38 / 782
王妃のまかない③
第2話『ふわもちな桃餅』①
しおりを挟む
ある程度抱かせてあげた後、私達は部屋の中央にある卓と椅子のところに行く。
せっかくのイツキの差し入れを食べたいからだ。お茶は本来ならメイドが淹れるものだが、私も出来なくはない。王妃とは言え、身の回りを出来ないままではレディではない。そう……実母に教わったからだ。
イツキは少しオロオロしていたが、私はお茶を淹れた後にカップを彼女に差し出した。
「はい、どうぞ?」
「あ……ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらの方よ? 食べていいかしら?」
「は、はい」
男性として接していた時は堂々としていたのに……今は年相応の可愛らしい女性の姿だ。ワルシュ先輩の采配とは言え、今の姿が落ち着かないのだろうか? それはいくらかもったいないけれど。
けど、とりあえず。イツキが差し入れに持ってきてくれたピーチを使った『モチ』を食べてみたい。ナイフとフォークよりは素手で食べた方が美味しいそうだ。
「いただくわ」
素晴らしく手触りの良い『モチ』。失礼な言い方だけど、胸の柔らかさに等しいわ。これはどうやったら出来るのかしら??
米とかで作ったようには思えないけど……手で掴み、口に近づけて小さくかじりついた。レモンモチのよりは柔らかく、けど少し、チーズのように伸びていくのが面白かった。
だけど、ほんのりと甘くて、もきゅもきゅと噛んでいくと甘さが少し強くなっていく。次に、モチより少し白味が強いペーストが出てきた。かじると、それはモチよりも甘く……けど、優しくて食べやすい。
次に出てきた、みずみずしいピーチと一緒にかじったら……もう止まらなかった!!
「……お気に召しましたか?」
イツキの方を見れば、さっきとは違ってコロコロと笑っていたわ。
「とっても美味しいわ!! 中のペーストは何かしら??」
「インゲ豆という白い豆を甘くて煮てペーストにしたんです。それをカットしたピーチをくるんだものです」
「面白いわ! これも東方大陸のデザートなの?」
「え、ええ……まあ」
何故か歯切れは悪かったが、そう思っておくしかないわね?
それよりも、私はここに呼んだ本当の目的を聞くことにした。
「ねえ、イツキ? アーネストと隣を歩いていた女性ってあなたかしら??」
「へ、ヘルミーナ様!!?」
だって、そうでしょう??
アーネストはイツキのまかないでの試食係になっていたと、ネルヴィスから聞いてはいたけれど。男装ではなく、女性本来の姿でわざわざ出歩くのは意味があると思うわ。絶対絶対聞きたいと思っていたの。
「白状なさい、イツキ? アーネストとは……良い仲なのかしら?」
「う…………は…………は、い」
「ふふ。似合いじゃない?」
近衛騎士団の副隊長であり、魔物を討伐する素早さから異名がついた『閃光』。
そんな彼に、女性の噂がほとんどなかったのにイツキといつのまにか良い仲になっただなんて……。
(早く知っていれば、色々贈り物を考えたのに!)
なんで教えてくれなかったのかしら!?
「そ……の、この事はまだ内密に」
「そうね? 陛下のお考えで、まだあなたの性別は明かせないから」
アレルギーについての勲章授与の準備。それを成し遂げられれば、イツキは晴れて女性としてイージアス城で過ごすことが出来る筈だ。
せっかくのイツキの差し入れを食べたいからだ。お茶は本来ならメイドが淹れるものだが、私も出来なくはない。王妃とは言え、身の回りを出来ないままではレディではない。そう……実母に教わったからだ。
イツキは少しオロオロしていたが、私はお茶を淹れた後にカップを彼女に差し出した。
「はい、どうぞ?」
「あ……ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらの方よ? 食べていいかしら?」
「は、はい」
男性として接していた時は堂々としていたのに……今は年相応の可愛らしい女性の姿だ。ワルシュ先輩の采配とは言え、今の姿が落ち着かないのだろうか? それはいくらかもったいないけれど。
けど、とりあえず。イツキが差し入れに持ってきてくれたピーチを使った『モチ』を食べてみたい。ナイフとフォークよりは素手で食べた方が美味しいそうだ。
「いただくわ」
素晴らしく手触りの良い『モチ』。失礼な言い方だけど、胸の柔らかさに等しいわ。これはどうやったら出来るのかしら??
米とかで作ったようには思えないけど……手で掴み、口に近づけて小さくかじりついた。レモンモチのよりは柔らかく、けど少し、チーズのように伸びていくのが面白かった。
だけど、ほんのりと甘くて、もきゅもきゅと噛んでいくと甘さが少し強くなっていく。次に、モチより少し白味が強いペーストが出てきた。かじると、それはモチよりも甘く……けど、優しくて食べやすい。
次に出てきた、みずみずしいピーチと一緒にかじったら……もう止まらなかった!!
「……お気に召しましたか?」
イツキの方を見れば、さっきとは違ってコロコロと笑っていたわ。
「とっても美味しいわ!! 中のペーストは何かしら??」
「インゲ豆という白い豆を甘くて煮てペーストにしたんです。それをカットしたピーチをくるんだものです」
「面白いわ! これも東方大陸のデザートなの?」
「え、ええ……まあ」
何故か歯切れは悪かったが、そう思っておくしかないわね?
それよりも、私はここに呼んだ本当の目的を聞くことにした。
「ねえ、イツキ? アーネストと隣を歩いていた女性ってあなたかしら??」
「へ、ヘルミーナ様!!?」
だって、そうでしょう??
アーネストはイツキのまかないでの試食係になっていたと、ネルヴィスから聞いてはいたけれど。男装ではなく、女性本来の姿でわざわざ出歩くのは意味があると思うわ。絶対絶対聞きたいと思っていたの。
「白状なさい、イツキ? アーネストとは……良い仲なのかしら?」
「う…………は…………は、い」
「ふふ。似合いじゃない?」
近衛騎士団の副隊長であり、魔物を討伐する素早さから異名がついた『閃光』。
そんな彼に、女性の噂がほとんどなかったのにイツキといつのまにか良い仲になっただなんて……。
(早く知っていれば、色々贈り物を考えたのに!)
なんで教えてくれなかったのかしら!?
「そ……の、この事はまだ内密に」
「そうね? 陛下のお考えで、まだあなたの性別は明かせないから」
アレルギーについての勲章授与の準備。それを成し遂げられれば、イツキは晴れて女性としてイージアス城で過ごすことが出来る筈だ。
45
お気に入りに追加
5,501
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜
櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。
はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。
役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。
ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。
なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。
美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。
追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!
男装の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。
領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。
しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。
だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。
そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。
なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。
人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします
吉野屋
ファンタジー
竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。
魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。
次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。
【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。