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第3話 役に立てた聖女①
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何、なに、なに……!?
何が起こっているのか……さっぱり、わからなかった。
とにかく、辺りにはバリ、ボリ、とか。
カリカリカリ……と言った、奇妙な音で静寂とは無縁な音が響き渡っている。
私は……あのもこもこの精霊が、目の前で私の召喚した『異界のゴミ』を貪るように食べているのが……信じられなかった。
『うんま~~!!』
そして、ついに。
半分近く、ゴミを食べ終えた精霊が……口を開いた。と言うより、念話……テレパシー?
頭に直接響いていたので、直接的な会話ではないと……思う。
見渡しても、私以外の人間はいないし、他の存在すらいない。となれば、目の前の精霊が発した以外考えられないはず。
『うんま~~!! めっちゃ、うんま~い!! なんやこの食感!! 最初はかったいのに、口に入れたら蕩けていくで~~!! 飽きない味やし、めちゃくちゃうんま!!』
よくわからない……けど。
言葉の訛りもだが、テレパシーの声音を聞く限り……男性体なのか。あのゴミを非常に気に入ったのか、なくなるまで夢中になって食べ続けていた。
最後の方には、バクバク、ばっくん! と言う具合に食べ終えてしまい……身震いをすると、くるんと私の方に振り返ってきた。
『おおきに、姉ちゃん!』
「!? わ……たし?」
『姉ちゃん以外居らへんやん? 変な反応やなあ?』
二本の足で立ち上がり、やれやれと言った具合に肩を落とした。魔物でも聖獣でもない。
実体化を持つ……精霊そのものなのだろう。こんな風に、気さくに話しかけてくれる存在だとは思わなかったが。
「…………その」
『おん?』
「お聞き……しても、よろしいでしょうか?」
『おう! ええで?』
胸を反るように腰に手を置く仕草を可愛らしく思ったが、ここは気持ちを切り替えようと……私は地面の上でも最敬礼を披露した。
「私は、モーディアス王国の『渡しの聖女』と呼ばれていた者にございます。先ほど、貴方様が口にされたのは……私が召喚した異界の異物。お身体に差し障りないでしょうか?」
『異界の! なるほど。だから、今まで食うたことのない絶品な味わいやったんか!!』
「美味……でござい、ますか?」
『おん! 俺ら精霊は魔力以外にも糧にするもんがぎょーさんある。人間には異物とか言われる『ゴミ』なんか……俺の大好物なんや!!』
「……好物」
精霊の口に合う物?
私は……王族の要望に応えるように、以前は数多の財を召喚したけれど。それが出来なくなった今でも……お役に立てた?
その事実を理解出来ると……我慢が出来ず、先ほどよりも多くの涙を、流してしまった。
『な、なんやなんや!? 姉ちゃん、どないしたん!?』
「い……いえ。その……嬉しく……て」
それから、少しずつ……精霊に自分の経緯を話してしまうと、彼は私の涙をモコモコの手で拭いてくださりながら、こう言われた。
『ゴミしか召喚出来んからって、さっさと追放? 阿呆やなあ……そんな王族』
「…………私も、今ならわかります」
あれら、王族はとんでもない傲慢の塊だったことを。
けど、今は少しでも何かの役に立てたことが嬉しくて仕方がなかったのだ。
自分でも、涙を拭き続けていると……精霊は自分で手を叩いたのか、ぽんと軽い音が聞こえてきた。
『せや。姉ちゃん、なんなら俺らの里に来ぇへん?』
「え?」
『姉ちゃんの力……その召喚魔法が必要なんや! 助けて欲しい奴らがぎょーさんおんねん!!』
「……私、で?」
『おん!』
そして、精霊の導きのままに……精霊が落ちてきた木の後ろに回ると。
何かの入り口らしき、まるで水の波紋のようなものが宙に浮かんでいた。
何が起こっているのか……さっぱり、わからなかった。
とにかく、辺りにはバリ、ボリ、とか。
カリカリカリ……と言った、奇妙な音で静寂とは無縁な音が響き渡っている。
私は……あのもこもこの精霊が、目の前で私の召喚した『異界のゴミ』を貪るように食べているのが……信じられなかった。
『うんま~~!!』
そして、ついに。
半分近く、ゴミを食べ終えた精霊が……口を開いた。と言うより、念話……テレパシー?
頭に直接響いていたので、直接的な会話ではないと……思う。
見渡しても、私以外の人間はいないし、他の存在すらいない。となれば、目の前の精霊が発した以外考えられないはず。
『うんま~~!! めっちゃ、うんま~い!! なんやこの食感!! 最初はかったいのに、口に入れたら蕩けていくで~~!! 飽きない味やし、めちゃくちゃうんま!!』
よくわからない……けど。
言葉の訛りもだが、テレパシーの声音を聞く限り……男性体なのか。あのゴミを非常に気に入ったのか、なくなるまで夢中になって食べ続けていた。
最後の方には、バクバク、ばっくん! と言う具合に食べ終えてしまい……身震いをすると、くるんと私の方に振り返ってきた。
『おおきに、姉ちゃん!』
「!? わ……たし?」
『姉ちゃん以外居らへんやん? 変な反応やなあ?』
二本の足で立ち上がり、やれやれと言った具合に肩を落とした。魔物でも聖獣でもない。
実体化を持つ……精霊そのものなのだろう。こんな風に、気さくに話しかけてくれる存在だとは思わなかったが。
「…………その」
『おん?』
「お聞き……しても、よろしいでしょうか?」
『おう! ええで?』
胸を反るように腰に手を置く仕草を可愛らしく思ったが、ここは気持ちを切り替えようと……私は地面の上でも最敬礼を披露した。
「私は、モーディアス王国の『渡しの聖女』と呼ばれていた者にございます。先ほど、貴方様が口にされたのは……私が召喚した異界の異物。お身体に差し障りないでしょうか?」
『異界の! なるほど。だから、今まで食うたことのない絶品な味わいやったんか!!』
「美味……でござい、ますか?」
『おん! 俺ら精霊は魔力以外にも糧にするもんがぎょーさんある。人間には異物とか言われる『ゴミ』なんか……俺の大好物なんや!!』
「……好物」
精霊の口に合う物?
私は……王族の要望に応えるように、以前は数多の財を召喚したけれど。それが出来なくなった今でも……お役に立てた?
その事実を理解出来ると……我慢が出来ず、先ほどよりも多くの涙を、流してしまった。
『な、なんやなんや!? 姉ちゃん、どないしたん!?』
「い……いえ。その……嬉しく……て」
それから、少しずつ……精霊に自分の経緯を話してしまうと、彼は私の涙をモコモコの手で拭いてくださりながら、こう言われた。
『ゴミしか召喚出来んからって、さっさと追放? 阿呆やなあ……そんな王族』
「…………私も、今ならわかります」
あれら、王族はとんでもない傲慢の塊だったことを。
けど、今は少しでも何かの役に立てたことが嬉しくて仕方がなかったのだ。
自分でも、涙を拭き続けていると……精霊は自分で手を叩いたのか、ぽんと軽い音が聞こえてきた。
『せや。姉ちゃん、なんなら俺らの里に来ぇへん?』
「え?」
『姉ちゃんの力……その召喚魔法が必要なんや! 助けて欲しい奴らがぎょーさんおんねん!!』
「……私、で?」
『おん!』
そして、精霊の導きのままに……精霊が落ちてきた木の後ろに回ると。
何かの入り口らしき、まるで水の波紋のようなものが宙に浮かんでいた。
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