スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

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第581話 弟子は恩人

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 なんでだ。

 何故だ……何故だ!?

 一生懸命頑張って作り出したのに、完璧なポーションとならなかった。


「くぅ……」


 ロイズからの報告で、今生産ギルドにいるのだが。

 マーベラス殿とただいま撃沈中だ。彼自身も、私のポーションで制御出来ん魔導具を製造したことへの罪悪感がさらに募ったらしい。


「……なんでや」

「……わからんです」


 やはり、なりたてのSランクではその上をランク保持者に敵わないと言うことか。もしくは……所持者がケントだからか? 彼は転生者でも規格外。

 今でこそAだが、実力は私よりもマーベラス殿に近い。SSであっても全然違和感がないからな。


「下手すると、スインを破壊せなあかんか?」

「絶対やめていただきたい。あなた以上にケントが悲しむだけですまないですよ!?」

「……すまん。適当なこと言ったわけやないが、それはそうやな」


 日本人の鏡とも言える真面目で気配り上手で人柄が良い。

 そんな彼が、加わったばかりのスインを失うとわかったら、必要以上にショックを受けるだろう。

 そのようなこと……あってはならない。

 私もケントと出会った期間は短いが……師とはなっても、実質的な立場は逆だ。私はポーションの錬金術師として今までが稚拙だと思えるくらい、日本での知識が乏しかった。

 ケントはただ、専門学校とバイトなどの経験を活かしてパンを作っているだけなのに……今では、私などを凌駕して多くの人々を救い、神の使命を果たそうとしている。

 少し妬けた時期もあったが、レイアとの縁を繋いでくれたのは彼だ。多大なる恩がある。だからこそ、師であるのなら錬金術師としてもっと精進しようとだらけた生活を改善するようになったのだ。

 ポーションの取り引きの方もな。

 色々あった今、ケントの悲しみなど見たくない。あの子にはいつもの笑顔が似合うのだから。


「……とにかく。スインの能力発揮は感情の起伏も関係しているのを、レイザーの魔眼で確認は出来た。パン作りに感情の良し悪しが関係しねぇと思っていたが、ケントの言い分だと料理は楽しく作るもんだとさ」

「……ケントらしい」


 本当に、あの青年はいつだって明るい。感情の乱れは、自分に関わった誰かが傷つくことだ。以前、カウルがそれを教えてくれた。


「感情無くせば簡単かもやけど、ケントはそれを望まんのやろ?」

「……その通り」

「せっかくの新しいメンバーを無くすのと同じですな」


 さてさて、感情の起伏次第でポーションパンの出来が違うケース。

 これをまたポーションで押さえても、一時的な処置にしかならないだろう。

 どうすれば!?
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