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第568話 スインのために

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 スインを使って、ポーションパンが作れない。

 それが僕はちょっと残念だと思っていたけど、スイン自身はだんだんと残念な気持ちが積み重なってショックを受けてしまっていた。

 お店側が暇な時に、少しオープンキッチンを覗きに来る機会が多い。僕とかと目が合うと、ピュイってレジカウンターに戻っていっちゃうから。


(うーん。魂……心があるから、スインも生きている存在だもんね)


 それが楽しさを覚えた仕事を禁止されちゃったら、もう一度作りたいって気持ちを覚えるのも無理はない。

 けど、ポーションパン作りは基本的に、『仕事』だ。単純な食事のために作るわけじゃない。もちろん、日常のご飯も基本的にポーションパンだけど……それを作ってもらったら、僕らに大変な効能を付与することになっちゃう。

 エディの魔法蝶で教えてもらったんだけど、相当凄い魔法を会得する結果になったんだって。スインを使ったパンは、今までのポーションパンよりも戦争の火種になるかもしれないから……と。

 そんな凄すぎるパンを、僕の勝手な思いつきでいっしょに作っちゃったからね。イケメン神様も関与してない、特殊な能力。それを使わずに、スインがパン作りを出来る方法……ないかなあ?


「ひとつ、方法は無くない」


 お師匠さんが、気分転換も兼ねてスバルに来てくださったので相談したところ、そんな言葉を口にしてくれたんだ!


「どんな方法ですか!?」

「我々は錬金術師。そして、私は君の師だ。君がポーションパンなら、私は液体のポーションを精製出来る。私が特定のポーションを精製し、スインに服用させる。簡単に言えば、スインがポーションパンに付与させた部分を一時的でいいから封印する」

「そんなにも便利なポーション作れるんですか?」

「可能性の問題はあるが、レイアのポーションも作れたしな。私にはジェイドがいるし、効能の調整はある程度コントロール出来るようになったのがあれでわかった」

「おお」


 お師匠さんが言うには、ジェイドはラティストの弟だけど生命や自然に通じる魔力を司るらしいので……薬効の強いポーションとかの効能が、お師匠さんにも影響するようになったとか。

 永久契約をしているから、特にそれが目立っているそうな。凄いなあ?


「とりあえず、作ってみるが……ひとつ頼みがある」

「なんでしょう?」

「スインの一部を提供してもらいたい」

「へ?」

「目があるから、涙があれば最適なのだが」

「ああ!」


 びっくりした。スイン本体を削って欲しいとか言われたら、流石に僕でも断ろうと思ったからね。

 だけど、スインに泣いて欲しいとお願いしたところで……出来ないかな?

 きちんとお話すれば大丈夫かなって、本人と確認を取ってみたら……わかった、といきなりウルウルし出して、ぽろぽろと涙をこぼした!?

 慌ててコップに受けたら、あっという間にいっぱいになったよ……。お師匠さんも驚いたが、これで何度も実験出来ると亜空間収納に大事に保管して帰って行った。
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