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第17話 珀瑛の屋敷②

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 精霊方の前で、なんて所業を……。

 しかも、思いを寄せているかもしれないと自覚した相手……珀瑛ハクエイ様の前で!?

 けど、ご本人は気にされていないのか大声で笑っていらっしゃるだけだった。


「身体は正直やな? ほな、ポフム。ミラ用の食事用意してくれへん?」

「お任せください!!」


 と、ポフム……と呼ばれた精霊はまた扉を勢いよく閉めてから、急いで用意するのかいなくなってしまった。

 お腹がキューッと音を立てている私だが、思わずぽかんとしてしまう。すると、珀瑛様が私の頭を軽く撫でて下さった。


「ま。あんな性格なんや。中入って、ミラの部屋決めよ?」

「お部屋……ですか?」

「ん? 別に屋敷欲しいんか?」

「い! いえ!! ……部屋に、あまりいい思い出がなくて」


 あの王城では、召喚が終われば……牢獄のような場所にすぐに閉じ込められていた。

 食事なども必要最低限。

 日の光もほとんど差し込まない……暗い場所しか知らない。だから、自分のための部屋に……少しばかり、不安を感じてしまったのだ。あれと同じ場所ではないとわかっているとは言え。


「……ほんま、そいつら滅ぼしたろか?」


 ぼそっとつぶやいた声に、ハッと顔を上げたら……珀瑛様は少し怒られているような、真剣な表情でいらっしゃった。


「……え?」

「ミラは俺ら精霊には大恩人やで? 苦しめてきた相手……そいつらに腹立つわ」

「い……いえ、そんな」

「恨んどらんの?」

「恨み……と言いますか」


 悔しさはあったが、恨み……と言うのはよくわからなかった。

 植え付けられた感情かもしれないが、役に立てなかったことへの不安などが強かったのだ。今は違っても。

 正直に伝えると、さらに珀瑛様からはぽんぽんと頭を撫でられた。


「下手に欲あるヒトの子よりもええ子やけど……もっと自信持ってええで? なにせ、今は精霊界の大恩人やからな!」


 とおっしゃって、今度は手を繋がれながら……お屋敷の中へ入ることに。

 中は、あの煌びやか過ぎる王城とは違う……とてもお綺麗な造りとなっていた。


「まあ……!」

「ようこそ、俺の風珀フウハク邸へ」

「お名前……があるのですか?」

「おん。この屋敷も精霊やからな?」

「え?」

【お呼び? 主よ】


 びっくりしていると、天井から声が聞こえてきて……可愛らしい、女性体の姿でいらっしゃる精霊が降りて来られた。

 珀瑛様のような珍しい装束よりも、聖女の法服である私のとどことなく似ていた。


「おん! 今日からここに住むヒトの子や!! さっき循環出来た魔力はこの子のお陰やねん!!」

【……ヒトの子】


 ちらっと見られたが、探るような目でも嫌悪などは感じなかった。


「み……ミラジェーン=アクエリエスと、申します」

【……ご丁寧に。私は、風珀】

「! お屋敷のお名前と同じ」

【私そのものだから】


 とおっしゃると、風珀様はニコッと微笑んでくださった。
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