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第72話 一旦お開き
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自分から、何かをしようと……思ったことがなかった。
いいえ……思うように、させられなかった。
あの王族から……人形のようにしか扱われず。
人形が、考えることを許しもしなかった。
その役立たずが……愛玩の魔物のように、躾られても仕方がないのだと。
珀瑛様に出会うまでは……諦めていた。
「とりあえず、今日は一旦帰ろうや?」
私の決意と抱擁の後に……一番に提案してくださったのは、珀瑛様だった。
「え~~? なんでさ~~??」
「宴はもともと違う日程やろ? うちんとこの屋敷精霊達が、ぎょーさんミラのために飯作っとるんよ」
「ん~~、いっそ。それだけあるならそっちとか」
「やめんか!」
「え~~?」
皆様で食事……それも素晴らしいとは思うが。
珀瑛様や、風珀様との……あの温かな食卓はとても素晴らしかった。
お昼ご飯の……二人きりのも、だが。
「ミラもゆっくりしたいじゃろうて? 機会はいくらでもある。よいではないか」
「……うん」
「う~~納得いかない~~」
緑斗様を宥めるのは大変だったが、いくらか落ち着かれてから……今日は解散、と言う形となり。
私は珀瑛様に手を繋がれ、空を飛んでお屋敷に向かうことになった。
「フーも、ポフムもきっとめちゃくちゃ喜ぶでー?」
「……はい」
それもとても嬉しいが……貴方様に喜んでいただけたことが、私にとって最上の喜びだ。
それは口に出来ないけれど……空を飛び、屋敷に行く間。飛ぶコツを教えていただきながら……私達はたくさんの事を語り合ったのだった。
「お、着いたで」
私に合わせてだから……とてもゆっくり飛んだせいもあったが、きちんとお屋敷に戻ることが出来た。
雲を突き抜けると……お屋敷の前に誰かいた。
目が慣れてきたら……かなり離れているのに、風珀様が手を振っているのが見えたのだ。これも……大精霊となったから。
「風珀様?」
「目も慣れてきたか? ほな、はよ行こか」
珀瑛様に手を強く引かれ……少し風が強く頬をかすったが、気にならなかった。
珀瑛様がとても楽しそうでいらっしゃるから……私もそう思えたのだ。
【……お帰りなさい】
そして、風珀様の前に降り立つと……風珀様から、いきなり緑斗様のように抱きしめられたのだった。温かくて、とても良い香りがしたので……人間だった時と同じく、盛大にお腹の音が鳴ってしまう。
「……うう」
【ん。大精霊になっても、ご飯必要かもだね。用意してるから】
「……ありがとうございます」
「先風呂入り? その方がええで」
【そうしよう】
しかし……お風呂でゆっくりすればするほど、お腹は落ち着きを見せなかったのだ。
いいえ……思うように、させられなかった。
あの王族から……人形のようにしか扱われず。
人形が、考えることを許しもしなかった。
その役立たずが……愛玩の魔物のように、躾られても仕方がないのだと。
珀瑛様に出会うまでは……諦めていた。
「とりあえず、今日は一旦帰ろうや?」
私の決意と抱擁の後に……一番に提案してくださったのは、珀瑛様だった。
「え~~? なんでさ~~??」
「宴はもともと違う日程やろ? うちんとこの屋敷精霊達が、ぎょーさんミラのために飯作っとるんよ」
「ん~~、いっそ。それだけあるならそっちとか」
「やめんか!」
「え~~?」
皆様で食事……それも素晴らしいとは思うが。
珀瑛様や、風珀様との……あの温かな食卓はとても素晴らしかった。
お昼ご飯の……二人きりのも、だが。
「ミラもゆっくりしたいじゃろうて? 機会はいくらでもある。よいではないか」
「……うん」
「う~~納得いかない~~」
緑斗様を宥めるのは大変だったが、いくらか落ち着かれてから……今日は解散、と言う形となり。
私は珀瑛様に手を繋がれ、空を飛んでお屋敷に向かうことになった。
「フーも、ポフムもきっとめちゃくちゃ喜ぶでー?」
「……はい」
それもとても嬉しいが……貴方様に喜んでいただけたことが、私にとって最上の喜びだ。
それは口に出来ないけれど……空を飛び、屋敷に行く間。飛ぶコツを教えていただきながら……私達はたくさんの事を語り合ったのだった。
「お、着いたで」
私に合わせてだから……とてもゆっくり飛んだせいもあったが、きちんとお屋敷に戻ることが出来た。
雲を突き抜けると……お屋敷の前に誰かいた。
目が慣れてきたら……かなり離れているのに、風珀様が手を振っているのが見えたのだ。これも……大精霊となったから。
「風珀様?」
「目も慣れてきたか? ほな、はよ行こか」
珀瑛様に手を強く引かれ……少し風が強く頬をかすったが、気にならなかった。
珀瑛様がとても楽しそうでいらっしゃるから……私もそう思えたのだ。
【……お帰りなさい】
そして、風珀様の前に降り立つと……風珀様から、いきなり緑斗様のように抱きしめられたのだった。温かくて、とても良い香りがしたので……人間だった時と同じく、盛大にお腹の音が鳴ってしまう。
「……うう」
【ん。大精霊になっても、ご飯必要かもだね。用意してるから】
「……ありがとうございます」
「先風呂入り? その方がええで」
【そうしよう】
しかし……お風呂でゆっくりすればするほど、お腹は落ち着きを見せなかったのだ。
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