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第10話 愚かな国王

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 実に……実に、あれは不要であった。


「……くっ……くくく。ふははは!!」


 最初こそは、財を得るためだけに……豪族であったあの子供を聖女に仕立て上げ……我らの予想以上の財を、この王国に召喚し続けた。

 だが、ある日を境に……それが、叶わなくなった。

 得られるだけの財を得て、そろそろ神殿の腐った連中らに放り投げでもしようとしたのだが。

 あの子供は……何故か、財を召喚することが出来ず……ただただ、異界からの『ガラクタ』や『ゴミ』しか出せなかった。

 それが一度や二度ならず、両手で数え切れないくらいになった頃には……俺はもう決めた。

 王として、国を担う者として……息子に宣言は任せて、あの子供を追放することにした。

 性奴隷にさせて、神殿に明け渡すのもよかったが……野垂れ死ぬ方がずっと良い。

 そう思い直して……あの席を設けた。

 常識をほとんど植え付けなかったあの子供のことだ。満足に生活も出来ずに、魔物などに喰われてしまうだろう。


(愉快……実に愉快な!!)


 財を得て、他国にもいくらかは武器製造のために流して……我らは、大国への一歩を進むことが出来るようになったのだ!!

 そろそろ……他国には、何故そのような多くの財を得たのだとか聞かれるところだったが……使い物にならないあの子供は流刑地でくたばるのだ。証拠は残さない。

 あとは、国土を広げるために……弱小国らを侵略すれば勝ちよ……と計画を練ろうとしていたのだが。

 息子である王太子が……とんでもない情報を俺に告げてきた。


「父上!? 他国へ送った財達が……すべて、土くれになったと!!」

「……なん、だと?」


 息子が、その国から送られてきた手紙を俺に渡してきた。中身は、話が違うなどと怒りに満ち溢れた文面ばかり。

 その後からも、ひとつ……またひとつ。財を送った国々からの使者がやってきて……どんどん、俺もだが、王族一同驚きを隠せるどころではなかった!!


「……父上。あの子供を呼び戻しましょう!」


 原因を考えれば、あの子供以外いない。

 しかし……流刑地に送った馬車はもう帰還してきた。もう一度使いを出しても、あの子供が野垂れ死ぬか魔物に食われるのが先か。

 仕方がないので、早駆け出来る騎士に……急いで迎えに行かせたのだが。


「……なん、だ?」


 早駆けを見送った後に……空が、地面が。

 少しずつだが……インクを落とした時のように、黒く染まっていくのが見えた。
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