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第37話 精霊の形態は

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 朝食と言うのも……ふわふわで、とても美味しいものばかりで……また、お腹がいっぱいになることが出来た。

 このように、尽くしていただくことなど今までなかったから……また泣きそうになったが、本日は本日でまたすべきことがあるのだ。

 食後のカフェオレをいただき、洗濯……をしていただいた、法衣に着替えた私は……珀瑛ハクエイ様のいらっしゃると言う玄関口に向かうと、そこにいらっしゃったのは違う方だった。


(……け、もの?)


 銀と黒の模様が美しく、大きさは私以上。

 見たこともある尾と耳はあったが、体つきは魔物のように大きいので……精霊かとは思えなかったが、大口を開けると同時に……私の頭に聞き覚えのある声が届いた。


『ミラ。俺や俺! 今日は長距離移動やもんで、この姿にしたんや』

「は……く、えい様……??」

『俺ら精霊……言うか、俺とかの大精霊には顕現出来る姿がいくつかあるんや。人型、簡易体。あとこの精獣型やんな?』


 左右に尾を振る姿に、少しばかり可愛らしい……と思ってしまったが。

 このお姿……の場合、どこに掴まれば良いのかわからなかった。


【……ミラ。あの背にまたがるんだ】


 入り口までご一緒に来てくださった風珀フウハク様に、袖を軽く引っ張られた。


「またぐ? ですか?」

【それか……座る?】

「え? 珀瑛様に??」


 背に座るなど大変畏れ多いと思ったが……珀瑛様はこちらを見ながら、首を上下に振られた。


『せや! 急ぐし、ほらほら!!』

「で、ですが……!」


 お慕い申し上げていらっしゃる方のお背中に座るなど!?

 無理、と首を横に振っていると……御二方からため息を吐かれた。そして、風珀様が……何故か私を軽々と持ち上げて、あっという間に……珀瑛様のお背中に座らせたのだった。


【夕飯はまた豪華にする。いってらっしゃい】

『おん。頼んだで~!!』


 と、珀瑛様が言葉の後に、大きく吠えた!

 体に響くようで、一瞬びっくりしてしまったが……動くのに、慌てて首に両手を巻き付けてしがみつくと……珀瑛様が少し身震いされてから、地面を蹴り、空へ駆け出したのだった。


「は、珀瑛様!!」

『今はあんまりしゃべらん方がええで! 舌噛むから!!』


 なので、おっしゃった通りに……しばらく口を閉ざしている間は、景色などを見ようとしたが。

 昨日の抱えられていた時とは違い、風が強過ぎて目があまり開けられず……どこに向かうのかわからなかった。

 だけど、風がだんだんと落ち着いていくうちに……目を少しだけ開けてみると。


「あ」


 昨日よりもさらに美しく、緑や花が咲いている場所。

 その中で、龍羽リュウハ様がこちらに手を振っていらっしゃるのが見えてきたのだった。


「ヤッホー! ミラ、ハク!」


 龍羽様の前に、珀瑛様が降り立つが、お姿は獣のままだ。


『ミラには、まだ体が整っとらんけど。今日はあちこちの精霊らに、ミラの出すゴミとか食わせようと思うねん』

「うん。それはいいね? 端を任せている大精霊達にも……僕の魔力は届いていてもお腹ぺこぺこだろうし」

「……珀瑛様方以外にも、大精霊様が?」

「うん。精霊界の端……入り口とかを守っている子達がいてね? ミラに糧を与えるのをお願いしたいんだけど」

「……かしこまりました」


 だけどその前に。

 精霊王でいらっしゃる、龍羽様にもう一度召し上がっていただくことで、私の補助をしてくださるようで。

 私はまた召喚を行い、出てきたのは……紫の世界での海のゴミ。『大量の貝殻』だった。


「おいひー! ちょっと塩っぱいけど、病みつきになるー!!」


 可愛らしいお顔に似合わず……バリボリと召し上がられる様子は、やはり人間ではないのだなと私でもわかった。


『ええなあ。……ミラのゴミ』


 珀瑛様も召し上がられたいようだったので……お屋敷に戻ったら、ひとつ出してみようかとこっそり考えておくことにした。
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