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第147話 幸せの先

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 あのあたたかな宴から月日は経ち、今は。


「はーはーうーえー!!」


 小さな影が、私を呼ぶ。

 慕ってくれている呼びかけに、私は目尻をゆるませながら振り返った。


「なぁに? 樹里イツキ


 その子の名を呼ぶと、本人は嬉しそうに私にと駆け寄ってくれた。手には何かを抱えているようだった。


「母上~! できたのー!」


 樹里が手にしていたのは……どう見ても、綿ぼこりだった。薄ネズミ色で、汚いもの……だけど、それを手にしていると言うことは。


「わ! すっご!? 母親に似て召喚魔法使えんのー!?」

「「緑斗リョクト様!」」

「お姉ちゃんびっくりー!」


 相変わらず、元気いっぱいの方だ。手には果物の篭をお持ちなので……お土産を持ってきてくださったのだろう。


「うん! できたの!!」

「……まあ、そうなの?」


 私の子供。

 つまりは、大精霊同士の子供。

 珀瑛ハクエイ様との、奇跡の子供だ。きちんと、私のお腹から生まれた子供である。


「う……ん、す……ごい」

「ほんにのぉ?」

「わ!?」

「皆様!」


 翠雨スイウ様に、凰華オウカ様もいらっしゃってくださった。あっという間に、賑やかになっていく。

 樹里を抱き上げてくださったのは、翠雨様だった。


「……立派」

「ほんと!? スー様!」

「……うん」

「そうじゃ。さすがは、愛し子の子供よの?」

「……俺の子でもあるんやけど?」

「! 父上ー!!」


 ハク様……珀瑛様がやって来てくださった。まぶしいほどの美しさに、今日もまた私は少女のようにときめいてしまう。

 樹里がハク様を呼ぶと、ハク様は指で来い来いと動かし……翠雨様から樹里を浮かせて、ご自分の腕の中に抱かれた。

 金の髪は私譲りだが、顔立ちなどは年を重ねるごとにハク様そっくりだと思ってしまう。


「なんや? それどないしたん?」

「母上のようにー、出来たの!」

「……召喚魔法?」

「そのようです。ハク様」

「ほー! さっすが、ミラと俺の子や!」

「きゃー!」


 嬉しく感じてくださったのか、ハク様は樹里を高い高いしてくださった。人間の親子のよう……けれど、私達は大精霊だ。

 その子供である樹里もまた……同じ大精霊なのである。

 私に与えられた能力を、そのまま受け継ぐとは思わなかったが。


「すごいなー、すごいなー!! んじゃ、ミラだけじゃなくてイツキも出来るんだ!! 毎日食べ放題なんだ!!」

「……羨ましいのぉ?」

「が……まん」

「ふふ。良ければ……今お出ししましょうか?」

「だーめ! 妊婦さんは無茶しちゃ」


 そう。

 緑斗様のおっしゃる通り……私はまた新たな命を、お腹に宿しているのだ。それだけ……ハク様に愛されていること。嬉しい限りだ。


「……ですが。少しだけ」


 まだ樹里だけでは、召喚が不十分。

 さっと、岩のようなガラクタを召喚すれば……やはり、皆様はすぐに簡易体になられた。


『『『いただきまーす!!』』』

「あ、ずる!?」

「ぼーくーもー!」


 はしゃぐように召し上がられていく様子は……本当に嬉しい。

 役に立たないと、虐げられていた期間は……人間だった頃は辛く長く感じたが。

 今は……それ以上に幸せな時間を得た。

 愛する方々と共に居られる。

 だからこそ……あの時を、忘れられるのだ。感じていた辛さも、もうだいぶ薄れていた。


鏡羅ミラもちょい食おうや!』

「……はい」


 ハク様の、もふもふした簡易体の横で……私はお腹の子を考えて、簡易体にならずに一緒にガラクタを食べることに。

 皆で食べることが、とても楽しいし嬉しい。

 この幸せを……永遠に続くように、私はまた願うのだった。
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みんなの感想(5件)

ともこ
2023.03.10 ともこ
ネタバレ含む
櫛田こころ
2023.03.10 櫛田こころ

ありがとうございます……が、番外編はここもなく⊂⌒~⊃。Д。)⊃ピクピク

解除
ともこ
2023.03.02 ともこ
ネタバレ含む
櫛田こころ
2023.03.02 櫛田こころ

しばしお待ちくださいw

解除
とも
2023.02.09 とも
ネタバレ含む
櫛田こころ
2023.02.09 櫛田こころ

あれ?

どこでしょう⁉️

解除

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