ぽんと手を叩いた。
「なるほど。リュシアーノ様としての誠意を見せるには、最善の方法かもしれません」
「……教えて、くれるの?」
「私でよければ。本職の方には劣りますが」
「イツキは向こうでも作ってたりしたの??」
「そうですね。家族の誕生日とかにですが」
「お願い」
と言うことで、材料をまずイツキが厨房に行ってから集めて、執事達が運んでくれた。流石にサフィア達には重すぎる材料ばかりだもの。
離宮にある簡易キッチンを、レモン餅以来初めて使うけど。まだ八歳で背丈も低い私には、しっかりした空箱に乗ることでなんとか出来ることにしたわ。
「さて、ケーキと言えば王道にショートケーキですね?」
「ネルはクリームたっぷりのケーキが大好きだもの」
「あとチョコがお好きでしたよね? チョコのショートケーキはいかがでしょうか?」
「イツキ、出来るの?」
「私の母が好きだったもので、毎年せがまれました」
「へー?」
たしかに、女性はチョコに目がない。娘が作ってくれるケーキなら、美味しいと毎回頼むものかも。
今から作るのは、ネルヴィスのためにだけど。
「まずは、ココアでスポンジケーキを作りましょう!」
「……そこはチョコじゃないの??」
「チョコを焼き込む場合もありますが、クリームにもチョコを使うので……今回はやめておきましょう。それともうひとつ」
「?」
疑問に思っていると、イツキが苦笑いをしたわ。
「チョコの匂いでメイドさん達が集まってきてしまうかもしれないですから」
「……やめておくわ」
サフィアは控え室にいるけど、別のメイドとかが集まったら質疑応答の嵐になるはず。それは避けたかった。
とりあえず、手をよく洗ってから作ることにしたわ。
まずは、卵、グラニュー糖に近い砂糖。ボウルに卵を入れて、お砂糖も入れる。これをお湯の入れたボウルに乗せて、泡立て器で混ぜていく。
「これを白っぽくなるまで、湯煎で泡立てていきます」
「……これ、電動泡立て器が欲しくなる作業ね?」
「お手伝いしますから、頑張りましょう?」
「ええ」
とにかく、ひたすら……黄色から程遠い白っぽくなるまで混ぜることが出来た時は、まだ第一段階でもないのに、私は汗だくだくだった。
さらに、クリームになるくらい混ぜてから……イツキがふるいでふるってくれたココアと薄力粉を加えて、木ベラでさっくりと混ぜた。さらに……日本だったらサラダ油だったのをここでは溶かしバターを入れて混ぜていく。
「下から持ち上げる感じで、さっくりと」
「勢いよくかき混ぜちゃダメなのね?」
「そうすると、スポンジの命とも言える膨らみが消えちゃいますから」
「イツキもやっちゃった?」
「最初の頃は……ですけど」
体の大きさは違うけど……なんだか友達とお菓子作りをしている感覚が、なんか楽しいわ。
生地を焼く時は、イツキにオーブンじゃなくて窯に入れるのをお願いしてふたりで次の工程に行くことになった。
「───────……ケーキ……ですか?」
私の秘密を打ち明けても、変わらず王女として接してくれるイツキは私に頼みに目を丸くしていた。
「ちょっと……いいえ、だいぶ無茶な頼みだってわかっているわ。けど……作ってあげたいの。ネルに」
クッキーとかでもいいかもしれないが、二年前やもっと昔の時でも、あの人は……私と一緒にケーキを食べてくれた。とても甘くて美味しくて、ネルも笑顔になってくれたのをなんとなく覚えている。
だから、自分で作って渡して……ネルヴィスに返事をきちんとしたい。そして、私が転生者と打ち明けた上での返事も欲しいのだ。
それをイツキに言うと、ぽんと手を叩いた。
「なるほど。リュシアーノ様としての誠意を見せるには、最善の方法かもしれません」
「……教えて、くれるの?」
「私でよければ。本職の方には劣りますが」
「イツキは向こうでも作ってたりしたの??」
「そうですね。家族の誕生日とかにですが」
「お願い」
と言うことで、材料をまずイツキが厨房に行ってから集めて、執事達が運んでくれた。流石にサフィア達には重すぎる材料ばかりだもの。
離宮にある簡易キッチンを、レモン餅以来初めて使うけど。まだ八歳で背丈も低い私には、しっかりした空箱に乗ることでなんとか出来ることにしたわ。
「さて、ケーキと言えば王道にショートケーキですね?」
「ネルはクリームたっぷりのケーキが大好きだもの」
「あとチョコがお好きでしたよね? チョコのショートケーキはいかがでしょうか?」
「イツキ、出来るの?」
「私の母が好きだったもので、毎年せがまれました」
「へー?」
たしかに、女性はチョコに目がない。娘が作ってくれるケーキなら、美味しいと毎回頼むものかも。
今から作るのは、ネルヴィスのためにだけど。
「まずは、ココアでスポンジケーキを作りましょう!」
「……そこはチョコじゃないの??」
「チョコを焼き込む場合もありますが、クリームにもチョコを使うので……今回はやめておきましょう。それともうひとつ」
「?」
疑問に思っていると、イツキが苦笑いをしたわ。
「チョコの匂いでメイドさん達が集まってきてしまうかもしれないですから」
「……やめておくわ」
サフィアは控え室にいるけど、別のメイドとかが集まったら質疑応答の嵐になるはず。それは避けたかった。
とりあえず、手をよく洗ってから作ることにしたわ。
まずは、卵、グラニュー糖に近い砂糖。ボウルに卵を入れて、お砂糖も入れる。これをお湯の入れたボウルに乗せて、泡立て器で混ぜていく。
「これを白っぽくなるまで、湯煎で泡立てていきます」
「……これ、電動泡立て器が欲しくなる作業ね?」
「お手伝いしますから、頑張りましょう?」
「ええ」
とにかく、ひたすら……黄色から程遠い白っぽくなるまで混ぜることが出来た時は、まだ第一段階でもないのに、私は汗だくだくだった。
さらに、クリームになるくらい混ぜてから……イツキがふるいでふるってくれたココアと薄力粉を加えて、木ベラでさっくりと混ぜた。さらに……日本だったらサラダ油だったのをここでは溶かしバターを入れて混ぜていく。
「下から持ち上げる感じで、さっくりと」
「勢いよくかき混ぜちゃダメなのね?」
「そうすると、スポンジの命とも言える膨らみが消えちゃいますから」
「イツキもやっちゃった?」
「最初の頃は……ですけど」
体の大きさは違うけど……なんだか友達とお菓子作りをしている感覚が、なんか楽しいわ。
生地を焼く時は、イツキにオーブンじゃなくて窯に入れるのをお願いしてふたりで次の工程に行くことになった。
34
お気に入りに追加
5,498
あなたにおすすめの小説
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下
七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」
死の床で陛下はわたくしに謝りました。
「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」
でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。
隠された第四皇女
山田ランチ
ファンタジー
ギルベアト帝国。
帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。
皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。
ヒュー娼館の人々
ウィノラ(娼館で育った第四皇女)
アデリータ(女将、ウィノラの育ての親)
マイノ(アデリータの弟で護衛長)
ディアンヌ、ロラ(娼婦)
デルマ、イリーゼ(高級娼婦)
皇宮の人々
ライナー・フックス(公爵家嫡男)
バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人)
ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝)
ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長)
リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属)
オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟)
エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟)
セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃)
ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡)
幻の皇女(第四皇女、死産?)
アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補)
ロタリオ(ライナーの従者)
ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長)
レナード・ハーン(子爵令息)
リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女)
ローザ(リナの侍女、魔女)
※フェッチ
力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。
ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。