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第143話 さようなら
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何が起きたのだろうか。
『膿』が、いきなり地面から湧き出て……私はその中に取り込まれようとしていた。
ハク様が、咄嗟に手を掴んでくださったが……あまりの力強さに引きずり込まれるだけ。
ハク様に、手を離すように告げても。
「嫌や! 絶対離さん!!」
とおっしゃるので……共に引きずり込まれるだけ。
そう思っていた時。
私達の身体が誰かに支えられて……『膿』から出ようとしていた。
「しっかりして!」
「妾らもおるぞ!」
「……たす、ける……!」
緑斗様達だった。
凰華様と緑斗様が私を、翠雨様はハク様を支えていらした。
二人だけでは無理だったのを……皆様のお陰で、何とか『膿』から出ることが出来た。それから、少し離れたところに下ろしていただくと……『膿』はさらに勢いを増して範囲を広げていった。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオ
地の底から、唸り声を上げているようだ。
あれは何か。
考えるまでもない。
大精霊となった今だからこそ……その気配はよく知っていた。
「…………モーディアス王家」
国王だけでない。
王妃や……王太子。
彼らの思念体となったものが……混ざり、『呪い』と化しているのだ。わずか数日でも、他国に攻め入れられて死に追いやられたせいで……魂となっても、聖女を許せない思念となったのなら。
酷く……哀れ。
あれだけ涙も流して、哀れに思ったはずなのに。
実際に、自分を痛めつけてきた者達の末路を知ったら。
『……滑稽』
私は、ウェディングドレスの上に……鏡らを出現させ、天上の陽の光を集めるに集めた。
「「「「……ミラ??」」」」
「ほぅ? あれらを浄化するつもりか?」
玉杜様以外驚かれているが……私はそのお言葉通りのことをするつもりでいた。
せっかくの祝いの席を台無しにしようとした事への怒りではない。
あれらが……ただただ、己の我欲に染まったことへの、酷く滑稽に感じる気持ちしかないのだ。
『……永遠に、失せよ』
ここの光は、ただの陽ではない。
精霊の里と言う特異な場所。
人間のところとは違う……大いなる力の場所だ。
そして……宙である私の属性の一部でもあるのだから。
言霊を唱えた後……私は鏡に集めた光らを、『膿』に向かって解き放った。
避ける暇もないうちに、瞬時に。
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??
陽と大精霊の力が加わったことで、『膿』はすぐに溶けていく。
溶けて……溶けて、一瞬ヒトの姿になったりしたが。
そのまま……その姿も溶けていってしまった。
「……さようなら」
仮にも、育ての家族だったが。
彼らは……私を道具にしか扱わなかった。
だから、せめてその言葉を贈ったのだ。
消えた場所には……他と同じ花畑の地面に戻っただけだった。
『膿』が、いきなり地面から湧き出て……私はその中に取り込まれようとしていた。
ハク様が、咄嗟に手を掴んでくださったが……あまりの力強さに引きずり込まれるだけ。
ハク様に、手を離すように告げても。
「嫌や! 絶対離さん!!」
とおっしゃるので……共に引きずり込まれるだけ。
そう思っていた時。
私達の身体が誰かに支えられて……『膿』から出ようとしていた。
「しっかりして!」
「妾らもおるぞ!」
「……たす、ける……!」
緑斗様達だった。
凰華様と緑斗様が私を、翠雨様はハク様を支えていらした。
二人だけでは無理だったのを……皆様のお陰で、何とか『膿』から出ることが出来た。それから、少し離れたところに下ろしていただくと……『膿』はさらに勢いを増して範囲を広げていった。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオ
地の底から、唸り声を上げているようだ。
あれは何か。
考えるまでもない。
大精霊となった今だからこそ……その気配はよく知っていた。
「…………モーディアス王家」
国王だけでない。
王妃や……王太子。
彼らの思念体となったものが……混ざり、『呪い』と化しているのだ。わずか数日でも、他国に攻め入れられて死に追いやられたせいで……魂となっても、聖女を許せない思念となったのなら。
酷く……哀れ。
あれだけ涙も流して、哀れに思ったはずなのに。
実際に、自分を痛めつけてきた者達の末路を知ったら。
『……滑稽』
私は、ウェディングドレスの上に……鏡らを出現させ、天上の陽の光を集めるに集めた。
「「「「……ミラ??」」」」
「ほぅ? あれらを浄化するつもりか?」
玉杜様以外驚かれているが……私はそのお言葉通りのことをするつもりでいた。
せっかくの祝いの席を台無しにしようとした事への怒りではない。
あれらが……ただただ、己の我欲に染まったことへの、酷く滑稽に感じる気持ちしかないのだ。
『……永遠に、失せよ』
ここの光は、ただの陽ではない。
精霊の里と言う特異な場所。
人間のところとは違う……大いなる力の場所だ。
そして……宙である私の属性の一部でもあるのだから。
言霊を唱えた後……私は鏡に集めた光らを、『膿』に向かって解き放った。
避ける暇もないうちに、瞬時に。
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??
陽と大精霊の力が加わったことで、『膿』はすぐに溶けていく。
溶けて……溶けて、一瞬ヒトの姿になったりしたが。
そのまま……その姿も溶けていってしまった。
「……さようなら」
仮にも、育ての家族だったが。
彼らは……私を道具にしか扱わなかった。
だから、せめてその言葉を贈ったのだ。
消えた場所には……他と同じ花畑の地面に戻っただけだった。
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