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第549話 マブダチと義兄弟の違い

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 全く、親父らが我慢出来ずにケントんとこに行ったのはまだ良い。

 だが、気に入り過ぎて養子に迎え入れたいっつーのは大反対だ!!


「阿呆か!? 俺とケントは兄弟よりも最高のダチでいてぇんだよ!」


 親父を殴ってい落ち着かせたが、俺によく似た顔には残念そうな色が浮かんでいた。


「義兄弟でも構わないじゃないか。あんなにも良い子なんだから、私としては息子に迎えても」

「ダメだ。ケントを王族にしたくねぇ」


 地位としては最高かもしれんが、ケントは望まないだろう。リオーネでこれからもポーションパンを作り続けたいこともあるだろうが、今の生活をあいつは望んでいる。

 ポーションパンを作り、客と接し、ポーションの流通を少しでも広める。

 その生活を奪うことは俺だってしたくない。ただでさえ王家御用達で、少し縛っている現状もあるしな。


「ふふ。リリアとの婚約は急いで進めても、ケントくんとのことは違うのね」


 お袋は優雅に茶を飲んで眺めていたが、親父ほどはケントを引き込もうとはしていない。実際に会ったことで理解しているだろうが、気に入り方は親父と同じくらい。

 それでも、俺の態度で諦めかけてるってとこか。親父はまだ諦めてねーが。


「あいつの将来を勝手に決めたくない。転生者だからって、後ろ盾にはなるが制限を設けたくもないさ。自由に生きれるようにフォローするのが王としてもだが、ダチとしても尽くしたいんだ」

「あらまあ、しっかり王になっちゃって」

「さっさと即位させっから、考え方も変わるっての」


 自分たちは悠々と諸国漫遊を楽しんでっから。

 まあ、リリアが正式に王妃として城に来てくれりゃあ……いちゃいちゃは存分に出来るがな! 稽古は当然するだろうが、それはそれとして。

 とにかく、ケントを王族に入れるのは反対だ!

 あいつとは最高のダチでいたいのは本心だからな!!


「うーん。珍しく頑固だねぇ。まあ、彼は市井での暮らしが合っているかもしれないが」

「わかってんなら諦めろ」

「それにしても、あなたの王妃はてっきりルカリアだと思ってたのに……創始の大精霊と婚姻を結んでただなんて」


 お袋はいつのまにか、フォンベルト家から届いてた縁談の書簡を手にしていた。リリアの変貌ぶりに驚いていたようだが、口ではルカの事を言っていた。


「たしかに。昔よりも愛らしい姿だったが、お前とではなかったのだね」

「ルカはちげぇよ」


 リリアと同等の武術馬鹿だが、馬が合っても王妃に迎え入れようとは思ってなかった。ただ、リリアがいなきゃパートナーとしては考えた時期もあったりはした。その直後にラティストと精霊の事件があって、二人が結ばれたことで諦めたがな?

 それよりも、今はリリアがいるから問題なし!

 早く迎え入れたいが準備が色々あんのがめんどくさい!!

 三日後の茶会にはあいつも呼んでるし……ちょっとだけ、いちゃついてもいいよなあ? 俺とのファーストキスとか!!
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