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騎士のまかない⑥
第1話 レシピの情報料
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仕方なかったこととは言え、ギルマスにもイツキが『特級料理人』だと言うことがバレてしまった。
だが、ギルマスは比較的落ち着いた雰囲気でイツキに身分証への注意事項を告げた後……先に彼女に作らせた『オヤコドン』のレシピ、並びに『ドンブリ』のレシピを売ってくれないかと打診された。
普段はイージアス城で過ごしているので、イツキに金銭のやり取りをすることはほとんどない。もちろん、養父でありイージアス城の料理長に尋ねれば問題はないだろうが。
せっかく、ジェイシリアに来て生産ギルドに登録したのであれば……恋人である俺が仮に一緒でなくとも、イツキ自身が欲しいモノが買うことなどが出来る。
と言うわけで、今はイツキと応接室で待たされているのだが……イツキが少しそわそわしていた。
自分と言うよりも、異世界ではごく普通の料理のレシピを教えただけで、どのような金額になるのか不安なのだろう。
(……特級料理人の職業を考慮しても、結構な金額になるだろうな?)
俺はレクサスのように冒険者出身ではないが、城下町には時々来るから市井の金銭感覚もわからなくはない。
イツキは今日登録したばかりだが、異世界からの渡航者と言うのを秘密にしていても、ステータスと言うものはつけられていた。であれば、それ相応の代価は得られるだろう。
少しの間、イツキと職員が淹れてくれた紅茶を飲んで待っていたが……戻ってきたギルマスと一緒について行った職員の持っていたものに、イツキもだが俺まで口をあんぐりと開けてしまう!?
「大変お待たせしました。こちらが、イツキさんからいただいたレシピへの情報料です」
「え、あの……??」
「ぎ、ギルマス? お……多過ぎないか??」
銅貨、銀貨、金貨。それぞれの袋が俺ひとりでも持つのが大変そうな具合に膨らんでいた。少しの間精査していたとは言え、これほどの金額になるとは予想外過ぎた。
「いえ、正当な金額ですよ? 実は、エマ殿や魚屋台のキト殿が偶然いらっしゃって……早速レシピが売れたんです。そこから、問い合わせが殺到して……現在の段階での一部をご用意致しました」
「これで……一部、なんですか??」
「どのレシピも、我々には画期的だったんですよ? これでも少ない方です」
「…………えぇ??」
イツキはまだ信じられずに、ぽかんと口を開けるしか出来ないでいた。とりあえず、表の入り口だと今は提案者への問い合わせが凄いからと裏口から出ることになった。
イツキの所持金になった硬貨の袋は、ひとまず俺の亜空間収納に入れることにした。彼女はまだ魔法を会得する途中なので、生活魔法程度の魔法も使えるものが少ない。今扱えるのは、調理に必要な魔法だけだそうだ。
裏口から出ても、表の喧騒が凄く……さっさと離れようとイツキの手を引こうとしたら、通りに出るとエマに遭遇した。
「あんらぁ? やっぱり、貴方達だったのねん??」
ごつい女だが、俺達の行く手を阻むわけではないようだ。イツキを見ると、何故か彼女の頭を軽く撫でたが。
「…………イツキのレシピを買ったと聞いたが?」
「そうよん? キトのおっさんにオスシのレシピを確認しに行ったら、ここにあるかどうかって来たのよ。そしたら、米の……めっちゃ美味しそうなレシピが売り出されたのよん? 絶対イツキちゃんのだって思って、買い込んだわん!!」
「あ、ありがとうございます……」
「イツキちゃんを特定するような事は言ってないわ~? キトのおっさんにも釘刺して置いたし、安心なさいな?」
それはありがたかったので、エマとはそこで別れてから……イツキにまだジェイシリアを散策するかどうかと聞くと、大丈夫だと答えられ。
なので、イージアス城にさっさと戻ることにした。
だが、ギルマスは比較的落ち着いた雰囲気でイツキに身分証への注意事項を告げた後……先に彼女に作らせた『オヤコドン』のレシピ、並びに『ドンブリ』のレシピを売ってくれないかと打診された。
普段はイージアス城で過ごしているので、イツキに金銭のやり取りをすることはほとんどない。もちろん、養父でありイージアス城の料理長に尋ねれば問題はないだろうが。
せっかく、ジェイシリアに来て生産ギルドに登録したのであれば……恋人である俺が仮に一緒でなくとも、イツキ自身が欲しいモノが買うことなどが出来る。
と言うわけで、今はイツキと応接室で待たされているのだが……イツキが少しそわそわしていた。
自分と言うよりも、異世界ではごく普通の料理のレシピを教えただけで、どのような金額になるのか不安なのだろう。
(……特級料理人の職業を考慮しても、結構な金額になるだろうな?)
俺はレクサスのように冒険者出身ではないが、城下町には時々来るから市井の金銭感覚もわからなくはない。
イツキは今日登録したばかりだが、異世界からの渡航者と言うのを秘密にしていても、ステータスと言うものはつけられていた。であれば、それ相応の代価は得られるだろう。
少しの間、イツキと職員が淹れてくれた紅茶を飲んで待っていたが……戻ってきたギルマスと一緒について行った職員の持っていたものに、イツキもだが俺まで口をあんぐりと開けてしまう!?
「大変お待たせしました。こちらが、イツキさんからいただいたレシピへの情報料です」
「え、あの……??」
「ぎ、ギルマス? お……多過ぎないか??」
銅貨、銀貨、金貨。それぞれの袋が俺ひとりでも持つのが大変そうな具合に膨らんでいた。少しの間精査していたとは言え、これほどの金額になるとは予想外過ぎた。
「いえ、正当な金額ですよ? 実は、エマ殿や魚屋台のキト殿が偶然いらっしゃって……早速レシピが売れたんです。そこから、問い合わせが殺到して……現在の段階での一部をご用意致しました」
「これで……一部、なんですか??」
「どのレシピも、我々には画期的だったんですよ? これでも少ない方です」
「…………えぇ??」
イツキはまだ信じられずに、ぽかんと口を開けるしか出来ないでいた。とりあえず、表の入り口だと今は提案者への問い合わせが凄いからと裏口から出ることになった。
イツキの所持金になった硬貨の袋は、ひとまず俺の亜空間収納に入れることにした。彼女はまだ魔法を会得する途中なので、生活魔法程度の魔法も使えるものが少ない。今扱えるのは、調理に必要な魔法だけだそうだ。
裏口から出ても、表の喧騒が凄く……さっさと離れようとイツキの手を引こうとしたら、通りに出るとエマに遭遇した。
「あんらぁ? やっぱり、貴方達だったのねん??」
ごつい女だが、俺達の行く手を阻むわけではないようだ。イツキを見ると、何故か彼女の頭を軽く撫でたが。
「…………イツキのレシピを買ったと聞いたが?」
「そうよん? キトのおっさんにオスシのレシピを確認しに行ったら、ここにあるかどうかって来たのよ。そしたら、米の……めっちゃ美味しそうなレシピが売り出されたのよん? 絶対イツキちゃんのだって思って、買い込んだわん!!」
「あ、ありがとうございます……」
「イツキちゃんを特定するような事は言ってないわ~? キトのおっさんにも釘刺して置いたし、安心なさいな?」
それはありがたかったので、エマとはそこで別れてから……イツキにまだジェイシリアを散策するかどうかと聞くと、大丈夫だと答えられ。
なので、イージアス城にさっさと戻ることにした。
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