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隊長のまかない②

第2話『びっくり幕の内弁当』②

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 ただ、お弁当の名前が少し特殊でした。


「イツキ、『マクノウチ』と言うのは??」


 これだけ豪勢なお弁当の意味がいったいどんなものでしょうか??


「色々由来はありますが……お芝居の合間に観客が食べるからとか、役者が食べるとか。とりあえず、こんな感じのお弁当がそれなんです」

「……芝居ですか?」


 とは言え、これは大変豪勢ですね?

 多少は冷めているとは言え、絶対美味しいことは間違いありません。アーネストが遭遇するまでは僕も幾度か試食係をしていましたが……最近は護衛や執務で圧倒的にイツキの料理を食べる回数が減りました。

 アーネストには今回だけ悪いですが、独り占めさせていただきます!!

 東方大陸向けの弁当に仕上げていますが、あちらの食器である『お箸』は僕でも扱えません。なので、フォークでいただくことにしましょう。揚げ物をナイフで切るのは、イツキと出会ってから……あまり使いません。大きいのはともかく、これくらいのでしたら数口で食べられますしね?


「どうぞ、お召し上がりください」

「ええ、いただくとしましょう。……ところで、この赤い果物のようなものは??」

「プラムのピクルスです。酸味と塩気が強いですが、口直しにはいいですよ? 揚げ物を食べた後にでも試してください」

「では……」


 他の揚げ物も当然気になりますが、まずはタルタルソースたっぷりの魚の揚げ物。以前はマスでしたが今日はなんでしょうか?

 勢いよく被りつくと、ふんわりした魚の身は白でもピンクでもなく……少しオレンジの色でした。


「タルタルソースのは、シャケです」

「海の魚ですか?」

「切り身を塩焼きにする方法もありますが、ネルヴィスさんのお好みだと揚げ物がいいかと」

「たしかに、これは美味しい!」


 ふんわりしていて、タルタルソースに負けない海の風味も感じる。幼少期とは違い、海に行く機会も格段に減りましたが……機会があれば行きたいですね? アーネスト達と一緒ですと、イツキの水着姿を見たら卒倒しそうですが。


(イツキの胸はある意味凶悪なほど豊かですしね……?)


 他の海水浴の人間に見られたら、声をかけられるだけで済まないでしょう。僕は無闇に海に行こうなどと言う言葉を飲み込みました。

 次に、丸い揚げ物。茶色が目立ちますが……ニンニクの匂いが少し強烈です。今日は騎士団の皆以外特に会う予定はないので香りの強いものもいいでしょう。

 フォークで刺すと、魚程ではないですが柔らかい。おそらく肉ですね? 肉を揚げ物にしてしまうだなんて……。ひと口かじってみると、揚げ物なのに肉汁があふれて口の端からこぼれ落ちそうになりました!?


「それは唐揚げと言います」

「カラアゲ……?」

「小麦粉や片栗粉を……下味をつけた肉にまぶして揚げたものです」

「とても美味しいです」


 ベースはショーユなのはすぐにわかりました。しかしながら自分肉の臭みもなくニンニクとジンジャーの風味が良く合う。小さな揚げ物ですのに、これも手が込んでいるんですね? これはとても気に入りました。

 ただ、ここで舌が少し辛くなってきたので……イツキが言ったピクルスとやらを口に含んでみると……!!?


「あ……大丈夫ですか??」


 イツキが困った顔をするくらい、僕もおそらく変な顔になってしまいました!! それくらい、プラムのピクルスとやらは酸っぱくて塩気が強かったんです!!?
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