567 / 603
第567話 うきうき気分だったが
しおりを挟む
陛下……エリシオン様に呼んでいただけた。
語らうだけの時間ではなく、少し特殊なお願いをされると言うことでヒーディア城に伺った。次期王妃になることは決まって、日々英才教育を養うのに正直言って疲れていた。
そんな日常から、愛する御方にお会い出来る機会が出来たのだもの。お茶会ではないにしても、嬉しいことに変わりないわ。
だから、顔には出さないように気をつけて伺ったのだけど。
「……なんですか、これは」
お願いと言うことで、鑑定眼鏡で確認したケント様のところのポーションパンを確認したのだが、効能が異常過ぎた。
以前購入したものよりも、はるかに優れているパンたち。
見た目はすごく美味しそうだが、効能は回復よりも付与が強いものばかり。しかも、魔法だけでなく元素を付与という異常さだ。
「ケントの魔導具に意思が宿り、そいつを使って作ったパンがこれだ」
陛下はこれらを使って、既に魔法を試されたらしいがひとつで禁術近い結果となったそうだ。そんなポーション……しかも、パンであっていいのだろうか? 陛下の大親友でいらっしゃるあの方は、本当に何者なのだ?
ルカリアの上司でもあるけれど、陛下と同い年にしては能力が高過ぎる。錬金術師としても、Sランクにいてもこれらを生み出せるのはやはり異常だ。
「元素と魔法を付与……私にもこれを試せと?」
「リリアが嫌じゃなければな」
「試させてください」
ポーションパンの美味しさは当然知っているが、こんな機会を逃せば後悔しか残らないだろう。
種類と量はかなりあるが、せっかくなので私の得意分野である水系統にしようと手に取ったのは焼いたベーコンととろけるチーズが目で見て楽しい組み合わせ。
しかしながら問題がひとつ。
このパンは美味しそうではあるけれど、強度が然程ない。パイのような質感もあってポロポロと表面が崩れていくのだ。
陛下の前で、惨めな姿をと前なら思ったが……今は想い合う者同士。それに食事をする機会など、結婚したらいくらでもある。これはその前段階と思って……パンを口に運んだ。
予想以上に、サクッとした食感に驚いたけれど……何より味。
贅沢過ぎるほどのバターの味わいに、甘くてしょっぱい味。その暴力的な波が口に押し寄せてくるのだ。加えて、間に挟んである具材の組み合わせがとても素晴らしく。
勢いで食べそうになるのを気をつけながら、もぐもぐと食べていく。やはり、ケント様のパンは美味しい。市井を通り越し、王族御用達と看板を掲げるのも頷ける味だ。
ただ、感動していたら……頭の中に声が響いてきた。陛下ではない違う殿方の声が。
『付与……付与。
元素、【水】をリリア=フォンベルトへ付与。
元素を付与されたことにより、魔法レベルが大幅にアップ。
上級から超級へアップ。
超級への完了。付与の余白があるため、さらに超弩級へアップ。
水系統の魔法のほとんどを使用可能』
アナウンス……これは、神のお言葉。
陛下も試されたということは、このアナウンスを聞かれたはず。
振り返れば、陛下はわかっていらしたのか苦笑いされていた。
「リリアにも付与されたか?」
「これは……ポーションで片付けられません。エリクサーに匹敵します」
「だろう? だから、ケントには作るのを止めさせた」
「ええ。戦争の火種になりますわ」
魔導具ひとつでこの差を作るのは容易ではない。一体……何がどうやって可能にされたのか気にはなったが、私なんかが口出ししてはいけないと言うのを止めた。
代わりに演習場で付与された魔法の威力を確かめたのだけど……陛下やギルハーツ様が大口を開けてしまうほどの、氷の山を瞬時に生み出す勢いにまで成長してしまったわ。
語らうだけの時間ではなく、少し特殊なお願いをされると言うことでヒーディア城に伺った。次期王妃になることは決まって、日々英才教育を養うのに正直言って疲れていた。
そんな日常から、愛する御方にお会い出来る機会が出来たのだもの。お茶会ではないにしても、嬉しいことに変わりないわ。
だから、顔には出さないように気をつけて伺ったのだけど。
「……なんですか、これは」
お願いと言うことで、鑑定眼鏡で確認したケント様のところのポーションパンを確認したのだが、効能が異常過ぎた。
以前購入したものよりも、はるかに優れているパンたち。
見た目はすごく美味しそうだが、効能は回復よりも付与が強いものばかり。しかも、魔法だけでなく元素を付与という異常さだ。
「ケントの魔導具に意思が宿り、そいつを使って作ったパンがこれだ」
陛下はこれらを使って、既に魔法を試されたらしいがひとつで禁術近い結果となったそうだ。そんなポーション……しかも、パンであっていいのだろうか? 陛下の大親友でいらっしゃるあの方は、本当に何者なのだ?
ルカリアの上司でもあるけれど、陛下と同い年にしては能力が高過ぎる。錬金術師としても、Sランクにいてもこれらを生み出せるのはやはり異常だ。
「元素と魔法を付与……私にもこれを試せと?」
「リリアが嫌じゃなければな」
「試させてください」
ポーションパンの美味しさは当然知っているが、こんな機会を逃せば後悔しか残らないだろう。
種類と量はかなりあるが、せっかくなので私の得意分野である水系統にしようと手に取ったのは焼いたベーコンととろけるチーズが目で見て楽しい組み合わせ。
しかしながら問題がひとつ。
このパンは美味しそうではあるけれど、強度が然程ない。パイのような質感もあってポロポロと表面が崩れていくのだ。
陛下の前で、惨めな姿をと前なら思ったが……今は想い合う者同士。それに食事をする機会など、結婚したらいくらでもある。これはその前段階と思って……パンを口に運んだ。
予想以上に、サクッとした食感に驚いたけれど……何より味。
贅沢過ぎるほどのバターの味わいに、甘くてしょっぱい味。その暴力的な波が口に押し寄せてくるのだ。加えて、間に挟んである具材の組み合わせがとても素晴らしく。
勢いで食べそうになるのを気をつけながら、もぐもぐと食べていく。やはり、ケント様のパンは美味しい。市井を通り越し、王族御用達と看板を掲げるのも頷ける味だ。
ただ、感動していたら……頭の中に声が響いてきた。陛下ではない違う殿方の声が。
『付与……付与。
元素、【水】をリリア=フォンベルトへ付与。
元素を付与されたことにより、魔法レベルが大幅にアップ。
上級から超級へアップ。
超級への完了。付与の余白があるため、さらに超弩級へアップ。
水系統の魔法のほとんどを使用可能』
アナウンス……これは、神のお言葉。
陛下も試されたということは、このアナウンスを聞かれたはず。
振り返れば、陛下はわかっていらしたのか苦笑いされていた。
「リリアにも付与されたか?」
「これは……ポーションで片付けられません。エリクサーに匹敵します」
「だろう? だから、ケントには作るのを止めさせた」
「ええ。戦争の火種になりますわ」
魔導具ひとつでこの差を作るのは容易ではない。一体……何がどうやって可能にされたのか気にはなったが、私なんかが口出ししてはいけないと言うのを止めた。
代わりに演習場で付与された魔法の威力を確かめたのだけど……陛下やギルハーツ様が大口を開けてしまうほどの、氷の山を瞬時に生み出す勢いにまで成長してしまったわ。
98
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~
櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる