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第543話 視線を感じつつも

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 背から視線を感じている。

 誰だかわからないが、変な好奇の視線ではないのはわかっているわ。

 ルカリアも気づいているでしょうけど、特に動きを見せないから危険視していないのか、気にせずにお茶とお菓子を食べながら私の話を聞いてくれていた。

 私がいまだに陛下を想っていることはバレバレだったが、それを否定はしていなかった。あの時の稽古申し込みについては、多少叱りを受けてしまったけれど。

 とりあえず、壁向こうに誰かいるかを気にしつつ、話は進めていくことにした。


「外見は変えても、中身が幼いのは認めるわ」

「せめて、その愛らしさを活かしてお茶にお誘いでもよろしかったのに」

「……出来たら、苦労しないわ」

「そうですわね」


 下手に繕ったり、フォローしない令嬢。

 ルカリアは昔からそうだから、そこは気にしない。気にはしていないが、多少は胸の奥が痛んだ。


「陛下には、この見た目を気にかけていただけたようだけど……その先を繋げようとするのに、あんな誘い方しか出来なくて」


 もっと可愛く、年頃の女性のようにお茶に誘おうとも考えたりしたが。

 性格上、強い殿方に憧れを抱く思いが強いので……結果、受けていただけたがあのような言い方しか出来なかった。実際、素晴らしい体格の持ち主だったんだもの!!


「でしたら、次のお誘いでお茶にと告げれば良いのでは?」


 反省していると、ルカリアは意外な提案をしてくれたのだ。


「次?」

「リリアは帰国して、フォンベルト家の令嬢に戻ったのではありませんか。でしたら、一度ではなく二度も三度もチャンスはありますわ」

「……チャンス」


 そうだ。忘れていた。

 もう留学は終わったのだから、実家に戻った。令嬢の地位も戻ってきたのだから……陛下とお話出来る機会は全くないわけではない。

 異国にいた頃は、たまに聞く噂程度しかヒーディアの情報を得られなかった。だが今は、それはもう終わった。帰ってきたのだから。


「そうですわ。ご自分をアピールするのにもっともっと積極的になるのも手段のひとつ。稽古は一度お約束してしまっているのですが、お茶の機会はいくらでも作れます!」

「……ええ」


 やはり、この子と友人……親友で良かった。

 性格が近いところがきっかけで、昔は稽古も打ち込んで腕を磨き上げていたけれど。

 今は、先に恋愛を成就した先達だ。その分、心の有り様が変わった部分もあるが、私の友であることには変わりない。

 しかし、稽古の後にお茶に誘って……陛下は受けてくださる気持ちに不安を感じるのは、自信が持てない証拠。

 せめて、この外見のように可愛くお誘い出来たらいいのだが。
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