57 / 784
国王のまかない③
第1話 嘘だ
しおりを挟む
嘘だろう、と俺はどうしても信じたくなかった。
弟分であり、絶対的な信頼を寄せていた近衛騎士団隊長に俺が任命した……ネルヴィスがまさか。
(まさか……俺の娘に想いを寄せているだなんて思うか!!?)
たまには……とイツキの料理が食べたくて厨房を訪れたのだが、アーネストが先に居て入るのをためらった。そう言えば、ワルシュから報告があった……。二人は恋人同士になったのだんだなと、思い出した。
今、イツキの性別などを公表すると、城内が騒ぎになるどころで済まない。そう、判断したのが国王である俺だ。
俺は鑑定スキルで見抜いたが、アレルギーの件で男だと認知させていたイツキが実は女だと知られれば……リュシアーノ付きのサフィアは違うが、メイド達が面倒なのだ。バクスの一時的な助手となったイツキに……懸想することになったメイドが多い。
いつ、イツキについて公表するか悩んでいた時に、サフィアが知らせてくれたのだ。であれば、いきなりアーネストともし婚約などの発表をしたら……アーネストに矛先が行くだけで済まないはず。なので、イツキについては慎重に事を運ぼうとしたのに。
まあ、現実はイツキらしき女が時折城内に出ると言う噂が出ているので、大変で済まない状態ではあるが。メイド達には納得してもらうしかない。
それよりも、だ!?
二人の話を扉越しに聞いた時、ネルヴィスの心境を知る内容だったため……俺は思わず扉を開け放ってしまった!!
「「陛下!?」」
イツキとアーネストは俺の登場に声を上げ、すぐにそれぞれ最敬礼をしてくれた。それは今問う内容ではない!!
「イツキ、アーネスト!! 今口にしていた内容は本当か!?」
再度聞くと、ふたりは顔を上げ……お互いに頷き合ってから俺を見てきた。
「はい、陛下。お昼頃……私にネルヴィスさんが相談してきたんです」
「……ネル、がか?!」
「はい」
「私もつい先程イツキに聞きました」
嘘ではない。
イツキが嘘をつく人間だと言うのは素性を含めて、ないと思っているのは俺がよく知っている。
だから、ネルヴィスの想いが嘘ではないのは理解出来た。
出来たは……出来たのだが。
「……う、そだ……ろ。ネル……が!?」
「陛下!?」
「陛下!!?」
だが、頭がすぐに受け入れるわけもなく。
意識が遠のき、俺は冷たい床の上に倒れ込んでしまった。
イツキとアーネストが俺の体を揺さぶってきたのはわかるが、意識が薄れて行く俺には大した刺激にはならなかったのだ。
弟分であり、絶対的な信頼を寄せていた近衛騎士団隊長に俺が任命した……ネルヴィスがまさか。
(まさか……俺の娘に想いを寄せているだなんて思うか!!?)
たまには……とイツキの料理が食べたくて厨房を訪れたのだが、アーネストが先に居て入るのをためらった。そう言えば、ワルシュから報告があった……。二人は恋人同士になったのだんだなと、思い出した。
今、イツキの性別などを公表すると、城内が騒ぎになるどころで済まない。そう、判断したのが国王である俺だ。
俺は鑑定スキルで見抜いたが、アレルギーの件で男だと認知させていたイツキが実は女だと知られれば……リュシアーノ付きのサフィアは違うが、メイド達が面倒なのだ。バクスの一時的な助手となったイツキに……懸想することになったメイドが多い。
いつ、イツキについて公表するか悩んでいた時に、サフィアが知らせてくれたのだ。であれば、いきなりアーネストともし婚約などの発表をしたら……アーネストに矛先が行くだけで済まないはず。なので、イツキについては慎重に事を運ぼうとしたのに。
まあ、現実はイツキらしき女が時折城内に出ると言う噂が出ているので、大変で済まない状態ではあるが。メイド達には納得してもらうしかない。
それよりも、だ!?
二人の話を扉越しに聞いた時、ネルヴィスの心境を知る内容だったため……俺は思わず扉を開け放ってしまった!!
「「陛下!?」」
イツキとアーネストは俺の登場に声を上げ、すぐにそれぞれ最敬礼をしてくれた。それは今問う内容ではない!!
「イツキ、アーネスト!! 今口にしていた内容は本当か!?」
再度聞くと、ふたりは顔を上げ……お互いに頷き合ってから俺を見てきた。
「はい、陛下。お昼頃……私にネルヴィスさんが相談してきたんです」
「……ネル、がか?!」
「はい」
「私もつい先程イツキに聞きました」
嘘ではない。
イツキが嘘をつく人間だと言うのは素性を含めて、ないと思っているのは俺がよく知っている。
だから、ネルヴィスの想いが嘘ではないのは理解出来た。
出来たは……出来たのだが。
「……う、そだ……ろ。ネル……が!?」
「陛下!?」
「陛下!!?」
だが、頭がすぐに受け入れるわけもなく。
意識が遠のき、俺は冷たい床の上に倒れ込んでしまった。
イツキとアーネストが俺の体を揺さぶってきたのはわかるが、意識が薄れて行く俺には大した刺激にはならなかったのだ。
35
お気に入りに追加
5,498
あなたにおすすめの小説
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。
復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下
七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」
死の床で陛下はわたくしに謝りました。
「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」
でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。
1000歳の魔女の代わりに嫁に行きます ~王子様、私の運命の人を探してください~
菱沼あゆ
ファンタジー
異世界に迷い込んだ藤堂アキ。
老婆の魔女に、お前、私の代わりに嫁に行けと言われてしまう。
だが、現れた王子が理想的すぎてうさんくさいと感じたアキは王子に頼む。
「王子、私の結婚相手を探してくださいっ。
王子のコネで!」
「俺じゃなくてかっ!」
(小説家になろうにも掲載しています。)
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。