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第584話 打開策を見つける

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「……神様に提案されたんだ」


 カウルとラティスト、あとルカリアちゃんにスイン本人にも伝えた。あのイケメン神様に提案された、スインへの対処法を。

 けど、どれも良くない方法ばかり。特に最後のは、スイン本人の魂が居なくなる方法だ。僕としては絶対実行させたくない。


「……考えれば、そうだな。それらがあいつの出来る判断だ」

「難しいでやんすか?」

「俺とて、万能ではない。レイスに取り込まれたあれがそれだ」

「あれって、なんでなったの?」

「…………俺のドジだ」

「「おい!?」」

「ラティスト様でも、そのような事がおありなのですね?」

「……創始の大精霊でも、個は個だ」

「こ、って?」

「個性、個体の古い言い方だ」

「なるほど」


 それなら、スインだってその『個』がある存在だ。蔑ろにしたくはない。


「ですと。スインちゃんの能力を取り除くの二種類に絞られますのね?」

「そうなるね……」


 お師匠さんで無理だったんだ。一時的なものを作れても継続的には難しい。イケメン神様も自分が万能じゃないと言っていた。だったら、ルカリアちゃんも口にしたその二つの方法どちらか。

 それを……スインに選ばせる?

 どちらも、スインにとっては悲しい結末なのに。


『……いい、よ』


 僕らが悩んでいると、スインが承諾の言葉を告げた。


「スイン?」

『ポーションパン、作れなくてもいい。パン作りは、したい』

「……いいの?」

『主の魔導具でなくなるのが嫌だ。主には、扱ってほしい』

「…………」


 本当なら、一緒にポーションパンを作りたいのだろう。でも、売り物に出来ないくらいの、高性能なものを作ってしまう。それなら、諦めて普通のお手伝いをするまで。

 スインの覚悟がきちんと見えた気がした。

 でも……僕は。


「やだ。せっかくスインが一緒に作れるの、喜んでた感情を失わせたくない!」

「ケント?」

「店長?」

『……主?』

「兄さん、まさか」

「やれるだけやるんだ。僕が、錬金術師としてスインがポーションパンを作りやすいものを、生み出す!!」


 やることは多いけど……しないよりマシ。

 それに僕は、ひとりじゃないんだ!!


『……主。いいの?』


 スインはルカリアちゃんの腕の中で、嬉しいのかお目目をうるうるさせていた。

 僕は頷いて、スインを抱っこしてあげたんだ。


「もちろんだよ。君だって、スバルの一員。家族なんだ」

『……う、れし……い!』

「僕だけじゃないよ。皆にも迷惑かけちゃうけど……頑張っていいかな?」

「当然でやんすよ!」

「ああ、もちろんだ」

「わたくしも、イシュラリアの伝手を駆使して材料調達は出来ますわ!」

「ありがとう!!」


 お師匠さんたちにも魔法蝶を飛ばして、さっそく試作をしようとしたけど。

 なんでか、マーベラスさんがいきなりやってきて土下座されてしまったんだよね!?
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