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料理長のまかない②
第1話 悪友からの相談
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悪友でもあるこの国の国王が……とんでもねー話を俺に持ち込んできた。
政務がどうのこうのじゃない。自分の弟分であり、縁戚でもある近衛騎士団隊長のネルヴィスについてだ。
独身寮の俺の部屋に来たかと思えば、
『ネルが~~、ネルがリュシアをぉおおおおお!?』
と最初に言うからなんのこっちゃと思ったが、独身寮に国王が単独で入るのは今更だから……無理に引っ張ってからベッドに放り込んだ。
その間もべそべそと泣いている。既に呑んできたか……だから若干酒臭かったのか。とりあえず、泣き上戸のこいつの話を聞くのに、俺は酒ではなく水を無理矢理リュカルドに飲ませた。
「んで? 嬢ちゃんとネルがどーしたんだ?」
水をしっかり飲んだ後、リュカルドも少し正気に戻ったのかしょんぼりとしていた。
「……信じられんと思うが」
「おう」
「……………………ネルが、リュシアに懸想している」
「ぶぅうううううううう!?」
内容が内容だったため、俺は口に含んでいた酒を思わず吹き出した!?
流石に、その内容は予想だにしていなかったからだ!!
「…………マジだ」
「…………マジかよ」
あの『麗しのネルヴィス』とか呼ばれてる、大公爵家の坊々が!?
俺より少しばかり年下な、あいつがだぞ!?
男の俺から見ても、別嬪と勘違いするくらい綺麗だと思ってる坊主がああ!?
親子程歳が離れているじゃねぇか!? どーして、幼女趣味に走ろうとしてんだ!!
「しかも……意識し出したのは二年前かららしい」
「はぁああああ!?」
たった六歳のガキをどーしたら女に見えんだ!?
「……俺も未だに信じられん。だが……ネルの目は真剣だった」
リュカルドは少し酔いが覚めたのか、大きく息を吐いた。
俺は酒を飲む気がなくなり、ボトルを適当な卓の上に置く。
「あの坊がなあ?」
「言い方は悪いが、ネルがその気になれば……大抵の女は陥落するだろう。だがあいつはそれをせずに……この二年一途にリュシアを想っていたと言うことだ。しかも」
「も?」
「…………リュシア自身にも知られた」
「…………嬢ちゃんは?」
「…………知った時は、受け入れられなかったからか逃げた」
「まあ、賢い嬢ちゃんだからなあ?」
ませた性格ではあるが、馬鹿じゃねぇ。
イツキと関わってきたことで、その性格に素直さに磨きがかかった。俺には多少怯えるが、前よりは話せるようになった。だから、フルコースについてリュカルドに黙っておくようにも頼まれたりした。
とは言っても、八歳程度のガキに恋愛のれの字の分かれと言うのは無理なことだ。
昼間、イツキが嬢ちゃんに呼ばれて昼飯作っていったのは、おそらくそれを相談されたからだろう。嬢ちゃんはイツキに懐いているからなあ?
「…………身分は釣り合う。だが、年齢差を考えるとネルをリュシアの婚約者にしていいか……国王としてもだが父親としても判断出来ん!!」
「ま、そりゃ悩むな? 俺がお前の立場だったとしても同じとこに行き着く」
「……ネルは、リュシアをもし他国に嫁がせたら……生涯独身を貫く可能性がありそうだ」
「あいつならやりそうだなあ?」
「…………どうしよう」
「ほぼ答え出てんのに、俺に聞くか?」
「うぅううううう!!」
悩みを俺に打ち明ける前から答えは決まっていやがるのに……俺に相槌を打って欲しかったのだろう。
だが、国を背負う立場であるこいつが……勝手な判断で城中を混乱に招く事はしたくねぇ。それは俺にでもわかる。
「とりあえず、決まったんなら軽く腹になんか入れれるもん作るわ。待ってろ」
「……ああ」
これから飲みまくる前に、胃袋には負担をかけさせるとリュカルドの明日が二日酔い程度で済まない。
だもんで、イツキに教わってから試作を重ねていた軽食を作ることにした。独身寮の俺の部屋には、厨房程ではないが簡易的な調理場を設置しているんで、大抵の料理は作れる。
政務がどうのこうのじゃない。自分の弟分であり、縁戚でもある近衛騎士団隊長のネルヴィスについてだ。
独身寮の俺の部屋に来たかと思えば、
『ネルが~~、ネルがリュシアをぉおおおおお!?』
と最初に言うからなんのこっちゃと思ったが、独身寮に国王が単独で入るのは今更だから……無理に引っ張ってからベッドに放り込んだ。
その間もべそべそと泣いている。既に呑んできたか……だから若干酒臭かったのか。とりあえず、泣き上戸のこいつの話を聞くのに、俺は酒ではなく水を無理矢理リュカルドに飲ませた。
「んで? 嬢ちゃんとネルがどーしたんだ?」
水をしっかり飲んだ後、リュカルドも少し正気に戻ったのかしょんぼりとしていた。
「……信じられんと思うが」
「おう」
「……………………ネルが、リュシアに懸想している」
「ぶぅうううううううう!?」
内容が内容だったため、俺は口に含んでいた酒を思わず吹き出した!?
流石に、その内容は予想だにしていなかったからだ!!
「…………マジだ」
「…………マジかよ」
あの『麗しのネルヴィス』とか呼ばれてる、大公爵家の坊々が!?
俺より少しばかり年下な、あいつがだぞ!?
男の俺から見ても、別嬪と勘違いするくらい綺麗だと思ってる坊主がああ!?
親子程歳が離れているじゃねぇか!? どーして、幼女趣味に走ろうとしてんだ!!
「しかも……意識し出したのは二年前かららしい」
「はぁああああ!?」
たった六歳のガキをどーしたら女に見えんだ!?
「……俺も未だに信じられん。だが……ネルの目は真剣だった」
リュカルドは少し酔いが覚めたのか、大きく息を吐いた。
俺は酒を飲む気がなくなり、ボトルを適当な卓の上に置く。
「あの坊がなあ?」
「言い方は悪いが、ネルがその気になれば……大抵の女は陥落するだろう。だがあいつはそれをせずに……この二年一途にリュシアを想っていたと言うことだ。しかも」
「も?」
「…………リュシア自身にも知られた」
「…………嬢ちゃんは?」
「…………知った時は、受け入れられなかったからか逃げた」
「まあ、賢い嬢ちゃんだからなあ?」
ませた性格ではあるが、馬鹿じゃねぇ。
イツキと関わってきたことで、その性格に素直さに磨きがかかった。俺には多少怯えるが、前よりは話せるようになった。だから、フルコースについてリュカルドに黙っておくようにも頼まれたりした。
とは言っても、八歳程度のガキに恋愛のれの字の分かれと言うのは無理なことだ。
昼間、イツキが嬢ちゃんに呼ばれて昼飯作っていったのは、おそらくそれを相談されたからだろう。嬢ちゃんはイツキに懐いているからなあ?
「…………身分は釣り合う。だが、年齢差を考えるとネルをリュシアの婚約者にしていいか……国王としてもだが父親としても判断出来ん!!」
「ま、そりゃ悩むな? 俺がお前の立場だったとしても同じとこに行き着く」
「……ネルは、リュシアをもし他国に嫁がせたら……生涯独身を貫く可能性がありそうだ」
「あいつならやりそうだなあ?」
「…………どうしよう」
「ほぼ答え出てんのに、俺に聞くか?」
「うぅううううう!!」
悩みを俺に打ち明ける前から答えは決まっていやがるのに……俺に相槌を打って欲しかったのだろう。
だが、国を背負う立場であるこいつが……勝手な判断で城中を混乱に招く事はしたくねぇ。それは俺にでもわかる。
「とりあえず、決まったんなら軽く腹になんか入れれるもん作るわ。待ってろ」
「……ああ」
これから飲みまくる前に、胃袋には負担をかけさせるとリュカルドの明日が二日酔い程度で済まない。
だもんで、イツキに教わってから試作を重ねていた軽食を作ることにした。独身寮の俺の部屋には、厨房程ではないが簡易的な調理場を設置しているんで、大抵の料理は作れる。
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