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第582話 悲しむのを放っておけない

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 スインがまた拗ねてしまった。


『……私、ダメ』


 理由はわかってる。

 自分が関わった場合の、ポーションパンを作っていくと効果が飛び抜けているものが多く出てしまう。

 それは、効果が凄すぎて……スバルでは売りにくい。生産ギルドのオークションでも競売に出したら、荒れるに荒れるかもとロイズさん談。

 なので、スインがパン作りをするのはリトくんの修行を手伝うのに時々程度だ。上機嫌で作るとぽんと効果大のものが付与されちゃうから……本当に売りに出しにくい。

 最初は頷いてくれたけど、徐々にショックが大きくなってここ数日は後片付けをカウルとしているだけだ。パン作りをしようとする気力がなくなっている。

 でも、前の時のように覗きに来ることもあるから、完全に嫌だとは思っていないみたい。


「こうなったら」


 お師匠さんは手を尽くしてくれたんだ。弟子の僕が、自分の魔導具のために役に立つポーションパンを作ってみようじゃないか!!

 とは意気込んでみたものの……。


「…………ダメだな」

「でやんすぅ」

「…………だよね」


 ラティストとカウルに協力してもらったけど、思い通りにいくはずもなく。

 もともと、僕のポーションパンは効能がランダムに付与される。同じものを次も作れば同じものが出来上がるけど……一から調整するのは無理だ。

 基本的に、あのイケメン神様が決めているとラティスト談。

 そこを思い出したら、僕はラティストに頼むことにしたんだ!!

 あのイケメン神様に、もう一度通信する様に!!


「……俺が言いに行くが」

「脅そうとするからダメ」

「……わかった」


 なので、お土産を持っていけないかなあと思ったら、ラティストが大丈夫だと言うので。

 効能を見てもらうついでに、収納魔法に入れておいたスインのポーションパンを持っていくことにしたんだ!!


「こんにちは!」

『お、おお……その声は、ケントか』


 外見はラティストの精神体を借りているから、イケメン神様はやっぱりビクビクしていた……。


「すみません。わかっているかもしれないんですけど、お願いしたいことがあって」

『……スインのことか?』

「はい。あの子の元気を取り戻してあげたいんです」


 自分だけじゃ限界が来てる。他の人にお願いしても、解決に至らない。

 だからここは、この神様にお願いするしかないんだ。僕はお土産代わりの、スインのポーションパンを出して改めて確認してもらうことから始めた。

 イケメン神様も、僕の行動を見て大きくため息を吐いたがパンは受け取ってくれたよ。
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